麻生外務大臣と額賀防衛庁長官は、今日の午前中にワシントンに行くらしいです。
http://www.topics.or.jp/Gnews/news.php?id=CN2006043001000038&gid=G02
アメリカでライス国務長官、ラムズフェルド国防長官と会談して、米軍再編に関して合意するでしょう。
そもそも米軍再編というのはどこから始まったのかという話は、ややっこしいので後日書く事にして、日本でこれだけ注目されるようになったのは昨年10月に2プラス2が行われて、いわゆる「中間報告」と呼ばれている合意文書が出た後からですね。
沖縄はもちろん神奈川や岩国などの自治体から「なんの相談もなしに勝手に決められた」と、ものすごい反発が出ました。それが今の混乱につながっているわけですね。
■「中間報告」「最終報告」というコトバの問題点
いわゆる「中間報告」が出た約1ヶ月後の昨年11月23日、琉球新報にこんな記事が掲載されました(概要)。
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「中間報告」の表現どこから出たのか 在沖米総領事
トーマス・ライク在沖米総領事は「中間報告という表現が一体どこから出てきたのか分からない。二国間で決めた合意だ」と述べ、日本側の呼称に強い疑問を示し、基地の移設先などの核心部分の大幅修正は困難との認識を示した。
来年3月の最終報告については、「日米合意をいかに実行するかについて、具体的で詳細な措置が記される」と述べ、日米合意の実現手法や時期などを具体化する内容になるとの認識を示した。
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この記事をはじめとして、どうも「中間報告」という言葉はアヤシイ、という説が出始めました。
つまり、ホントは日米両政府の間で決めちゃったんだけど、これまで地元に相談しなかったから反発を恐れて「これはあくまで仮に決めただけで、これから地元の皆さんとも相談して最終報告にしますよー」と言いたいために「中間報告」という言葉を使ったんじゃないか、という疑惑です。
たしかに、いわゆる「中間報告」と呼ばれている合意文書の中にはどこを見ても「中間報告」という言葉は無いんですね。
で、この件に関しては11月30日の神奈川新聞に検証記事が載ってました。(「ワシントン共同」って書いてあるので共同通信の記事ですね。)
この記事によると、11月8日の共同通信などとのインタビューでローレス国防副次官は「(10月末の文書は)中間報告ではない」と繰り返したらしいです。
また、1996年のSACO合意の時には「中間報告」「最終報告」という言葉を使っていたので、今回もその言葉が「独り歩きした」という指摘もある、と書かれています。
この記事では「日本政府は(中略)今後は中間、最終報告との表現は避ける方針だ」と書かれていましたが、12月6日の国会で麻生外務大臣は「国内や米国との間で調整の過程にあるという意味で中間報告と言わざるを得ない」と答えています。
結局、「言葉のあや」で誤魔化したいという下心のある日本政府と、変更はありうると信じたいという地元自治体のワラをもすがりたい気持とが重なって、日本では「中間報告」という言葉が使われ続けているワケですね。
新聞社によっては「中間報告」「最終報告」とカギ括弧付きで書いているところもあります。
今年4月8日の朝日新聞2面には「実施計画合意」(AIP、日本側は「最終合意」と呼称)という書き方をしていました。
まあ、「わかりやすさ」から考えてもおそらく各紙は「最終報告」と書くんでしょうね。
「中間報告」「最終報告」という言葉が断固としてダメだとまでは言い張りませんが、マスメディアはもう少し気を使う必要があると思います。
■「抑止力の維持」というコトバの問題点
最近、日本の政治家やマスメディアの報道は必ずと言っていいほど、沖縄の「負担軽減」と「抑止力の維持」という言い方をします。
これも問題で、11月23日の琉球新報によると(概要)、
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アメリカ大使館のケビン・メア安全保障部長は「抑止力は“維持”でなく“向上”だ」と強調した。
再編の目的の一つとして日本政府は従来、抑止力の「維持」と説明し、「強化」との見方を否定していたが、中間報告では「安全保障の(能力)強化」とうたっている。メア氏の見解は、日本側の説明の矛盾をあらためて示した。
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とあります。
もー、イヤになってきますね。
■「在日米軍再編」というコトバの問題点
さらに言うと「在日米軍再編」という言葉も誤解を招きかねない表現です。
そもそもアメリカが勝手に世界的な規模で軍の改革と再配置をしていて、「在日米軍再編」はその一環です。
沖縄の負担軽減のために始められたワケではないですし、日本国内の米軍基地だけに限った計画ではないのです。
このへんの話になるとだんだん難しくなって、オマケに英語がわかんないので書くのも大変ですが……、
講談社現代新書の『米軍再編』(久江雅彦)によると(概要)、
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2003年11月25日、ブッシュは大統領声明を発表し、活発に防衛力を改革(Transformation)する一方、グローバルな軍事態勢を再編(Global Posture Review)する事が課題だと述べている。
ちなみに、日本の報道で、在日米軍の配置の見直し(再編)をトランスフォーメーションと称する向きがあるが、これは必ずしも正しくない。
トランスフォーメーションは、軍事技術の進展を踏まえた兵器体系や運用の強化に加え、国防総省の組織や人事の効率化まで含めた、もっと幅広い意味での軍の「変革」を意味している。
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と書かれています。
つまり、こっちの基地をあっちに移してとか、そういう事だけじゃあないんですね。
日本で「中間報告」と呼ばれしている、昨年10月29日に出された2プラス2の合意文書。
その正式名称は英語で「U.S.-Japan Alliance:Transformation and Realignment for the Future」となっています。
日本語訳は「日米同盟 未来のための変革と再編」です。
「変革」=「Transformation」「再編」=「Realignment」ですよね。
ジャーナリストの松尾高志さんが『法と民主主義』4月号に書いている文章によると、アメリカが世界的な規模で行っている米軍再編の狙いは「同盟国・友好国の役割分担を拡大させること」も織り込まれている、とあります。
11月15日 朝日新聞の記事の概要と解説が、軍事アナリスト 神浦元彰さんのWebサイトに掲載されています。http://www.kamiura.com/new11_2k5.html
これによると、いわゆる「中間報告」についてある防衛庁幹部は、これで両国の軍事面の一体化が進み、日米同盟の能力強化が図られ、「これは日米安保条約の改定に匹敵する」と指摘した、とされています。
明日行われる2プラス2を前にしていたので、きょうは長く書きすぎました。
これからさまざまな報道がされると思いますが、注意深く見ていきたいと思います。
ご指摘等がありましたら、ぜひ、お知らせください。