2008年09月17日

ソウル・フラワー・ユニオン『カンテ・ディアスポラ』

ソウル・フラワー・ユニオン、3年ぶりのニュー・アルバムが発売した。昨年から今年にかけて発売したシングルの主要曲も含む73分の大作だ。
http://www.breast.co.jp/soulflower/special/cante_diaspora/index.html
古今東西の音楽をミクスチャーしたソウル・フラワーならではの世界はさらに拡がりを見せ余裕さえ感じられるようになった。

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これまでにも阪神淡路大震災や寄せ場など社会の中で特にシビアな現場での演奏活動もしてきた彼らならではの社会性とエンターテイメント性とが同居した作品になっている。

今回のアルバムが作られるまでの3年間の課程で彼らにとって大きな体験と言えば、パレスチナであり辺野古でありそして中川敬の子供の誕生だという。CDの歌詞カードなどにはそれを感じさせる写真がいくつも配置されている。

個人的には自分自身が最も関わりが深い辺野古について歌われた曲に関心が行く。誰もが歌える民謡として作られた「辺野古節」はもちろんだが、ほかの曲にも辺野古での座り込みや海上阻止行動を思い起こさせる曲がある。
どの曲が辺野古とどう関係があるのかはここでは書かない。人は誰でも作品に接したときに自分自身が関心を持っていることに重ね合わせようとする傾向がある。実際には辺野古のことを描いた作品ではないのかもしれない。優れた作品というのはそうして自分の生き方を重ねて思い入れができる深さを持っているものだろう。この曲はこんなことを言っているんじゃないかと想像しながら聴くことができるのも大切な楽しみ方だ。

アルバムの中の一曲を取り上げてみると、たとえば「閃光花火」という曲がある。歌われている状況はかなりシビアだ。しかし楽曲としては陽気なメロディを持つポジティブな曲だ。そしてこのアルバムの中でも特にアップテンポな「ラヴィエベル〜人生は素晴らしい! 」では「情けないツラぶら下げながらも 粘りを見せている」と歌われている。
ソウル・フラワーの音楽はシビアな状況で闘い続けている人々に対して、同じようにシビアな現実と対峙し続けている「同志」としての立場から、お互いを鼓舞し勇気づけようとして歌われているものだ。

細かいディテールにも触れておくと、一曲目の「月光ファンファーレ」の中で2小節だけ「天才バカボン」のテーマソングと同じメロディが演奏されている。巨匠、赤塚不二夫が亡くなったのは先月8月2日、このCDのサンプル盤が届いたのは8月中旬だから、追悼の意味で入れたにしては録音・ミキシング・マスタリング・プレス等を考えると間に合わない。偶然タイミングが一致したのだろう。シビアな現実と闘いながらも世の中は簡単に変えられるほど甘くはない。「これでいいのだ」としぶとく続けていこうと言いたかったのだろうか。それこそ「アジールの幸福論」だと……。
(「アジール」については彼らの傑作アルバム『エレクトロ・アジール・パップ』『アジール・チンドン』の解説を参照)

最後に、「海へゆく」「寝顔を見せて」などのスローな曲は、父親になった中川敬のやさしさを感じ、明日への決意を共に誓い合える名曲だ。

P.S.
DVD『ライヴ辺野古』に関しては以下に書いています。
http://atsukoba.seesaa.net/article/90984930.html
タグ:音楽
posted by あつこば at 13:59| Comment(0) | TrackBack(0) | メディア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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