しかも、政府は「海賊対策」のための法案を作ると言いながら、その法案の成立を待たずに、とりあえず見切り発車で派遣(派兵)しようとしています。
以下の地図で青く塗りつぶされた部分がソマリアです。「アフリカの角」と呼ばれているそうです。
ところで「海賊」って一体、どんな人達なんでしょう?
今回は、まずそこから考えてみたいと思います。
1月22日に放送された『NEWS23』での「海賊」の説明は以下です。
↓ここから引用
--------------
外務省によると、ソマリアの海賊はソマリア本土に基地を持ち、遠方への航行が可能な母船と、攻撃用の高速小型ボート数隻を使用している。
--中略--------
(相手の船舶に)小型のボートで接近、はしごやロープをひっかけて船に乗り込み、乗組員を人質とする。
--------------
↑引用ここまで
では、「海賊」の目的はなんなのでしょうか?
AP通信が配信した「海賊を名乗る男」へのインタビューが、昨年12月26日、日本テレビで放送されました。
http://www.news24.jp/125894.html
↓ここから引用
--------------
「ヨーロッパやアジアからの密漁船に漁場を荒らされているから、武装して防ぐのだ」
------------------------------
「サウジアラビアの石油タンカーも我々がやった。天然資源を守るために自発的に船を襲撃している。身代金を支払えば、船員は全員無事に解放してやる」
--------------
↑引用ここまで
以下のサイトでは、こうした背景をもう少し詳しく説明しています。
http://www.the-journal.jp/contents/newsspiral/2008/12/post_177.html
↓ここから引用
--------------
ソマリアが世界最大の海賊スポットになった背景の第1は、同国の国家崩壊と経済壊滅である。
--中略--------
もう1つの背景は【中略】マグロやエビをはじめ水産資源の豊富な漁場であるソマリア沖海域が外国の大型漁船団による乱獲に晒され、その結果、地元の零細漁民や漁業会社が収入源を失ったという事情がある。
--------------
また、欧州諸国などによる違法な廃棄物の投棄も問題になっており、国連環境計画(UNEP)スポークスマンによると「欧州国内で1トンの廃棄物を処理するのに 1000ドルかかるのに対して、アフリカの角に投棄すれば2.5ドルで済む」とされる。化学物質や放射性廃棄物が投棄されている疑いも指摘されている。
--------------
↑引用ここまで
「ヨーロッパやアジアからの密漁船」、「外国の大型漁船団による乱獲」については、以下の指摘もあります。
http://www.asaho.com/jpn/bkno/2008/1208.html
↓ここから引用
--------------
夜、ソマリアの海は、たくさんの漁船団の灯火によって「マンハッタンの夜景のように見える」とは、ソマリアの漁業専門家の言葉である。これらの船団の国旗は、EU諸国と米国、日本のものだ。
--中略--------
海賊たちは、日本を含む先進国がそれまで乱獲してきた漁業資源の代金回収と、廃棄物投棄の迷惑料を暴力的な方法でやっているともいえる。
--------------
↑引用ここまで
実は日本の船もソマリアで乱獲を行なっていたようですね。
もちろん「海賊」がやっている行為は「犯罪」でしょうから、正しいとはけっして言えないでしょう。
しかし、ソマリアは1991年から内戦が続いていて無政府状態です。そうしたなかで他国の漁船による乱獲や廃棄物の投棄なども重なってしまうと、「海賊行為」が当然のように行なわれることも想像できます。
以下は、ソマリアを担当している駒野大使への取材記事です。
http://www.asahi.com/international/update/0123/TKY200901220286.html
↓ここから引用
--------------
海賊の多くは沿岸を拠点とする元漁民で、無政府状態になった91年以降、当初は漁場を荒らす外国の漁船を追い払う目的で武装。その後、私兵集団と結びついて人質の身代金狙いの海賊行為に手を染めるようになったという。
--------------
海賊のリーダーは現地では「最も女性にもてる存在」という。荒稼ぎした金で海岸の一等地に豪邸を建て、豪華な結婚式を挙げる様子がアフリカの新聞や雑誌で取りあげられ、豊かな生活の「象徴」にもなっているという。
--------------
↑引用ここまで
昨年11月15日の朝日新聞には以下のようにも書かれています。
↓ここから引用
--------------
漁業会社がそのまま漁船を使って「海賊会社」に衣替えしたケースがほとんどで、複数の武装集団に全体で300人ほどが属しているという。
--------------
↑引用ここまで
無政府状態のソマリアでは、海賊がしっかりとした「ビジネス」となっているようです。
以下の記事によると北東部のエイルは、「海賊の楽園」と呼ばれているそうです。
http://sankei.jp.msn.com/world/mideast/080928/mds0809282043001-n1.htm
↓ここから引用
--------------
エイルは、海賊ビジネスが“主要産業”の無法地帯。BBCによると、現地では小型パソコンにスーツ姿の海賊用会計士や交渉人が闊歩(かつぽ)し、街には人質用の特別レストランもあるという。
--------------
↑引用ここまで
そして海賊には、なんと広報担当もいるそうです。11月15日の朝日新聞の記事にはインタビューが掲載されています。
↓ここから引用
--------------
「みんな漁師だった。政府が機能しなくなり、外国漁船が魚を取り尽くした。ごみも捨てる。我々も仕事を失ったので、昨年から海軍の代わりを始めた。海賊ではない。アフリカ一豊かなソマリアの海を守り、問題のある船を逮捕して罰金を取っている。」
「国を守って給料をもらえるこの仕事に誇りを持っている」
--------------
↑引用ここまで
【2月13日 追記】
「海賊は元漁民ではない」という主張をされている方もいましたので補足しました。
http://atsukoba.seesaa.net/article/114158332.html
「海賊」について書いた他の文章は、この下の「タグ:」で「海賊」という文字をクリックすると一覧が出てきます。 ↓↓↓
罰金を取る=身代金を要求する行為
ですか????
これって、ヒトラーが「我々は平和を
欲している」と言うような、極めて
愚かな言葉のすり変えです。
ソマリア以外の国の不法行為には、外交
という、それなりの対処方法があるわけ
で、国際法を完全に無視した行為=海賊
を擁護する理由は、私には1つも見いだ
せない。
ただ、彼らがどういう論理で行動しているのかを、たとえそれが「詭弁」であっても、まずは知る必要があると思うわけです。
ソマリア沖の「海賊」というのがどんな人達で、どんな背景があり、どんな方法で襲っているのか、多くの人達はあまり知らないでしょう。
約20年内乱が続いているという状況は、日本に住んでいる私達の感覚ではなかなか想像できません。 混乱している状況ですから、さまざまな人達が暗躍しているでしょう。
「海賊行為」を行なっている複数の武装集団のなかに、「漁場を荒らす外国の漁船を追い払う」という当初の目的を覚えて行動している人達がどの程度いるのかは、わかりません。そんな目的はすでに大義名分ですらなくなっているような気もします。
いずれにしても、彼らの社会のなかでは、自分たちの側にもある程度の正当性があるという認識があるようです。(もちろん、ソマリアに住んでいる人達がみんなそう思っているとは思いませんが。)
そこに武装した海外の軍隊が乗り込んでいって交戦をしてしまったら、軍事力では勝てるかもしれませんが、自分たちが正当だと思っている彼らとの関係は、より悪化してしまうんじゃないかと思います。
海賊のリーダーの結婚式がアフリカのメディアで取り上げられているという状況です。日本が軍隊を派遣(派兵)して武力行使をしたら、アフリカの人達の日本に対する印象も悪くなるでしょう。
とはいえ、実際に身代金を取るという犯罪行為が行なわれているわけですね。(人質に対する扱いは良さそうですが……。)
背景を知り改善するとの同時に、犯罪行為に関してはなんらかの形での取り締まりは必要でしょう。
そこはもう少し国民的な議論をして決めていく必要がありますね。
そして、今回、自衛隊を派遣(派兵)した件については、防衛省・自衛隊の内部にも懸念の声があるのです。
http://atsukoba.seesaa.net/article/113340886.html
に書きました。
維持する必要はないでしょう。ていうか
人質を取られた時点で、思いっきり、
日本と奴らとの関係は最悪ですよ。
自衛隊を現行法のごまかしで派遣する
のはいかがなものかと思いますが、
軍隊がこの種の事態に対処することは
極めて合理的な行為だと考えます。
とっとと新法を作るべきです。
海自の派遣ありき、なのではなく、
海自以外に対処できないのですから当然です。
ブッシュが以前、「我々の側につくかテロリストの側につくか」などと脅して、戦争への参加を強要したことがありますね。白か黒か、敵か味方かの二元論は危険です。
> 自衛隊を現行法のごまかしで派遣する
> のはいかがなものかと思いますが
意見が合いましたね。
法整備をして派遣(派兵)するというのであれば、法整備をする過程でしっかりと派遣(派兵)の是非を議論をすれば良いと思います。
法整備もせずに派遣(派兵)を決めてしまう政府は、自衛隊の人達を軽視していますね。
俺がケータイメールからだしてるお粗末なメルマガでもマスコミ関係者含めて百人以上読者いるけど、こんなもの才能無い人間がいくらやっても無駄じゃないの?
お陰様で、通りすがりさん、通りすがり2さん、outsidervoiceさん以外に、高村さんもアクセスしてくださっていることがわかりました。
どうもありがとうございました。
俺のHPだって毎日十人は見に来るし、メルマガの会員は百人以上いる。http://www.mega-at.jp/hp/i.phpg=ajeende
才能の無い連中がこんなモンいくらやってたって自己満足の「マスカキ」になるだけよ。
大体文章読んでみたら読みにくいし、面白くねえし、どうしようも出来ねえよ。
反省するなら2ちゃんねるにいる俺のファンに紹介してやっても良いが、こんなもんじゃ紹介してやる気にもならねぇよ。
でもね、今回理解できたとして、海賊の論理は納得できる論理ですかね?
貧しいから船を襲って身代金を取る。なるほど、合理的ではありますが、その結果、日本が輸入しているものに影響が出る恐れがあるわけです。犯罪者のせいで、船舶保険の値段が跳ね上がって結果影響を受ける。それを許容できますか?っていう話でしょう。
なぜ他の国々が参加しているのか?海洋航路の安全なしには、今の自由貿易体制が揺らぐ恐れがあるからではないでしょうか?
しかし、ソマリアの状況で一番大変なのはそこで暮らしている一般市民だと思います。海賊ほど腕力のない人が、無政府状態では一番大変でしょうから。
たしかにこの問題は難しいですね。
日本をはじめとする各国は経済的に打撃を受けていて、それを許容できないから軍隊を派遣(派兵)するわけですね。
しかし、それを正当化してしまうと、もともと日本をはじめとする各国によって経済的な打撃を受けていたと主張する「海賊」達の論理も認めなければいけなくなります。
「海賊行為」という犯罪を犯したのは彼らですが、彼らの論理では「先に乱獲や不法投棄」をしたのはこちら側になってしまうのです。
そして「海賊」達は、「自由貿易」つまりグローバリズムの被害に遇っているも言えるわけですから。
ところで、「海賊」が元漁民だという説については違うと指摘している人もいます。その件についても後日書きたいと思っていますので、また見に来てくださると幸いです。
ソマリアの一般人達がたいへんなのは私も心配です。ソマリアの状況を改善することは、なかなか難しそうです。ご参考までに以下の記事を紹介させていただきます。
http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20090205-OYT1T00946.htm
http://www.tbsradio.jp/st/2009/01/17_2.html
http://www.tbsradio.jp/st/2009/01/18_4.html
漁民だった人々が生活の糧をえるために(外国が漁場を荒らしたために)海賊になったと,いうのは鵜呑みにしてはいけない.
元々,ソマリアは産業としての漁業は成立していなかった.
彼らは可愛そうな漁民等ではなくアルカイダにも似たれっきとした犯罪者グループです。
竹田いさみさんという方が出ているそのラジオ番組、私も聞いてみました。
上のコメントで、
> 「海賊」が元漁民だという説については違うと指摘している人もいます
と書いたのはその件です。そして他に同様のことが書かれているブログなども竹田さんの説が元になっているようです。
> 後日書きたいと思っています
と書いたように、この件について書いた文章を掲載しました。
http://atsukoba.seesaa.net/article/114158332.html
よろしくお願いいたします。
私は、ここの文章内で、
--------
「海賊」がやっている行為は「犯罪」でしょうから、正しいとはけっして言えないでしょう。
--------
と書いております。
ただし、「悪いヤツをやっつけろ」という発想だけで簡単に良くなるほど、世の中は単純ではないようです。
物事には背景や理由があります。それを知ることが大切だと思っています。