2009年02月13日

「海賊は元漁民ではない」という主張

以前、「海賊」というのはどういう人達で、どのような背景で「海賊行為」を行なっているかについて書きました。
http://atsukoba.seesaa.net/article/113146297.html

その後、調べてみたところ「海賊は元漁民ではない」という主張をされている方もいましたので補足します。

政治学者 竹田いさみさんという方がTBSラジオに出演してインタビューで語っています。
竹田いさみさんという方は『国際テロネットワーク』という本を出していて、以下のページにその紹介があります。
http://www.yomiuri.co.jp/book/author/20060214bk01.htm

ラジオ番組はネットでも聞くことができます。3回に渡る特集ですが特に1回目のタイトルが刺激的です。

「海賊は元漁民にあらず〜その意外な正体」
番組紹介ページ
http://www.tbsradio.jp/st/2009/01/17_2.html
実際の音声
http://podcast.tbsradio.jp/st/files/sakasa20090107.mp3

大雑把に説明すると、「海賊」は内戦で対立してる氏族の中のひとつが海賊行為に出ているのであって「元漁民」ではない、という主張をされています。

著作権もありますので、ごく一部だけ紹介しましょう。

↓ここから引用
--------------
日本のテレビや新聞では、元漁民との報道が多いと思います。しかし、これを鵜呑みにしてはいけないと思います。
--------------
もともとソマリアでは、産業としての漁業は成立していませんでした。
まあ小さな船で一日の糧を得る程度の漁業がなされていたという程度のものなんですね。
--------------
↑引用ここまで

「産業としての漁業」がなくても「一日の糧を得る程度の漁業」で暮らしていたのであれば、乱獲で漁場を荒らされた漁民が海賊化するというのはありうる話だと思いましたが……。
もう少し紹介しましょう。

↓ここから引用
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海賊達自身がですね、まあその外国メディアの取材に対して「外国船の乱獲で漁業ができなくなったんだあ!」「やむおえず海賊になったんだ」と発言しているんです。
--------------
つまり自分たちの置かれた哀れな境遇をアピールして、外国メディアから同情を引き出そうと。
--------------
↑引用ここまで

なるほど。たしかにテレビで流されている「海賊を名乗る人物へのインダビュー」は、海賊側からテレビ局にアピールしてきた可能性もあります。

海賊が活動をしている映像もテレビで流されていますが、竹田いさみさんによるとこれも「海賊」の側がPR活動のために提供したものだそうです。「海賊」に対する臨検の映像は取り締まりをしている側が撮った映像でしょうけど、「海賊」の行動にカメラがぴったりと付いて撮影している映像は、たしかに「海賊」側が提供した、あるいは「海賊」側があえて撮らせた可能性があると思います。

竹田いさみさんは、さらに「海賊」がさまざまなハイテク装備をしていることを紹介し、「ただの漁民とは思えませんね」と言っています。

軍事評論家の江畑謙介さんも、1月31日に放送されたNHK『週刊ニュース』でのインタビューで、「海賊」について以下のように話していました。

↓ここから引用
--------------
例えばアフガニスタンやイラクでなんかで行動している、非常に組織化された重武装の集団が洋上で活動していると。
--中略--------
(「海賊」が持っている)ロケット弾の発射機も、もともとは戦車を破壊するためのもの
--------------
↑引用ここまで

ということです。たしかに「元漁民」という言葉で、素朴な人達というようなイメージを持っていたとしたら、認識を誤る危険性はあります。

ただ、竹田さんに質問しているラジオのパーソナリティーは「元漁民……そんな簡単にできるわけないだろう」「日本のメディアは、あきらかにミスリーディングしている」などとオーバーなリアクションをしすぎだと思いました。

番組の第2回目では、氏族の有力者が作った私設海軍(沿岸警備隊)が「国際的な密輸グループに変身した」という説が語られます。

番組紹介ページ
http://www.tbsradio.jp/st/2009/01/18_4.html
実際の音声
http://podcast.tbsradio.jp/st/files/sakasa20090108.mp3

私設海軍(沿岸警備隊)が「海賊」に変化していく過程として、驚くべき内容が語られます。「海賊」は、民間軍事会社であるハートセキュリティ社の研修を受けたというのです。

↓ここから引用
--------------
実は2000年前後、いまから8年前ですね、9年前にですね、イギリスの海洋安全保障の会社がありまして、民間のコンサルタント会社でハートセキュリティっていうんですが、ここと契約を結んだんですね。
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ここで契約を結んで多額の契約金を払ってですね、イギリス人の専門家を派遣してもらいます。そして高速艇の操縦とか武器の使用、ま、武器にはRK47とかRPGロケット砲とかですね、それからあと、衛星電話の使い方ですとか小型レーダーの使い方、また、犯人の逮捕術とかですね、対外広報の仕方など、まあ幅広い分野で海洋安全保障の研修プログラムを導入したと言われています。
--------------
↑引用ここまで

ハートセキュリティ社は、イラクで勤務中に武装勢力に襲撃されて亡くなった斎藤昭彦さんが勤めていた会社です。民間軍事会社に雇われた日本人がイラクに行っていたという事実は日本で衝撃的なニュースとして伝えられました。

前述の竹田さんの説が本当かどうかはわかりません。ネットで検索すると、出てくるものはほとんどが竹田さんの説を元にして書かれているものです。
ですので、これが正しいのかどうかの検証はできませんが、興味深い話だとは思います。

「対外広報の仕方」もハートセキュリティ社から学んだということですから、「海賊」達がインタビューで「同情を引き出そうと」して「自分たちは元漁民だ」と宣伝するという説も、なるほどと思わせます。


では、実際に「海賊」達が元漁民なのかどうかですが……、おそらく元漁民なのか元私設海軍(沿岸警備隊)なのかという「どちらか」ということではないのだと思います。ソマリア沖の「海賊」と呼ばれる人達の中には、元漁民もいれば元沿岸警備隊員もいるのではないでしょうか?

そこを冷静に捉えておかないと、「元漁民」なのか「元沿岸警備隊員」なのかどっちなんだ!、という不毛な議論に陥ってしまいそうです。

以前も紹介した水島 朝穂さんのサイトで紹介されているチュービンゲン軍事化情報センターの文章でも「漁師もいれば、元沿岸警備隊員もいる」と書かれています。
http://www.asaho.com/jpn/bkno/2008/1208.html

さらに、これだけ世界で話題になっているのですから、他国の武装戦力などがなんらかの形で関係している可能性もあるとは思います。


竹田さんはラジオで、私設海軍(沿岸警備隊)が変貌した「国際的な密輸グループ」が麻薬などを密輸しているとして、いかに「悪い組織」であるかを強調しています。

そして、ラジオのパーソナリティも「アルカイダを作ってしまったのと似たような話」「フランケンシュタインを作ってしまった」などとオーバーな表現をして、センセーショナルにしようとしています。

話としては面白くできていますが、そこまで決めつけられてしまうと本当なのかどうか疑問もわいてきます。

仮に、「海賊」が誕生した経緯が竹田さんの説の通りだとしても、300人ほどいると言われている「海賊」の中に、元は漁民として生計を立てていて現在では海賊をやっている人達がいる可能性も否定はできません。

物事にはさまざまな要素があり、組織にはさまざまなタイプの人が集まっています。

ですから、「海賊は全員、元漁民なんだから、ぜんぜん悪くないんだ〜」と言ったら、それは間違いだと思います。少なくとも犯罪行為をしているのは事実ですし。
しかし、「海賊は元漁民じゃない。極悪犯罪集団だ!」などと言い切ってしまうのも、正確とは言えないでしょうね。
ラベル:海賊 自衛隊
posted by あつこば at 11:52| Comment(9) | TrackBack(0) | 自衛隊 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
海賊が元漁民ではない。と言う主張が、何を言いたいのかわかりません。漁民に高速艇や武装ができるわけがないことは最初からわかりきった話です。資本がどこから出ているのか?は別問題です。航法などの専門家がいないとなりませんので元漁民が雇われて当然だと思います。
Posted by とほほ at 2009年02月13日 12:50
大体元漁民だからといって犯罪行為をやって良い分けないでしょう。
Posted by 名無し三頭兵 at 2009年02月13日 14:14
なんで犯罪なのですか?
Posted by とほほ at 2009年02月13日 15:59
他人の船に武器を持って乗り込み、
船を乗っ取って身代金を取るというのは、
やっぱり犯罪でしょうね。
彼らからすれば、日本や欧米がやってきた乱獲や、廃棄物の投棄が、そもそも犯罪なんでしょうけど。
Posted by あつこば at 2009年02月15日 12:16
もうやめたら??

あつこばさんが何を主張したいのか
さっぱりわからない。

犯罪行為は犯罪行為ですよ。犯罪行為
に手を染める人間は、単なる犯罪者。
国際海洋法条約にのっとって、厳正に
対処すればいいだけの話です。

仮に貧乏だから、とか、諸外国が海を
汚すとかのこじつけで、全く関係のない
商船を乗っ取り、身代金を要求すること
に情状酌量するのであれば、全世界の
海で外国商船が一斉に危険にさらされる
でしょう。

馬鹿野郎がほざく論理は知る必要はあっ
ても、理解する必要は一切ない。
Posted by 通りすがり at 2009年02月15日 21:37
現時点で私が主張したいことは、
http://atsukoba.seesaa.net/article/113340886.html
http://atsukoba.seesaa.net/article/113517003.html
を読んでいただけるとわかります。

「海賊対策」での見切り発車は良くない、
その背景には中国への対抗意識がある、
政府は、海賊についてもっと知ってから、国会審議等の国民的な議論をしたうえで、派遣(派兵)するかどうかを決めるべきだ、
というのが、現時点での私の主張ですね。
そこは一致できる方が多いと思います。

そして、物事を判断するためには、正確な状況認識が必要です。
状況認識のためには、自分の主張に基づき情報を把握するのではなく、できるだけ自分の主張は排したうえで、多くの情報を収集して正確な分析するべきです。
「馬鹿野郎」などと感情的になるのではなく、相手側の主張も冷静に捉えて分析しようという意識が必要ですね。
Posted by あつこば at 2009年02月17日 07:55
あつこばさん、馬鹿野郎か否かは感情の
問題ではなく、法を守る人間か否かを
冷静に判断した結果ですよ。

ゴミが海に撒かれたとか言って勝手に
無関係の商船乗組員を人質に取る行為は、
一切情状酌量の余地がありません。
冷静に捉えれば捉えるほど、「馬鹿野郎」
としか分析できませんよ。これに何らかの
対処をするのに国民的合意なぞ再確認する
必要はないでしょう。責任ある国家の義務
です(国際海洋法条約100条)。

よって、日本が悩むべきは「対処すべきか
否か」ではなく「いかに対処すべきか」に
尽きると思いますよ。
Posted by 通りすがり at 2009年02月18日 00:36
>「海賊対策」での見切り発車は良くない、その背景には中国への対抗意識がある、政府は、海賊についてもっと知ってから、国会審議等の国民的な議論をしたうえで、派遣(派兵)するかどうかを決めるべきだ、

なるほど。あつこばさんは他国の海軍派遣には賛成ということでよろしいですか。それに中国への対抗意識はもってはいけないものなんですか?中国が「日本に対抗意識」を燃やした場合はあつこばさんはしっかりと批判してくれることでしょう。

第一、あつこばさんは最初は「ハートセキュリティのハの字もでてこない」状態で「先進国の乱獲や海上投棄が原因だ」といっておられたではないですか。

最初のあつこばさんの意見は崩壊してるんです。それなのに「全員が漁民ではないか・・」に変わっている。

自分の情報収集能力にすこしが疑問をもったらどうですか?ハートセキュリティが訓練したことなんて結構詳しい人では常識だったんですよ。
Posted by at 2009年03月26日 20:47
それと日本や欧米が「ソマリア沖で乱獲」したという証拠はあるんかいな。
ソマリア沖だけで乱獲したのではないと「ソマリア沖で海賊活動が活発」な理由が説明できない。

他のところではなんで海賊化してないんですかね?
Posted by at 2009年03月26日 20:49
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