
防衛省 2009年度予算の概要(案)より http://www.mod.go.jp/j/library/archives/yosan/2009/yosan.pdf
前回は海上自衛隊の特殊部隊「特別警備隊」について書きましたが、今回は護衛艦についてです。
今回は、汎用護衛艦「さざなみ(DD-113)」と「さみだれ(DD-106)」の2鑑が派遣されることになっていて、準備を進めています。いずれも呉を母港とする第8護衛隊に所属しています。
イージス艦(ミサイル護衛艦)の「こんごう」「あたご」などに比べると少しだけ小さい汎用護衛艦です。

Copyright (C) Vessel And Ships Photo Gallery http://www.vspg.net/jmsdf/dd113.html
前回紹介した「特別警備隊」は、広島県江田島市の江田島基地内に本部があるそうです。昨年、隊員を死亡させる事件が起きた時は呉地方総監部が対応しています。「特別警備隊」と近いので連携が取りやすいというのも呉を母港にしている護衛艦が派遣される理由かもしれません。
もうひとつ、護衛艦「さざなみ」が派遣されることになった理由として推測できることがあります。

(Wikipediaより)
これが「さざなみ」です。以下の画面で明るくしてある部分がレイセオン・システムズ社製のファランクスCIWS(艦載近距離防空システム)といいます。下に20mm機関砲があり、上の白い円筒の部分がレーダーです。その右上の矢印で示した部分に光学照準機が付いています。この光学照準機が付いているのがファランクスCIWSの「ブロック1B型」だそうです。

「ファランクスCIWS」というのは、ミサイルなどの攻撃を受けた時に撃ち落とすシステムなのですが、従来型では空中のミサイルなどを撃ち落とすだけだったのに対して、「ブロック1B型」の場合は「海上の小型目標」への攻撃も可能になっているそうです。
この「ファランクス ブロック1B型」を搭載している護衛艦は限られているため、現時点で搭載している「さざなみ」が派遣されることになったという推測も成り立ちます。
この「ファランクス ブロック1B型」によって、実際に「海賊」への攻撃がされるのかどうかはわかりません。
「ファランクスCIWS」に搭載されている20mm機関砲の他にも、12.7mm機関銃があります。
「さざなみ」と「さみだれ」の「両艦は海賊船に対応できるよう、小回りのきく機関銃を置く銃座が新設された」とのことです。
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/hiroshima/news/20090203-OYT8T01008.htm
http://ascii.jp/elem/000/000/215/215225/
に画像があります。
また、赤星海上幕僚長は会見で「機関銃架台への防弾板付加などの工事を進めている」ことを明らかにしました。
http://www.asagumo-news.com/news/200902/090219/09021901.html
たしかに武装した「海賊」から攻撃を受けた場合に対処するために防弾板は必要でしょう。甲板から自衛隊員が撃つわけですから、相手から撃たれる可能性もあります。
「ファランクスCIWS」の場合は、自衛隊員は艦内にいて、リモートコントロールで精密射撃ができるそうですからそのぶん危険は減りますが、生身の「海賊」に対して過剰防衛になってしまう可能性もあります。
いずれにしても「ファランクスCIWS」の20mm機関砲や、防弾板を付加した12.7mm機関銃などで、自衛隊員が人を殺したり、殺されたりする可能性が高まっています。
与党海賊対策プロジェクトチームは、昨日の会合で「海賊対処法案」の素案を大筋で了承しました。
その法案では自衛隊による「危害射撃」を認めています。自衛隊側は「海賊」が商船などに近づいているだけで(警告に従わなかった場合とはいえ)危害を与える攻撃ができることになります。
さらに「海賊」が逃げている時にも危害を与える攻撃ができます。(注:法案では見送られました。追記あり)
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20090226ddm002010069000c.html
自衛隊が海外で「任務遂行のための武器使用」ができるようになるのは初めてです。「正当防衛」や「緊急避難」ではなくても相手に危害を与える攻撃ができるわけです。憲法九条を持つ国としては、そうした法案を許してはいけないでしょう。
P.S.
「ファランクスCIWS ブロック1B型」等について教えてくださった方に感謝します。
【15時27分 追記】
http://www.nikkei.co.jp/news/seiji/20090226AT3S2502625022009.html
によると、「警告後に海賊が逃亡した場合の射撃は認めない方向」だそうです。
どちらが正確な情報なのか、よくわかりませんね。
【3月15日 追記】
海上自衛隊の護衛艦が「見切り発車」した前日の13日に海賊対処法案が閣議決定しました。法案では、逃走する海賊船への射撃は見送られたそうです。
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/090313/plc0903130257003-n1.htm





射撃に関する報道が二つあるようですが、
今回の任務はあくまで海賊を取り締まる事ではなく、商船の護衛の為に「海賊を近寄らせない」方針で行なうとされているので、
>「警告後に海賊が逃亡した場合の射撃は認めない方向」
の方が正しいかと思われます。
また、危害射撃、とは言っても、正当防衛・緊急避難の範疇から大きく脱する物ではないでしょう。
正当防衛や緊急避難では、相手から攻撃を受けるまでこちらからは撃てない、つまり自衛官や商船が危機に晒されるまで何も出来ないという、これもまた非常に危険な状態です。
一方、今回認められるのは、海賊が一切の警告を無視し、警告射撃すら無視して接近を続けた場合の射撃です。
「いわば、刃物を持った人間が、警察官の静止と警告射撃を無視して近づいてきた場合に射撃する」というのに等しいでしょう。
これは、正当防衛の範疇を逸脱するものではない、と思うのですが、いかがでしょうか?
立場は違っても、きちんと情報交換をしたり意見交換をできる方はありがたいです。
細かい話ですが(^^;)、mixiのコミュは「反戦のための軍事入門」です。
http://atsukoba.seesaa.net/article/109841690.html
「海賊」が逃亡した場合については、ご指摘のとおりかもしれません。まだ「素案」の段階の報道ですので、今後も注視する必要はありますね。
たしかに今回の場合は正当防衛・緊急避難の範疇から大きく脱することはないかもしれません。そして、新法ができていない状態で自衛官の方が危険にさらされるよりは、法整備ができたほうが安心かもしれません。そこは判断が難しくて、新法ができてそれに基づいて踏み込んだ活動をしたために自衛官の方が危険にさらされるということもあり得ますね。
いずれにしても国会での議論もせずに拙速に派遣(派兵)を決めてしまったのは問題ですし、「海賊対処法」が成立するとこれまでの「正当防衛・緊急避難」からちょっと外れた「危害射撃」ができるようになるのは事実でしょう。
もともとは海外に出ないはずだった自衛隊が、そのようにして少しずつ活動範囲を拡げ、殺したり殺されたりする可能性が高まっているわけです。
海賊がかわいそうだから、自衛官には
弱い武装で、しかも正当防衛・緊急避難
のしばりをかけようということですか?
過剰防衛と言いますが、ではRPG-7を保有
する海賊に見合った武器とは何ですか?
RPG-7って言う時点で殺傷力抜群な重武装
ではないですか??
私が海賊なら、諸外国の軍艦に護衛され
た艦船ではなく、そのような国内の無意味
な議論で手足を縛られた商船を攻撃します。
何しろ、武器は同程度のものに手加減して
くれるは、危害射撃は免除してもらえるは、
略奪後、とりあえず逃げさえすれば逃がし
てもらえるは、至れり尽くせりですから♪
憲法9条を守りさえすれば、商船の安全は
守らなくてもいいのでしょうか。根本的な
錯誤を感じます。
軍事について、ほとんど知らないものですから、読ませていただいて、大変勉強になりました。
私は9条を守る立場にいるので、もちろん、ソマリアへの派兵は反対です。政府は、あまりにも急いで、国民をほとんど議論に巻き込むことなく、この派兵を決めてしまったことは、全く納得ができません。さらに、国民にわかる形で、しっかりと説明するべきであるにもかかわらず、それもしていない。これは大きな問題です。
ソマリア派兵について考えていくのに、その軍事面の実態について知ることの大切さを最近、実感するようになりました。あつこばさんのこうした取り組みに対し、とても尊敬いたします。これから少しずつでも勉強していかなければならないと思っています。
ところで、シーレーン防衛のためだから、海自を派遣するよりほかないという主張がよくあります。私もその主張に、資源がないと困るという自身の利害を思うと、護憲派でありながら、正直、動揺してしまいます。他の方はどうなのでしょうか。調べてみたところ、毎日新聞世論調査で、海自派遣賛成が47%、反対42%とあり、賛否の理由については載ってはいませんでした。その理由がどうなのか気になるところです。
シーレーン防衛より、派兵の違憲性の方が大問題であるという主張があります。伊勢崎賢治さんはそう主張されています。動画「ソマリア海賊退治へ自衛隊。めちゃくちゃ違憲!伊勢崎賢治」http://www.youtube.com/watch?v=siOuDEmLN_s
私はこの伊勢崎さんの主張に賛成です。
違憲が高い派遣に対しての批判力が弱くなっている日本世論を異常と看做し、それを大変憂慮する伊勢崎さん。その言葉を聞き、痛いところをつかれたように、反省してしまう自分がいました。
軍事関係は難しいですよね。少し詳しい方が書いているのを読んでも理解できないことが多いです。書いている方はご自分ではわかっているつもりでいても、兵器の名前や型番など知らない方にはわかりませんよね。文章を書く際にそうした点を配慮できない人が多くて困ったものです。
このブログは軍事に関心が高くない方にもできるだけわかりやすく書くように心がけています。週に一度以上は更新する目標で書いていますので、ぜひ、またご覧いただけると幸いです。
「海賊対策」での派遣(派兵)と憲法九条に関しても、なかなか難しいところです。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2009022602000107.html
↓ここから引用
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政府は、アフリカ東部・ソマリア沖での海賊対策では、自衛隊法に基づく海上警備行動での武器使用基準では、海自隊員の安全が確保できないと考えている。
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今回骨子に明記した新たな武器使用基準は「憲法が禁じる武力行使に当たる」という批判は当然予想される。こうした批判を回避するため、政府は海賊対策を警察活動と位置づけたほか、海賊を「国や国に準ずる組織」ではないとして、武力行使に当たらないという論拠をつくった。
--------------
↑引用ここまで
つまり、「海賊対処法案」を作っている与党プロジェクトチームは「海賊は国家じゃないから国や国に準ずる組織に対する武力行使には当たらない」と言いたいわけです。
これはもちろん憲法の精神に反しています。
そもそも、きちんとした議論もせずに自衛隊の派遣(派兵)を拙速に決めてしまっておいて「自衛隊が行くからには武器も使えるような法律を作らなければ危険だ」などという論理は本末転倒です。
まずは法律ができる前に決めた自衛隊の派遣(派兵)を撤回・中止し、国会での冷静な議論をしたうえで派遣(派兵)するかどうかを決めるべきです。
青二才が突貫工事で造った暫定案ですよ。
大東亜戦争終結直後に、ソマリア沖で
国際海洋法条約の精神にのっとって各国が
協調するなんて、全く考えられていません。
時代にそぐわない憲法は改めるべきです。
私がもう一つ、極めて異常だと考えるのは
海賊の被害防止・極限するためにどうすべ
きか、という視点が全く欠けていること
です。普通は憲法が市民の安全を保障する
から憲法を手段として守る、という議論に
なると思うのですが、何か憲法護持がそも
そもの目的のように読み取れてしまいます。
根本的な目的は市民の安全を保障すること
ではないですか?何故この視点があつこば
さんにもパンさんにも全く欠けているので
しょうか?非常に興味があります。
いる刑法36条37条の基準が、何故に
環境も何もかも全く違うソマリア沖の
洋上での海賊取り締まりに持ち出されるのか
全く理解できません。
また、確かに国対国の国際紛争であれば、
過剰警備は紛争の激化に繋がりますが、
明確な国際法違反行為を繰り返す貧乏海賊
相手なら、そもそもエスカレートなんて考
えなくても良い。であれば、海賊が震え上
がる程の重武装と防御を備えた艦艇が現場
に向かうのは極めて理性的で合理的な判断
です。
私は、海賊が可哀想などと考える国民は
極めて希な存在ですので無視して良いと
考えます。ここは政府が責任を持って迅速に
対処すべき時であって、無駄な議論に時間を
費やすべきではないと考えます。
本当ですね。軍事関係は難しいです。あつこばさんのブログは軍事に無知な私にとって、大変ありがたいです。これからお世話になります。どうぞ、よろしくお願いいたします。
ところで、海自派遣ありきは本当におかしいですね。派遣を撤回・中止し、国会での冷静な議論がまず必要ですよね。あつこばさんのおっしゃることに全く同感です。
火事が起きていますが、どうするか?
なんて悠長な事は国会で議論しませんよね。
まずは人命であり、生命財産の保護です。
思考過程がここから出発しない議論など
到底平和主義者の議論とは認められません。
「海賊」はイラクで香田証生さんを殺した勢力とは質が違います。拘束されていた日本人の船長は先日、帰国しました。
http://www.okinawatimes.co.jp/news/2009-02-25-M_1-001-1_002.html
いまのところ、人質が殺されたという話は聞きませんし、これまでに伝えられている他の例でも人質に対する扱いは比較的丁寧なようです。その反面、軍艦が攻撃をして「海賊」を殺した例もあります。
もちろん、不安定な地域ですので今後、人質に危害を加えるような勢力が現われてくる可能性もあります。
だからこそ根本的な原因も含め冷静に対策を考えるべきであり、「とにかく軍艦を派遣すればいい」という発想は問題があると思います。
取られているのに、人質の扱いが丁寧なんて
何故そんな恐ろしく呑気なことを言えるの
ですか?
あつこばさん、「まず海自艦艇の派遣反対
ありき」からスタートするからこうも主張が
滅茶苦茶になるんですよ。
船員の安全確保、海洋交通の秩序回復、
身代金・強奪品による経済活動の阻止、
といった現実の問題こそ解決されるべきです。
現実から目を背け、海賊の主張をマジメに
受け止めようとしたり、カビ臭い憲法9条
に固執したりするのはもう止めませんか?
滑稽ですよ。
小川和久さんは、海自派遣ありきに疑問をもたれているようですね。
超人大陸(http://www.choujintairiku.com/top2.html)小川和久のアナライザー
を見ました。勉強になりました。
海保で対処すべき。海自は海保のバックアップの役割を担うべきであると。攻撃射程内から回避することが大事であるという主張は自分の想像外のことで、驚きました。軍事の専門家というのは、そのように考えるのだと感心しました。
イケイケドンドン的な発言をする政治家の主張とは全く違って、冷静で、現実的な分析に基づいた主張であると私は感じました。
まず、小川さんのようなプロの考えが政府で議論されないのは全くおかしい。
もちろん、その考えが違憲あるか否かは検討されるべきことですが。そのような議論もなく、まず、海自派遣ありきはおかしい。
左派の法律家がそれは違憲というならば、私はそれに従うことになるでしょう。
同決議は、空爆を含むあらゆる措置を取る事の承認と将来のPKO(平和維持活動)を設立を決議した物ですよ。
しかも、国連憲章第7章「平和に対する脅威、平和の破壊及び侵略行為に関する行動」に基づいて全国連加盟国に対してロジスティクス支援を要請しています。
北朝鮮ですら自国船舶を救出に急行したアメリカ海軍艦艇に感謝のコメントを出しているご時世に…。
(なお同決議は全会一致で採決されております。)
それに国連が要請(国際連合安全保障理事会決議1851)しているのは「掃討、並びに当該行為に使用される船舶および武器の押収および廃棄」であって、海保が所有するような自衛程度の能力しかない船舶では有りません。
(明確に軍事作戦への協力を要請しています。)
海自派遣に反対するのであれば、軍の派遣を要請する国連を先ず非難をすべきで有って、小手先の日本政府避難を為さるのであれば、私個人としては他意が有るとしか思えませんが。
「小川和久のアナライザー」というのは知りませんでした!
情報ありがとうございます。聞いてみます。
たまさん;
国連決議や国連憲章に関しては、私は詳しくありませんので検討してみます。
国連決議を批判する必要もあるかもしれませんね。
そうした主張をされている方はいるのでしょうか?
もう少し詳しく、URLなども示しながらご説明していただけると皆さんも納得するかもしれません。
日弁連は、つい先ごろ、ソマリア派遣反対の声明が出しました。待ってました、って感じです。
日本弁護士連合会、2009年(平成21年)3月4日、「自衛隊のソマリア沖への派遣に反対する会長声明」、日弁連HPにおいて。
http://www.nichibenren.or.jp/ja/opinion/statement/090304.html
日弁連の声明
> 「自衛のため」の範囲を遙かに超えて
これはその通りですね。日弁連は大きな組織ですから声明文を決めるのにも時間と労力がかかったでしょうね。
国連決議1851はアメリカの提案によるものだそうですが、
> 武力行使を含む「必要なあらゆる措置を講じること」
というのは非常に問題がありますね。
国際紛争を解決する手段としてのみですので、
国対国の争いではない海賊対策に関しては
そもそもお門違いでしょう。
海上警備行動は、あくまで平時の警察権行使
ですので、
武力紛争ではありません。
そもそも、このような事態を想定していなかった
日本国憲法は、今こそ変えるべきです。現実を見ない
日弁連の声明なぞ、国際的には「日本は何もしない」
というアピールにしか過ぎません。
日本がなすべきことは「日本国憲法が宣言する恒久平和主義の精神にのっとり、問題の根源的な解決に寄与すべく、関係国のニーズに配慮しながら人道・経済支援や沿岸諸国の警備力向上のための援助などの非軍事アプローチを行うこと」ときちんと書かれていますよ。
何もしないに等しい。
現状で人質が取られているのに、悠長な
ことを言っている場合でしょうか?
まずは緊急事態対処です。
日弁連の声明は、火事の現場で「そもそも
ロウソクは危ないから根本的に廃止すべき」
だなどと呑気に議論しているに等しい。
あるいは、風邪をこじらせて肺炎になっている
患者に、「うがい手洗いで風邪は予防できる」
などと言うに等しい。