2006年05月26日

【座間】で、何が問題なの?

今回の米軍再編の中で、アメリカがいちばんやりたがってるのが、神奈川県にあるキャンプ座間への陸軍第一軍団司令部の移転だと言われています。

連日のように報道されている沖縄の「普天間移設」や、市民投票で注目された岩国基地に比べると、知らない人が多いのではないかと思いますが、これが重要なんですね。

■米軍の前方司令部が座間に!

昨年11月15日の神奈川新聞に額賀防衛庁長官のインタビューが載ってました。
曰く、
「神奈川は負担が軽減する所も
若干増えるかもしれない所もある。」


座間市の星野市長はこの発言に対して、11月18日に市連絡協議会が主催した集会で「若干どころか大強化だ!」と反発しました。

この集会で星野市長は「ミサイルを撃ち込まれても阻止する!」などと豪語しました。この発言についてはいろいろあるのですが、またの機会に書きましょう。

とにかく、星野市長が言うように「大強化」なんですね。

zama+title.jpg

これがキャンプ座間の中で最も象徴的な建物です。キャンプ座間の敷地全体は、座間市と相模原市にまたがっていてゴルフ場や公園・教会もあります。
この特徴のある建物は、米国防総省を模して作られたそうで「リトル・ペンタゴン」と呼ばれています。
ここに、アメリカ、ワシントン州フォートルイスにある米陸軍第1軍団司令部が来るというのです。

■日米安保条約の「極東」の範囲を超える

「米陸軍第1軍団司令部」というのは、
地球の約半分の面積をカバーする司令部だそうです。

日米安保条約では、在日米軍は「極東の平和と安全を守るために」日本にいる事になっています。
「地球の半分」だと「極東」を越えてしまいます。

ところが、日米両政府の間では合意してしまいました。
きちんとやるのならば、日米安保条約を変えてやらなければならないはずですが、国民にきちんと説明もしないままに合意してしまったんですね。

■司令部ユニットが形を変えてどこにでも行く

今回の米軍再編は、あっちの基地をこっちに移すというだけじゃなくて、実は、米軍の組織や装備を改革する軍事革命がメインなんです。

キャンプ座間に来る事になった「米陸軍第1軍団司令部」は、「UEx」=前方運用司令部(Unit of employment)という司令部に改変されると言われています。

このへんについては、軍事リポーターの石川厳さんが雑誌『軍事研究』の2005年12月号に詳しい文章を書いています。

それによると、昨年の9月、ローレス国防副次官が新しくなる司令部について、こう話したそうです。
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大型にもなれば小型にもなる。機動性に富む司令部(mobile feadquaters unit)といえる。
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石川厳さんの文章によると、この司令部は「海外派遣部隊を指揮する司令部」だそうで、司令部だからと言ってアメリカ本国から命令するのではなく、戦闘部隊の動きにあわせてどんどん移動して指揮をするそうです。

アメリカの軍事革命では「モジュール化」というのが進んでいて、C17やC130などの輸送機で世界中のどこにでも行ける態勢が組まれています。

で、いざ有事となったら「機動性に富む」司令部ユニットも移動するのでしょう。

その際に、「大型にもなれば小型にもなる機動性に富む」司令部ユニットですから、小型の司令部ユニットが極東を越えて指揮をしていても、他の司令部ユニットはキャンプ座間に残っているという事が考えられます。

「極東の範囲を超えてる」と指摘されたら、「あれは別の司令部だ。現に我々はキャンプ座間にいるじゃないか」とでも言い訳するのでしょうか?


石川厳さんの文章には、こんな一説もあります。
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UEx司令部はできるだけ前方に持ってくる。というより、日本の場合、そういう司令部を持ってくることを政治や社会の諸事情が許すようになったのを米軍がちゃんと見て取って"座間移転"に執着している……
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日本に司令部を持ってきても、そんなに反対されないだろう、とアメリカに思われているわけですね。

■司令部を持ってくるアメリカの狙い

なんでアメリカは、そんなにキャンプ座間に司令部を持ってきたいのでしょう?

軍事アナリスト、神浦元彰さんのサイトでは、2004年10月21日に以下の文章が書かれています。
http://www.kamiura.com/new10_2k4.html
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将来は、現在の6カ国協議が朝鮮半島統一後に5カ国協議になると、東アジアの安全保障を話し合う地域国際機関になる可能性が高い。その時、日本にアジアを担当する米陸軍司令部(司令官 大将級)を置いているアメリカの発言力が増すという読みがある。アメリカが座間にこだわるのはそのような事情があるからだ。
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なるほど、やはりアジアを経済的に支配したいという欲があるんでしょうね。

もっとも、別の説もあります。

軍事評論家の田岡俊次さんは、5月14日に放送されたテレビ朝日系列の『サンデープロジェクト』で、「米陸軍第一軍団司令部なんてたいした事ない」と話しています。

田岡俊次さんの説は以下です。(要約)
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テロ以降、従来型の国と国との争いでは無くなったので米軍の多くはアメリカに帰す。
ただし、それだとアジアの他の国がアメリカの軍事力が弱まったと見るから、ポーズで新しい司令部を置くだけ。
銀行が支店を閉めるときに「いっそうお客様のお役に立つように……」などと言い訳するようなもの。
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うーむ。どうなんでしょうね。
田岡俊次さんがいうように、甘く考えていていいのかなあ。

■自衛隊の変貌が米軍再編のポイント

石川厳さんの文章で紹介されていますが、『世界週報』2005年10月11号に米国防関係者の文章が載っていて、その中に「在日米軍再編は自衛隊と切っても切り離せない」と書かれているそうです。

また、この文章には、さらにこんな事も書かれています。
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今回の米軍再編は過去50年間の基地再編や土地の返還とは異なり、
すべての"鍵"は自衛隊にある。
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簡単に書くと、日米の軍事面での一体化が進み、アメリカが担ってきた役割を自衛隊にやらせるようにするのが、今回の米軍再編だと思うのですが、そのへんについてはあらためて書きましょう。

■日米の陸軍司令部が座間に集結!

さて、24日にこんな記事が出ました。

産経新聞 改正防衛庁設置法が成立 コスト削減へ「装備本部」を新設
http://www.sankei.co.jp/news/060524/sei057.htm

上記の記事は「コスト削減」を強調していますが、この記事の後半にこんなくだりがあります。
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テロやゲリラ攻撃への対処、国際平和協力活動への取り組み強化のため陸上自衛隊に中央即応集団を新たに編成
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「国際平和協力活動」と書かれていますが、日本が協力している「国際」というのは「アメリカ」のような気がします。

それはさておき、陸上自衛隊に「中央即応集団」というものができる事が法律上でも決まってしまったわけです。
で、この「中央即応集団」の司令部は、石川厳さんによると「海外に派遣する自衛隊の部隊を指揮する司令部」だそうです。

つまり、前述の米陸軍第一軍団の司令部に対するのが、陸上自衛隊の「中央即応集団」司令部になるわけです。

昨年9月16日、大野防衛庁長官(当時)は記者会見で、
「日米の今回のとトランスフォーメーションの考え方の中では、日本の自衛隊の司令部、アメリカの司令部がなるべく近い方がよいという考え方もあり得るわけであります」
と語ったそうです。

この中央即応集団司令部は、2012年度末までにはキャンプ座間に来る事になっていますが、建物を作るのと地元自治体との調整に時間がかかるという理由で、とりあえず埼玉県と東京都にまたがる朝霞駐屯地に作るという事になっています。

「とりあえず」朝霞に作る建物にも、7億5000万円かかるそうです。これももったいない話です。

■座間市との約束をホゴに?

実は、1971年に陸上自衛隊の部隊の一部がキャンプ座間に来ていました。
その際に、座間市と防衛施設局の間では「自衛隊は増やさない、米軍基地は縮小する」という覚え書きを交わしていたそうです。

今回の中央即応集団司令部をキャンプ座間に持ってくるという話は、約束違反なんですね。

横須賀の原子力空母の話でも書きましたが、
アメリカや日本の政府の約束なんて
信用できない
って事ですね。



posted by あつこば at 20:21| Comment(8) | TrackBack(1) | 米軍 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
なぜ「座間か?」についての’あつこば’さんの見解を聞かせてください。
わたしは、座間基地の第7ゲート近くに住んでいる関係で、座間問題は強ーい関心を持っています。
 わたしは、次のように考えています。
@座間基地は首都圏にある。(米国大使館に近い)
A座間から横田までヘリで10分かからない。ここに空軍の司令部がある。
B座間から厚木航空施設までヘリなら5分以内。さらに横須賀までも10分程度。
いづれも自衛隊基地と同居である。
Cなによりも座間へ配置されるのが、米4軍と統括指揮をする司令部であることに注目している。そこに自衛隊の海外派兵部隊の司令部を配置することがミソ。
*以上の理由だけではない。
@座間基地と相模総合補給廠の敷地の一部を変換するといっている。これはなんとしても座間に新司令部を持ってくる意志のあらわれである。
A相模補給廠への「陸自1300人を配置するのを中止した」と見せかけている。
しかしこれは座間への日米司令部配置を優先するための「玉隠し」。
ここになぜ400両の米軍車両を配備するのか?補給基地だから物資を配備するのは当然で、イラクへ送るとかの意味だとは思われない。8輪装甲車(ストライカー)が含まれることは予測できる。理由は陸自の中央即応部隊司令部とその指揮下の自衛隊員に使い方と指揮訓練をやるのは見通せる。
Bさらに座間にはゴルフ場もあり、近くには家族用の住宅基地もある。第7ゲートの東側は広大な市街化調整区域があり、中央即応部隊の宿舎を建設するという情報もある。(あきさん)
Posted by さがみの風 at 2006年05月29日 18:05
あきさん、コメントありがとうございます。

お返事が遅くなってしまい恐縮です。今後ともよろしくお願いいたします。

ご指摘の点、いずれも、あきさんの読みの通りだと思います。
断片的には報道などで読んでいましたが、整理していただいたので助かります。

基地の一部をちょっとだけ返還すると言っているのは、地元を説得するための材料として小出しにしているのでしょうね。

アメリカと日本政府のいつものやり方ですね。

今回の米軍と自衛隊の再編で地元に住んでいる方には、「なんでここが強化されるのか」という気持ちがあると思います。

昨年11月に額賀防衛施設庁長官と星野座間市長が会談した際、星野市長が「なぜキャンプ座間なのか?」と聞いたところ、額賀長官からは「キャンプ座間に米陸軍司令部があるから」という短絡的な答しか帰ってこなかったそうです。

座間の問題には注目しています。
今後ともよろしくお願いいたします。

Posted by あつこば at 2006年06月07日 12:40
はじめまして。
相模補給廠のそばに住んでいます。
さっそく私のブログのブックマークに入れさせていただきます。
Posted by ブーゲンビリア at 2007年09月22日 08:56
ブーゲンビリア さん、はじめまして。

たしか相模原市は一時「容認に転じた」という新聞報道があり、市はそれを否定しましたよね。

小川市長が亡くなったこともあり、状況がどうなっているのか気になっていましたが、私はなかなか追い続けられていません。

情報等ございましたら、ぜひ教えてください。
Posted by あつこば at 2007年09月22日 15:42
「容認に転じた」という報道は防衛庁が朝日新聞に流したと記憶しています。記者クラブに行って、朝日の記者に直接聞きました。
また、相模原の市議によると、小川市長はかんかんにおこって、「容認していない」と言っていますが、その後の報道はなかったようですね。
そして、加山市長になってから、人事も変わり、情報が入りにくくなっています。私の想像ですが、駅前の15ヘクタール返還に関わり、何か裏取引があるのではないかと思います。
返還といっても政府に返還されたのであり市は400億??で買えといわれても、そんな金があるわけもなく・・ではまた。
Posted by ブーゲンビリア at 2007年09月24日 08:47
ありがとうございます。

「容認に転じた」という誤報は流れたものの、その後の訂正情報などがあまり出ていないようですね。

市長が替わり、米軍再編特措法も成立してしまい、その後、どうなっていたか探したらこんな報道もありました。
----------------------------------------------------ここから引用----
加山市長は「今後決まる交付金の中身次第では対応を考えなければならない。金で釣られるという意味ではなく、われわれの目指す街づくりをどれだけ国が理解しているかだ」とも述べ、慎重に政府の出方を注視していく構えだ。
-----------------------------------------------------引用ここまで---
(東京新聞 神奈川版 5月24日)

特措法による交付金の存在も、自治体が表立って反対を打ち出しづらくなった要因なのでしょうね。
Posted by あつこば at 2007年09月24日 10:42
2012年4月1日から2013年3月31日までに、沖縄タイムスの一般投稿欄に掲載された投稿は計2379本(「主張、意見」1611本、「論壇、寄稿」411本、「茶のみ話」357本)。

投稿者年齢別の投稿数
10代  27  1.1%
20代  47  2.0%
30代 171  7.2%
40代 271 11.4%
50代 230  9.7%
60代 685 28.8%
70代 734 30.8%
80代以上 213  9.0%
不明   1  0.0%

投稿者の平均年齢は62.64歳。
10回以上掲載された人は、52人。

掲載回数の多い方(敬称略)
第1位 渡真利善朋(44)豊見城市 45回
第2位 仲村直樹 (41)宜野湾市 39回
第3位 高安哲夫 (40)那覇市  38回
第4位 山根光正 (69)那覇市  29回
第4位 知念勇一 (71)嘉手納町 29回
第6位 大嶺よし子(68)豊見城市 26回
第6位 上治修  (50)福岡市  26回
第8位 鳩間用吉 (75)那覇市  25回
第9位 岸本定政 (65)糸満市  24回
第9位 比嘉寛  (65)那覇市  24回
第11位 池辺賢児(35)宜野座村 23回
第11位 幸地忍 (68)八重瀬町 23回


Posted by キン坊 at 2013年04月15日 16:24
なんで座間のエントリーなのに、沖縄に関するコメントなんですかね?
Posted by あつこば at 2013年04月15日 18:29
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