2006年06月14日

米軍再編に隠された本当の狙い

NHKで先日放送された「日本の、これから」という番組は、「負担軽減」を強調しようとする額賀防衛庁長官の主張を全面に出した内容になっていました。

この番組以外でも、NHKでは米軍再編について紹介する場合に枕詞のように沖縄の「負担軽減」という言葉が強調されています。

過剰な負担を強いられている沖縄の問題をなんとかしなくちゃならないのはもちろんですが、今回の米軍再編の内容では「負担軽減」にはなっていませんね。

そもそも米軍再編が
「負担軽減を目的としている」なんていうのは
日本政府のウソでしょう。

「負担軽減」という、いかにも沖縄の人々を思いやったような言葉で覆われた米軍再編の本当の狙いは何かを考えてみたいと思います。

■そもそもアメリカの都合で始まった

米軍再編はアメリカの都合で始まりました。
これについては以下に大雑把に書きました。
http://atsukoba.seesaa.net/article/17765869.html

ちょっと補足します。

ブッシュが大統領選になった頃から、軍の改革が始まりました。
それまで、米軍は冷戦が終わった後も、東ヨーロッパと東北アジアに10万人ぐらいずつの米兵が駐留していました。

2001年に出された「4年毎の国防戦略見直し=QDR(Quadrennial Defence Review)」には以下のように書いてあります。
--------------------------------------------------
(前略)西ヨーロッパと東北アジアに集中したこの海外プレゼンスの態勢は、新しい戦略的環境では適切ではない。
米国の国益が世界的規模となり、世界の他の地域での脅威の可能性が現れつつあるからである。
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(岩波ブックレット 『米軍再編 その狙いとは』 より)

簡単に書くと以下のような事ですね。

グローバリズムが進みアメリカが世界中で資源を取ってきたりお金を儲けたりするようになってきているので、世界中のいろんなところでアメリカに対して文句を言う奴らが出てきそうだ。
だから、ソ連や北朝鮮のような仮想敵国を想定して米軍を置いておくのでは時代遅れになりつつある。

そして、2003年11月25日にブッシュが米軍再編の開始を宣言しました。
その中では、以下のように言っているそうです。
--------------------------------------------------
変化した脅威に適切に対応するためには、活発に防衛力を変革(Transformation)する一方、グローバルな軍事態勢を再編(Global Posture Review)することが課題だ。
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(講談社現代新書 『米軍再編 日米「秘密交渉」で何があったか』 より)

■アメリカに帰りたがってる米兵と家族

2004年8月16日、ブッシュは退役した軍人たちの集まりで再編についての演説をしています。
元軍人やその家族たちに気を遣って喋った内容ですが、ある意味、アメリカのホンネがわかります。
--------------------------------------------------
世界中の我々の同盟関係を強化する一方で、我々はよりよく平和を維持するための新たなパートナーシップを構築するだろう。
それは我々の部隊および軍人家族へのストレスを減少させる。
--------------------------------------------------
(『核兵器・核実験モニター 第217号』より)
http://www.peacedepot.org/nmtr/bcknmbr/nmtr217.pdf

つまり、国外にいる米兵やその家族の人たちの不満がたまっているので、他の国との軍事同盟を強化する事で、多くの米兵をアメリカに帰らせてあげますよ、と言っているわけですね。

続けてこうも言ってます。
--------------------------------------------------
我が軍人たちは軍に勤めているあいだずっと、より多くの時間を家庭で過ごし、より予測可能な状態におかれ、より配備転換が少なくなるのである。
軍人配偶者たちは仕事を変える必要が少なくなり、より大きな安定をえ、より多くの時間を子どもや家族と過ごすことができるのである。
我々が21世紀の脅威に対応するよう軍隊を再配置することによって、納税者はより節約できるだろう。
--------------------------------------------------
(同上)

こうして米軍再編が世界規模で進められ、韓国やドイツでは米軍の大幅な削減が進みつつあります。
その一方で、日本では「負担軽減」というよりも「負担強化」が進んでいるわけですね。

■再編の狙いは同盟国の役割強化

2004年6月23日、ファィス国防次官が議会での証言で米軍再編の五つの原則を掲げました。
--------------------------------------------------
1.同盟国の役割を強化する
2.不確実性と戦うための柔軟性を高める
3.地域内のみならず地域を越えた役割を持たせる
4.迅速に展開する能力を発展させる
5.数ではなくて能力を重視する
--------------------------------------------------
(岩波ブックレット『米軍再編 その狙いとは』より)

こうしたアメリカの狙いに沿って日米の協議が行われた結果、日本では自衛隊と米軍との基地の共同使用やミサイルの共同開発、日米一体となった演習などが増える事になりました。

zama.jpg

象徴的なのがキャンプ座間です。
上記の狙いに沿って「地域を越えた役割」を持った米陸軍第一軍団司令部を改編したUExが来ます。
そして、新しく新設される陸上自衛隊の中央即応集団の司令部も座間に来るのです。
http://atsukoba.seesaa.net/article/18408139.html

同盟国の役割を強化する事で、イラクやアフガニスタンに行って手薄になっている米兵を他の国から撤退させ、アメリカの財政負担を減らす、まさに
アメリカにとっての「負担削減」が今回の米軍再編です。

■アメリカは自衛隊に何を期待しているのか?

2005年の秋にペンタゴンの政策担当次官補代理室がアメリカの議会に提出した報告書『世界規模の米国防態勢強化について(Strengthening US Global Defence Posture)』には以下のように書かれています。
--------------------------------------------------
見直しの狙いのひとつは、同盟国の役割を拡大し、新たな協力関係を築き上げ、かれらの変革を勇気づけることだ。
それによって同盟国の軍の能力と機能を向上させ、世界的な役割と任務を果たさせようというわけだ。
--------------------------------------------------
(『軍事研究』2006年1月号より)

また、ローレス国防副次官は、2005年9月29日にアメリカの上院外交委員会でペンタゴンが自衛隊に期待する変革として、次のように語ったそうです。
--------------------------------------------------
それは自衛隊が明日からでももっといろいろやってくれることだ。
そうでないと、米軍が必要以上に駐留して争いのタネをまくばかりだ。
--------------------------------------------------
(同上)

沖縄の海兵隊をはじめ、在日米軍による犯罪は絶えません。
あまりに犯罪が多いので、
これ以上いると「出ていけ」と言われる事を
アメリカはわかっているんですね。

だから、自衛隊の役割を拡大して、悪さをする米兵はできれば引き上げさせたいのです。

で、アメリカが自衛隊に期待している役割は、具体的には何なのでしょう?

在沖縄米軍トップのジョセフ・ウェバー沖縄地域調整官(海兵隊中将)は、5月末に共同通信との会見で
今回の在日米軍再編で「自衛隊が今後より柔軟に抑止力を発揮できる」と指摘。
そして、「この地域(東アジア)でテロとの戦いが発生した場合には、日本が関与してくれると確信している」とまで言っています。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060531-00000220-kyodo-int
(5月31日 共同通信)

アメリカは自衛隊を、今後も長く続く
「対テロ戦争」に駆り出すそうとしているんですね。

今の段階では、自衛隊が海外派兵している根拠は、間に合わせで作った「テロ特措法」と「イラク特措法」です。今後、特措法ではなくいつでも海外派兵できるようにする「恒久法」が作られようとしています。

石破元防衛庁長官は、
「自衛隊の活動範囲を明確にしなければいけない。
米軍再編と恒久法はセットだ」
と言っています。
(2006年5月3日『毎日新聞』より)

■憲法改定を狙う米軍再編

今回の米軍再編は、「負担軽減」なんかじゃないのはもちろんですが、ただ単に「あっちの基地をこっちに持ってくる」という話でもありません。

「中間報告」「最終報告」と言われている合意文書は、実は米軍と自衛隊の役割についていろいろと書かれています。

いわゆる「中間報告」
日米同盟:未来のための変革と再編
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/usa/hosho/henkaku_saihen.html

いわゆる「最終報告」
共同発表 日米安全保障協議委員会(仮訳)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/kaidan/g_aso/ubl_06/2plus2_kh.html

再編実施のための日米のロードマップ(仮訳)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/kaidan/g_aso/ubl_06/2plus2_map.html

これらをよく読めば、日米安保条約の改定に匹敵する内容が、
安保条約の改定もしていないのに
いつの間にか合意されている、
という事がわかります。

「米軍再編で自衛隊は米軍の一員になる。危険な集団的自衛権の行使は必至」
http://www.bitway.ne.jp/bunshun/ronten/sample/ron/06/017/r06017BNB1.html
(『日本の論点PLUS』前田哲男さんの文章)

合意文書の通りに自衛隊を変えていくと、
集団的自衛権を行使せざるを得ない状況になるというわけです。

「集団的自衛権の行使」という事は、憲法の改定につながります。

憲法改定はアメリカからの要求です。
これについては以前に書きました。
http://atsukoba.seesaa.net/article/17333881.html

アメリカは、いつのまにか日本が憲法を変えざるを得ない状態を作り出そうとしていたんですね。

posted by あつこば at 17:17| Comment(3) | TrackBack(1) | 米軍 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
再編協議でアメリカが当初、なにを要求してきたのかを、以下に書きました。http://atsukoba.seesaa.net/article/19607820.html
Posted by あつこば at 2006年06月21日 14:35
憲法と米軍再編との関係について、あらためて書きました。
http://atsukoba.seesaa.net/article/40697167.html
Posted by あつこば at 2007年05月14日 18:25
補足を書きました。

「対テロ戦争」に自衛隊を投入
http://atsukoba.seesaa.net/article/44789997.html

Posted by あつこば at 2007年06月14日 11:12
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Excerpt: JCJ機関紙「ジャーナリスト」04年10月号から、松尾高志さんの寄稿を再録します。 米軍基地再編 新しい戦闘力に変容 日米同盟強化と一体  在日米軍基地の再編成が問題として大き..
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