2007年06月16日

全国への訓練移転は「専守防衛」を逸脱するのか?

福岡県の自衛隊 築城(ついき)基地で、18日から米軍と自衛隊との合同訓練が行われる事になっています。

これは福岡県だけの問題ではありません。
全国の自衛隊基地に実際につながる問題です。

■「負担軽減」ではなく「被害の拡散」

日本政府やマスコミは、米軍再編を紹介する時に、よく「負担軽減」という言葉を使います。
しかし、それはまやかしで、今回の訓練は
「負担軽減」ではなく「被害の拡散」であると同時に
「自衛隊の役割強化」の側面を強く持つものになっています。

18日から行われる予定になっている日米戦闘機の訓練は、築城では二度目になります。

前回は今年の3月に行われました。
tsuiki.jpg
画像は、その時の抗議行動です。

沖縄の嘉手納(かでな)基地に所属するF-15戦闘機がやってきて、自衛隊 築城基地のF-15戦闘機と訓練をしました。
訓練の内容について空自第八航空団飛行群の高橋司令は
「戦闘機同士の空中戦を、
ある場面を想定して実施」
と説明しました。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200703061300_02.html
「ある場面を想定」というのは具体的にはどんな場面なのかが気になりますね。

2007年3月7日付の"Stars and Stripes"によると、米司令官は
「有事の際には慣れた(自衛隊)基地
から出撃できる」
と語ったそうです。
米軍が各地の自衛隊基地を出撃拠点にするのが、
この訓練の目的のひとつなんですね。

この訓練、「沖縄の負担軽減」が名目になっていましたが、実際に沖縄の嘉手納基地では騒音の被害は軽減されませんでした。

「嘉手納基地の被害を全国に拡散・拡大」
http://atsukoba.seesaa.net/article/43955198.html

■「日米同盟をより強めるための訓練」は
騒音防止の協定を守らない


3月の築城基地での訓練に続いて、5月には石川県の自衛隊 小松基地でも同様の訓練が行われました。

これには茨城県 自衛隊百里(ひゃくり)基地のF-15戦闘機も参加しました。

米軍第一八航空団第六七戦闘飛行隊長のバリー・コーニッシュ中佐は
「日米同盟をより強めるためにも有意義な経験だった」
「米アラスカ州での米空軍演習に向け、参加する空自側との相互運用が高められた」
と語りました。
http://www.hokkoku.co.jp/_today/E20070523002.htm

この中でコーニッシュ中佐は、騒音防止のための協定に関して「守ることは非常に簡単だった」と述べていますが、
市民団体の調査によると、
----------------------------------------------------ここから引用----
コースについては、「努めて市街地を避ける」と定めた小松市との
協定に違反する機体を245機確認した
-----------------------------------------------------引用ここまで---
との事です。
http://www.hab.co.jp/headline/news0000059856.html

■F/A-18戦闘攻撃機との訓練で
「専守防衛」を逸脱


そして3度目の日米戦闘機の訓練が18日から、再び築城基地で始まろうとしています。

今回の訓練はこれまでにはない問題も含んでいます。
過去2回の訓練は、沖縄の嘉手納基地から来たF-15と自衛隊機との訓練でしたが、今回は山口県の岩国基地から来る米海兵隊のF/A-18戦闘攻撃機との訓練です。
F18densen+title.jpg
これが岩国基地近くの上空を飛んでいたF/A-18戦闘攻撃機です。
米海兵隊は沖縄で訓練をしてイラクなどに出撃している
「殴り込み部隊」です。
http://atsukoba.seesaa.net/article/44042952.html

この「殴り込み部隊」を空から支援するのがF/A-18戦闘攻撃機です。
そして、このF/A-18戦闘攻撃機は空母に艦載できる機体でもあります。江畑謙介さんの『[新版]米軍再編』(P427)によると
----------------------------------------------------ここから引用----
空母航空団を構成する部隊の不足を補うために一定の間隔で空母航空団に編入される
-----------------------------------------------------引用ここまで---
そうです。

「戦闘攻撃機」という名前ですが、敵の船への攻撃を主な目的とする機体を海軍では「攻撃機」と呼ぶそうです。地上への攻撃ができる爆撃機のように海の上の船を攻撃するのですね。
そしてF/A-18の場合、F-15のような空で敵の航空機と空で戦う能力も兼ね備えているため「戦闘攻撃機」と呼ぶそうです。

そのF/A-18戦闘攻撃機と合同訓練をするという事は、どういう事でしょうか?
今回は空中戦の訓練だけかもしれませんが、F/A-18戦闘攻撃機との合同訓練が発展すると、
敵の船を攻撃する
米軍のF/A-18攻撃戦闘機を

敵の戦闘機から守るために、
自衛隊のF-15戦闘機が「支援」する
という訓練になるのではないかという懸念があります。

自衛隊は憲法九条があるため、これまでの政府による解釈では「自衛のための必要最低限の実力の組織」でした。
つまり、自衛隊の行動には、敵を先制攻撃するのではなく、あくまで攻めてきた時に守るという「専守防衛」という制限があるわけです。

米軍のF/A-18攻撃戦闘機との合同訓練は、その
「専守防衛」を逸脱する可能性があるのです。

アメリカは米軍再編の大きな目的のひとつとして
「同盟国の役割拡大」を掲げています。
(2004年6月23日、ファィス国防次官)
http://atsukoba.seesaa.net/article/19265503.html

米軍再編によって自衛隊の役割が強化し、「専守防衛」の原則が踏み越えられようとしています。

■全国に訓練を拡大

この訓練に関する日米間の合意文書は以下です。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/kaidan/g_aso/ubl_06/2plus2_map.html
----------------------------------------------------ここから引用----
当分の間、嘉手納飛行場、三沢飛行場及び岩国飛行場の3つの米軍施設からの航空機が、千歳、三沢、百里、小松、築城及び新田原の自衛隊施設から行われる移転訓練に参加する。
-----------------------------------------------------引用ここまで---

iten+logo.jpg

訓練の「移転元」は嘉手納基地(沖縄)、三沢(みさわ)基地(青森)、岩国基地(山口)です。
嘉手納基地のF-15戦闘機、三沢基地のF-16戦闘機、岩国基地のF/A-18戦闘攻撃機、米軍の主力である3つの戦闘機が全国各地の自衛隊基地で自衛隊と合同で訓練をするのです。

三沢基地のF-16戦闘機は、地上を攻撃(爆撃)する能力が高い戦闘機です。自衛隊との合同訓練はまだ行われていませんが、これも訓練が行われると、将来的に敵国の地上を攻撃するF-16戦闘機を自衛隊のF-15戦闘機が「支援」する訓練に発展する可能性がありです。

訓練の移転先は、千歳基地(北海道)、三沢基地(青森県)、百里基地(茨城県)、小松基地(石川県)、築城基地(福岡県)、新田原基地(宮崎県)で行うとされています。
(「移転」というと元のところから無くなるみたいですが、実態としては移転元での騒音被害も無くなりません。)

昨年、石川県の自衛隊 小松基地で行われた航空祭には、
----------------------------------------------------ここから引用----
在日米軍再編で同基地に訓練の一部が移転されるF16戦闘機(青森・三沢基地)二機が初めて参加した。
-----------------------------------------------------引用ここまで---
http://www.hokkoku.co.jp/_today/H20060918002.htm

そして以下の報道もされています。
----------------------------------------------------ここから引用----
小松基地での米軍機訓練移転は今秋にも二度目の実施が予定されている。
-----------------------------------------------------引用ここまで---
http://www.hokkoku.co.jp/_today/E20070523002.htm

日米間の合意文書には
「当分の間」と書かれています。
すなわち、ここに書かれているところだけではなく、
他の自衛隊基地も使うつもりだという事ですね。

合意文書には以下の部分もあります。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/kaidan/g_aso/ubl_06/2plus2_map.html
----------------------------------------------------ここから引用----
将来の共同訓練・演習のための自衛隊施設の使用拡大に向けて取り組む。
-----------------------------------------------------引用ここまで---

江畑謙介さんの『[新版]米軍再編』(P390)によると、
----------------------------------------------------ここから引用----
陸上自衛隊、海上自衛隊の共同訓練・演習も拡大する意図が含まれていると思われる
-----------------------------------------------------引用ここまで---
と書かれています。

全国に訓練を拡大し、
自衛隊の役割が強化されていきます。



posted by あつこば at 17:41| Comment(6) | TrackBack(0) | 米軍 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
昨日書いた文章を若干改正しました。

江畑謙介さんの『米軍再編』は、内容が違うものが2冊出ています。
「『[新版]米軍再編』(P427)によると」に変更しました。

F/A-18攻撃戦闘機→正しくは「F/A-18戦闘攻撃機」でした。

当初、「敵の船を攻撃する米軍のF/A-18攻撃戦闘機を敵の航空機から守るために、自衛隊のF-15戦闘機が「支援」するという訓練になるのではないか」と推測しましたが、今回の訓練は、空中での訓練に留まり、他の機体も参加した「ストライクパッケージ」という種類の訓練には、まだならない可能性が高いと思われます。

そこで「F/A-18戦闘攻撃機との合同訓練が発展すると(中略)懸念があります」という表現に変えました。

「三沢基地のF-16戦闘機は、地上を攻撃(爆撃)するための戦闘機です。」と書きましたが、「F-16は対空戦闘も行なう」というご指摘をいただきましたので、「三沢基地のF-16戦闘機は、地上を攻撃(爆撃)する能力が高い戦闘機です。」に変更しました。

なお、小松基地の航空祭に参加したF-16は「曲技飛行を行なうために来たアクロ専門のチーム」というご指摘もいただきましたが、「F16戦闘機(青森・三沢基地)二機が初めて参加した」事が間違いでなければ、現状のままでも問題は無いと判断しています。

ご指摘くださった方に感謝します。

Posted by あつこば at 2007年06月17日 12:10
艦船攻撃が専守防衛に反するというのは
初耳です。既に防衛出動が命ぜられていて
日本に向けて上陸部隊を載せた敵艦船や
それらを守る敵国艦隊がやってくるなら、
それを断固撃滅するのは専守防衛の範囲
です。

まさか、領海に入るのを待てとか言うわけ
ではないですよね?そんな国際法の解釈は
ありませんので。必要な措置をとる=自衛
です。

あつこばさんが、何を興奮して書いている
のかわかりませんが、全て日本にとって
有意義な訓練です。全く問題はない。
どんどんやればいい。
Posted by 左翼撲滅 at 2007年06月17日 22:48
安全保障なしに社会保障は成り立ちません。
そろそろ目を覚ましてください。
誰が戦争したいとおもってますか?
そんな奴はいません。
安全保障がおろそかになると、どこぞやの侵略者に島を奪われ、北の将軍様に日本人がさらわれてしまいます。
残念ながら現在の日本だけでは安全保障は成立しません、そのために在日米軍が必要なのです。
Posted by 安全保障 at 2014年08月06日 20:39
ずいぶん昔のエントリーに対してのコメントですね。
いずれにしても、ご意見、ありがとうございます。
「戦争したい」と思っている人は、あまりいないかと思いますが、
仮想敵国よりも強い状態でいたいと思っている軍人は、いるわけですね。
そして、仮想敵国の側としても、相手が強くなったら、それを上回る攻撃能力を持とうとするわけです。
エスカレートしていってキリが無いですね。
軍需産業の企業は喜ぶかもしれません。
しかし、そんなことにお金を使うのであれば、周辺国との交流を深めて対立が起きないように努力し、軍事に使うお金を、低賃金で困っている人たちや、仕事が無くて困っている人たちを支援するなどの方法に使ったほうがいいですよね。
Posted by あつこば at 2014年08月07日 08:31
戦争は誰しも経験したく無いし、させたくもないです。しかし貴方は「専守防衛を逸脱している」って言ってますけど専守防衛がどんな物か知って言ってるのですか? 国民が死んでからやっと反撃するのを専守防衛と言います。 「米軍は出て行け」とか「自衛隊は違憲」なんてそんな考え捨てた方がいいですよ。米軍を嫌うくせに米国が日本に押し付けた日本国憲法の中にある貴方がたが好きな9条によってろくな反撃すら出来ない自衛隊の戦力を補うのが在日米軍の皆さんなのです。 専守防衛の何処が良いのでしょうか?憲法9条の何が素晴らしいのか? 同じ日本人が死んでやっと目が醒めるのでは遅いのです。
憲法改正したからと言って自衛隊がいきなりミサイルぶっ放す事はあり得ませんし、中共の公安みたいな事をするなんて決してありません。自衛隊が強力な抑止力を保持するまでは米軍の手を借りるしかないのです。

もし米軍や自衛隊が嫌なら中華人民解放軍に来てもらってはどうでしょう?
Posted by 旭日会青年部隊員 at 2015年07月24日 20:24
旭日会青年部隊員さん
まったく間違っていますね。
日米戦争協力ガイドラインによると、
日本の防衛は日本が一義的責任を負う事になっており、
米軍は「それを支援し及び補完する」だけです。
Posted by あつこば at 2015年09月07日 07:55
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