そこで今回は岩国市でなにが問題になっているのかを簡単に説明します。
■滑走路の沖合移転が事実上の基地拡張に
岩国基地は米軍と自衛隊とが共同で使っています。岩国市は長年、基地に対しては協力的でした。以下の画面にあるように岩国市役所の前には「自衛官募集」の看板が立っています。

しかし、特に米軍機が激しい訓練をするので爆音の被害はかなりあります。1968年、九州大学に米軍のファントム戦闘機が墜落する事件が起き、岩国でも米軍機が墜落するのではないかという不安が広がりました。
事故の危険性や爆音による被害を少しでも減らすために、岩国基地の滑走路を沖合に移転してほしいという要望が市民の間で広がりました。
長年に渡る運動の結果、1992年、岩国市民の「悲願」だった滑走路の沖合移転が決まりました。工事は1997年に始まり現在でも続いています。
以下がもともとの岩国基地です。

そして滑走路の沖合移転工事が完成すると以下のようになります。沖合を埋め立てて滑走路ができても、その分の面積は帰ってきません。つまり沖合移転は事実上の基地拡張になってしまったのです。極東最大級の規模の航空基地になるそうです。

1997年に始まり現在でも続いている工事では、大手ゼネコンによる談合が行なわれていたことも明らかになりました。
■沖合移転が空母艦載機の受け皿に
「沖縄の負担軽減」という名目で、岩国市は1997年に普天間基地から米軍の空中給油機 KC-130の移駐を受け入れました。
また、2002年には米軍のヘリコプター CH-53のハワイからの移駐も受け入れています。
それに加えて、2005年、日米両政府は米軍再編に伴い、神奈川県厚木基地の空母艦載機も岩国市に押しつけてきたのです。

上記の画像が厚木基地の空母艦載機 F/A-18です。空母艦載機は特に激しい訓練を行ないますので爆音の被害はすさまじく、厚木基地周辺では爆音に対する裁判も起きています。
現在も岩国基地には海兵隊のF/A-18が所属していますが、厚木基地から空母艦載機が移駐してくると、岩国基地の軍用機の数は倍以上に増えてしまいます。
事故の危険性や爆音による被害を減らすためのはずだった滑走路の沖合移転が、空母艦載機の受け皿になってしまったのですね。これには岩国市民も「ダマされた」と思いました。
当時の井原市長は計画の撤回を求めました。そして、2006年3月12日に岩国市では住民投票が行なわれました。結果は、空母艦載機の移駐に反対する票が有権者の過半数を超したのです。

住民投票が行なわれ結果が出た直後の記者会見の様子は以下で見られます。
http://dogalog.excite.co.jp/viewvideo.jspx?Movie=48027200/48027200peevee25421.flv
その後、周辺との合併により大きくなった岩国市で新たな市長を選ぶ選挙も行なわれ、そこでも空母艦載機の受け入れを巡って論戦が繰り広げられました。
自民党からは当時の安倍官房長官や麻生外務大臣が与党候補の応援に駆けつけたのにもかかわらず、井原前市長が圧勝。日本政府は、空中給油機受け入れの見返りとしてそれまで出してきた市役所の建設費を出さないと言い出したのです。
岩国市議会議員の中に徐々に移駐容認派が増えていき、井原市長と議会とが対立することになり井原市長が辞任、今回再び市長選挙が行なわれることになったのです。
これまで岩国では厚木基地周辺のような爆音に対する裁判はありませんでしたが、この春に始まるそうです。
P.S.
空中給油機の受け入れと市庁舎の立て替えに関しては http://atsukoba.seesaa.net/article/75487832.html にも書いています。
【追記】
岩国市長選挙で井原氏が負けた理由について以下に書きました。
http://atsukoba.seesaa.net/article/84406613.html