2007年09月07日

「テロ特措法」ってなあに?

9月10日に始まる臨時国会では「テロ特措法」が焦点になると言われています。
今回は私なりに「テロ特措法」の説明をしたいと思います。

■「テロ特措法」ってなあに?

まず、正式な名称ですが、
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平成十三年九月十一日のアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃等に対応して行われる国際連合憲章の目的達成のための諸外国の活動に対して我が国が実施する措置及び関連する国際連合決議等に基づく人道的措置に関する特別措置法
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です。これが法律の名前です。長〜いですね。

条文は以下です。
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H13/H13HO113.html

この法律で何をやっているのかというと、主に海上自衛隊がインド洋で各国の艦艇(軍事用の船)に補給活動をしているのです。まあ、海の上の無料ガソリンスタンドですね。
2001年12月から2007年7月6日まで、日本が給油吸水活動に出した費用は計216億6043万円だそうです。
http://mbspro6.uic.to/user/baruki.html

youjou_hokyu_400.jpg
(防衛省のパンフレットより http://www.mod.go.jp/j/news/terotoku/pamph_02.pdf

この法律ができたきっかけとしては、以下の説明がわかりやすいかと思います。
http://www.bnn-s.com/news/07/08/070829171912.html
----------------------------------------------------ここから引用----
 2001年に発生した9・11米同時多発テロの翌日、国連安保理は国際テロ組織によるテロを非難した上で、「必要なあらゆる手段を取る用意がある」ことを表明した決議1368を採択した。続いて9月20日、ブッシュ米大統領は、アフガニスタンのタリバン政権に対して、テロの首謀者と目されるオサマ・ビンラディン容疑者らの引き渡しを要求。米英軍は10月7日に報復攻撃を開始した。
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 テロ特措法はこうした経緯を経て、01年11月2日に施行した2年間の時限立法。アフガニスタンやインド洋に展開する各国の軍事行動を自衛隊が後方支援するための根拠となっている。
-----------------------------------------------------引用ここまで---

で、その後3回延長してきましたが、今年の11月1日にまた期限切れになるので政府は4たび延長しようとしていたわけですね。

ところが、7月の参議院選挙で自民党が大負けして参議院で野党が過半数を超えたので事態は変わってきました。

民主党が「テロ特措法に反対する」と言ってますから、困った自民党は「テロ特措法」ではなく、新しい別の法案を出して、自衛隊の洋上補給活動を延期するという方法も模索し始めました。

これについては以下の記事が詳しいです。
産経新聞
http://www.sankei.co.jp/seiji/seisaku/070906/ssk070906000.htm
毎日新聞
http://qrl.jp/?261213

■アフガン戦争は国際的に認められているか?

民主党の小沢代表が海上補給活動の延期に反対している理由は、民主党のサイトに書かれています。

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http://www.dpj.or.jp/news/dpjnews.cgi?indication=dp&num=10479
----------------------------------------------------ここから引用----
小沢代表は、「米国は国際社会の合意を待たずにアフガン戦争を始めた。我々の憲法解釈では、日本に直接的に関係のない地域で、米国あるいは他の国々と作戦をすることはできない」と言明。
--------------------------------------------------------------------
また、米国が多国籍軍活動の根拠としている国連決議についても「NATOを中心とするアフガニスタンでの活動は、PKOと同じ任務と性格が付与され、オーソライズされているが、米国などの行動は国連決議で直接的にオーソライズされていない」と指摘した。
-----------------------------------------------------引用ここまで---

前述のサイトから再び引用します。

http://www.bnn-s.com/news/07/08/070831165659.html
----------------------------------------------------ここから引用----
 テロ特措法は、9・11米同時多発テロの勃発を受け、米英軍のテロ掃討を目的としたアフガニスタン攻撃を後方支援する目的で施行された。政府は同法の根拠として、同時多発テロの翌日、国連安保理が採択した決議1368を挙げている。だが、この決議1368は同時多発テロに対する自衛権を認めただけであり、アフガニスタン攻撃を認めたものではない。
-----------------------------------------------------引用ここまで---

なかなか難しいですね。
いずれにしても判断が分かれ議論になる性格のものなのです。

■「テロ特措法」なのにイラク戦争に使ってる?

私個人はアフガン戦争については、そもそも「報復」で戦争を起こすという発想は間違っていますし、「9.11」はアフガニスタンという国家がアメリカに戦争をしかけたわけではありませんので、間違っていると思っています。

それでも、世間一般のアフガン戦争に対する感覚としては、「9.11」という事件があったからある程度は仕方がないかなあ、という雰囲気もあったのではないかと思います。

ただし、アフガン戦争と比べてもまったく正当性が無いと言われているのが、イラク戦争です。

イラクに陸上自衛隊が派遣(派兵)されたり、航空自衛隊が現在でも輸送活動をしているのは「イラク特措法」です。

ところが、海上自衛隊の補給活動は「テロ特措法」で行っているはずなのに、実はイラク戦争に使われているといわれています。

先週末に放送されたテレビ朝日の番組でも、放送されました。

「朝まで生テレビ」該当部分のテープ起こしが以下で読めます。
http://nofrills.seesaa.net/article/53522653.html

ユーチューブで動画も見られます。
http://www.youtube.com/watch?v=HKviUdWOUaU

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http://www.akaginorihiko.com/ より)

「バンソウコウ」で有名になった赤城元農林水産大臣が、防衛庁副長官だった頃の答弁があります。

第156回国会 安全保障委員会 第6号(平成15年5月16日(金曜日))
http://qrl.jp/?263714

2003年ですからアメリカがイラク戦争で「勝利宣言」をした少し後ですね。

この中で赤城副長官は、テロ攻撃による脅威の除去、国連憲章の目的達成に寄与する、などの法律通りの目的だと言いつつも、

【イラク攻撃支援の目的を有するというものではありません】

と明言しています。

■不充分な情報公開

上記の点はネットでも「あーでもないこーでもない」という議論が起きているようですが、つまるところ政府の情報公開が充分でないために不信感を呼んでいるのではないでしょうか?
(私自身はイラク戦争に使っているのに政府が誤魔化しているだけだと思っていますが。)

政府は「軍事機密」「安全のため」などと言っていますが、テロ特措法で行っているはずなのにイラク戦争を手伝っているなどというのは国民をだましている事になりますから、安全に支障のきたさない情報公開はもっとするべきです。

民主党の菅直人代表代行は以下のように話しています。(8月5日 朝日新聞)
----------------------------------------------------ここから引用----
資料を政府に要求しても答えない。目隠しのままで賛成しろと言われても(賛成できない)」と述べ、インド洋での自衛隊の給油支援活動の実態について政府が資料を公開すべきだとの考えを示した。
-----------------------------------------------------引用ここまで---

民主党からも情報公開が充分でないという指摘があり、防衛省はなんとか洋上補給活動を延期しようとして、情報公開を始めています。

http://www.asahi.com/politics/update/0905/TKY200709050320.html
----------------------------------------------------ここから引用----
 防衛省は5日、太平洋上で海上自衛隊の補給訓練を行った。11月1日に期限が切れるテロ対策特別措置法の延長問題が最大の焦点となる臨時国会を前に、インド洋での補給活動に理解を求めるため、マスコミにも公開した。
-----------------------------------------------------引用ここまで---

20070907.jpg
(視察する高村防衛大臣 http://www.mod.go.jp/photo/index.html より)

しかし、情報公開はまだまだ充分ではありません。

■民間人も派遣されている!

実は派遣されているのは自衛隊員だけではありません。

自衛隊の艦艇は、三菱重工、IHI(旧 石川島播磨)などの日本の企業が造っています。派遣した先で故障等があった場合、自衛官が修理できればいいのですが直せない場合はメーカーの技術者が派遣されているのです。

IHIマリンユナイテッド横浜工場の社員の証言によると、職場の同僚がある日、突然いなくなり、しばらくして帰ってきたので「どこに行っていたんだ?」と聞いたら「艦艇の修理でインド洋に行っていた」と答えたそうです。

そしてその社員には、なんと危険手当も出なかったそうです。
会社としても戦地に社員を派遣するという想定をしていないうえ、防衛庁(当時)からも秘密にしておくように言われているので危険手当を付けられなかったのです。

この実態はほとんど知られていませんが、民間人が会社の命令で戦地に派遣されているという事実は、もっと多くの人に知られるべきです。

【参考】
『民間人も「戦地」へ―テロ対策特別措置法の現実』吉田敏浩 (岩波ブックレット)
http://www.iwanami.co.jp/.BOOKS/00/4/0092940.html
『ルポ 戦争協力拒否』吉田敏浩(岩波新書)
http://www.iwanami.co.jp/hensyu/sin/sin_kkn/kkn0501/sin_k211.html
『週刊金曜日』2004.7.16 「"戦時下"の軍需産業 石川島播磨で何が起きているのか」
『毎日新聞』2007.2.25 発言席 「戦地出張の民間人 守るには」
毎日放送 映像06『誰も知らない戦地出張』
ビデオ/DVD『軍需工場は、今』(日本電波ニュース社)
http://www.ndn-news.co.jp/shop/05.4.5-1.htm

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2002年7月から2005年12月までに19回、57人の民間人が派遣されている事があきらかになりました。(テロ特措法、イラク特措法関連を合わせて)

もし事故があったらどうすればいいのか、秘密のうちに危険手当もないまま危険な場所に派遣されていいのか、造船会社などに働く人達は抗議の声をあげました。
しかし、会社は危険の程度を事前に検討する基準もあきらかにしていません。

防衛庁も、国会議員から聞かれてしぶしぶ人数等の大まかな資料を出す程度で、どの企業から派遣されているのかも明らかにしていません。あとは「安全な地域に派遣している」と言うだけです。

「テロ特措法」では活動を支援する民間人の扱いや処遇は一切触れられていません。民間人が派遣されるという事は想定されてもいなかったのです。

すべては「軍事機密」「安全のため」という名目で、闇に包まれ秘密のまま進められてきた「テロ特措法」。
こうした状態を許してしまったら、今後、国民は何も知らされないまま、アメリカが世界で起こす「先制攻撃」の戦争に巻き込まれていく事になりかねません。

〓追記〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓

前述のテレビ朝日の番組で資料を出して説明していた江田けんじ議員は、その後、あの85%という数字について、「この数字は、イラク、アフガン渾然一体となった総計の数字ではないか」と書いています。
http://www.eda-k.net/chokugen/318.html

また、証拠となった米軍のサイトでの記述は削除されてしまったそうです。

----------------------------------------------------ここから引用----
 こうした中、米海軍のホームページの記述は事態を一層難しくするとして日本政府が米側に対応を求めた結果、問題部分の削除に加えて改めて説明をすることになった。

 米国防総省は7日、朝日新聞の問い合わせに対し「問題のページは誤解を避けるため修正された」「日本の給油活動はOEFを支援する艦船に対してのみ行われている」と回答した。
-----------------------------------------------------引用ここまで---
http://clubaa.asahi.com/news/international/update/0908/TKY200709080096.html

同様の件は、2003年にもありました。
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik2/2003-05-17/02_02.html
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik2/2003-05-23/01_04.html
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik2/2003-05-24/01_03.html

最近の記事で、イラク戦争ではありませんが、ソマリア戦にも使っているんじゃないか、という疑惑がありました。
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik07/2007-09-06/2007090601_03_0.html


〓再追記〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓

9月20日にピースデポが調査報告を行ないました。
以下で解説しました。

給油した燃料はイラクへの作戦に使われていた!?
http://atsukoba.seesaa.net/article/56661063.html
posted by あつこば at 12:53| Comment(5) | TrackBack(1) | 自衛隊 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年09月17日

安倍首相 辞意表明で給油活動の再開は遠のいた

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今年1月9日、「防衛省移行記念式典」の際の安倍首相です。省昇格を成し遂げた達成感と緊張からか、独特の表情をしていました。

先週12日、安倍首相は突然、辞意を表明しました。
以下は緊急会見での質疑応答の一部です。
----------------------------------------------------ここから引用----
テロとの闘いを継続していくということは極めて重要なことであり、そして、それはまた私の約束でもありますし、国際公約でもございます。それを果たしていく上においては、むしろ、ここは私が辞することによって局面を転換した方が、その方がむしろよいだろうと判断をいたしました。
-----------------------------------------------------引用ここまで---
http://www.kantei.go.jp/jp/abespeech/2007/09/12press.html

10日の所信表明演説では続投を宣言し、それに続く各党の代表質問が行なわれる直前の辞意表明には、与野党を問わず「無責任」という声が出ました。

「自分が辞めたほうがいいだろう」という安倍首相の言葉とは裏腹に、海上自衛隊の給油活動は継続がよりいっそう困難になりました。

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もともと、政府は民主党などの反対で「テロ特措法」の延長が困難なことから、「テロ特措法」とは別の新しい法案を準備していました。
----------------------------------------------------ここから引用----
テロ特措法の期限切れをにらみ、政府・与党は、特措法に代わる新法案を21日に閣議決定し、今月中に衆院で審議入りする日程を描いていた。
-----------------------------------------------------引用ここまで---
http://www.jiji.com/jc/c?g=pol&k=2007091300878

ところが安倍首相が辞意を表明したために、その日程は不可能になりました。

----------------------------------------------------ここから引用----
突然の政治空白でそれもストップする。与謝野馨官房長官は12日の記者会見で「その話は一時、新総裁ができるまでは誰も熱心にやってくださらないのではないか」と述べた。
-----------------------------------------------------引用ここまで---
http://www.mainichi-msn.co.jp/seiji/jinin/news/20070913k0000m010114000c.html

自民党の総裁選が行なわれることになり、総裁選の日程は、当初は19日というスケジュールで考えられていました。
もともと「助走」をしていた麻生氏が優勢だと言われていたのですが、他の派閥が日程を遅らせろという意見を出し、最終的には23日に総裁選が行なわれることになりました。

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----------------------------------------------------ここから引用----
 防衛省は十三日、インド洋上での海上自衛隊の給油活動の根拠法となるテロ対策特別措置法が十一月一日で期限切れを迎え、同法に代わる新法成立のめどが立たないことから、現地の海自艦船の一時撤収に向けた具体的検討に着手した。
--------------------------------------------------------------------
 現在活動中の艦船を「遠洋航海訓練など、異なる任務に切り替え、待機させることも検討材料」(関係者)としている。
--------------------------------------------------------------------
 ただ省内からは新法提出時期すら固まっていないことから、「いったん撤収し、再派遣に備えるのが現実的」(同)との意見が強まっており、「特措法失効ぎりぎりまで活動し、粛々と撤収する」(幹部)ことになりそうだ。
-----------------------------------------------------引用ここまで---
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/politics/49356.html

ここ2〜3日のテレビは自民党の総裁選一色になりました。すでに福田氏が圧倒的に有利と報道されています。

麻生氏、福田氏、どちらが首相になっても、新法案が通るかどうかは未知数です。

posted by あつこば at 15:52| Comment(3) | TrackBack(0) | 自衛隊 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年09月20日

日本政府がお願いして「謝意」を入れてもらった国連決議前文の効果は?

「テロ特措法」の延長が暗礁に乗り上げ、対米従属姿勢の日本政府は、なんとかして給油活動を継続させようと必死です。

国連安保理は前文に日本が給油活動で参加している海上阻止活動などの各国の貢献に対して「謝意」を入れる形で決議を採択しました。

外務省は先月以来、国連決議に自衛隊の給油活動についての「お墨付き」をもらえるように、米、英、仏を中心に働き掛けを続けてきたそうです。
http://www.jiji.com/jc/c?g=pol&k=2007091900387

■「安保理議長声明でもいいし、国連事務総長談話でもいい」

自民党の山崎拓前副総裁は18日にこんなことを言っていました。
----------------------------------------------------ここから引用----
山崎氏は、給油活動について「政府は『国連決議を踏まえて』と説明しているが、『国連決議に基づく』という説明はしていない。そこは弱点だ」と指摘。
-------------------------------------------------------中略---------
国連決議を改めて取るべきだ。決議が無理であれば安保理議長声明でもいいし、国連事務総長談話でも(いい)」
----------------------------------------------------引用ここまで---
http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2007091800740

「弱点だ」と言っているところは正直ですね。しかし、日本が給油活動を続けるためにわざわざ国連を動かして決議に入れてもらうという発想は本末転倒だと思います。

しかも、ダメならば○○でもいい、△△でもいい、などとあらゆる手段を使って給油活動を続けたいというのは、下心丸出しで恥ずかしいです。

■感謝を強要するのは茶番

こうした動きについて、民主党の鳩山幹事長は、
----------------------------------------------------ここから引用----
「感謝を(各国に)強要するのは茶番だ。そのことによって民主党の考え方が変わるわけがない。国民の失笑を買う話だ」
-----------------------------------------------------引用ここまで---
と語ったそうです。
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20070919ia02.htm

■日本というある特定の国の国内事情のための決議案

決議は採択されましたが、賛成14ヶ国でロシアだけは棄権しました。

----------------------------------------------------ここから引用----
ロシアのチュルキン大使は
-------------------------------------------------------中略---------
「不朽の自由」作戦に基づく活動は「国連の枠外で遂行されている」と主張するとともに、決議が日本政府の意向を踏まえて作成されたことを批判した。
-----------------------------------------------------引用ここまで---
http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2007092000087

----------------------------------------------------ここから引用----
「今回の決議案は日本というある特定の国の国内事情のためである。国際社会全体の課題を協議する安保理の性格にそぐわない」などと強い不満を表明しました。
-----------------------------------------------------引用ここまで---
http://www3.nhk.or.jp/news/2007/09/20/d20070920000032.html

日本のお家事情による要請で決議案が変えられたということで、不純な動機に基づくものであるという批判したのですね。

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■これで民主党への切り崩しになるのか?

こうした結果についての見方としては、

----------------------------------------------------ここから引用----
全会一致が得られなかった事実は、国連の場でも海上阻止行動をめぐる見解が分かれていることを逆に浮き彫りにした。
-----------------------------------------------------引用ここまで---
(上記と同じ記事)http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2007092000087

----------------------------------------------------ここから引用----
決定事項を記す本文ではなく前文での言及であることや、ロシアの棄権で全会一致の採択にならなかったことなどから、この決議が給油継続に反対する民主党を切り崩す材料になるかは不透明です。
-----------------------------------------------------引用ここまで---
http://news.tbs.co.jp/part_news/part_news3661833.html

という具合です。「前文」は決定事項を記すものではなかったんですね。
結果的にそれでも全会一致できなかったので、日本政府は苦労して根回ししたわりには大きな効果は得られなかったようです。

この状況では、民主党は当然、反対姿勢を崩しません。

----------------------------------------------------ここから引用----
海自の給油活動そのものに理解を示していた前原誠司前代表も「こそくな感じがする」と反発を強めている。
-------------------------------------------------------中略---------
小沢氏は(中略)
「本質的な話ではない。憲法や日米安全保障条約違反を『謝意』でごまかすようなことはあり得ない」
-----------------------------------------------------引用ここまで---
http://www.nikkei.co.jp/news/seiji/20070920AT3S1901Z19092007.html

----------------------------------------------------ここから引用----
「謝意だけで憲法とか(日米)安保条約とかを乗り越えるという話ではないだろう。国民をだましている」。
-----------------------------------------------------引用ここまで---
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/politics/50436.html

民主党が主張しているように、日本政府が姑息な手段で騙そうとしていると思って国民が反発するか、それとも「国連で認められたんだって」と単純に思う人が多くて給油活動を容認する意見が増えるのか、分かれ目と言えます。

できるだけ正しい実態を伝えていくことが大切です。

今回は、日本政府が決議に「謝辞」を入れてほしいとお願いしました。
「感謝してくれ」と頼んでしまったわけですね。

他国からしてみれば
「日本はアメリカに脅されたからなんとか給油活動を続けたいんだろう。首相も辞めて国内の政治問題すら解決できず、国連決議をお願いしてきた程度の国だ。」
と思われているでしょう。

posted by あつこば at 16:08| Comment(9) | TrackBack(1) | 自衛隊 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年09月22日

給油した燃料はイラクへの作戦に使われていた!?

【9月24日 修正】

9月7日に書いた文章で、「テロ特措法」で派遣(派兵)された自衛艦が補給した燃料がイラク戦争に使われたのではないか、という疑惑について書きました。
http://atsukoba.seesaa.net/article/54298276.html

これに対して米軍は明確に否定しました。
----------------------------------------------------ここから引用----
11日、バーレーン・マナマの米海軍第5艦隊司令部の将校クラブで行われた多国籍海軍幹部に対する日本人記者団のインタビュー前。多国籍海軍は冒頭で、1枚紙の報道用資料を配った。
--------------------------------------------------------------------
「日本の補給艦はOEFを支援する艦船だけに給油している。海上自衛隊は『イラクの自由作戦(OIF)』を支援したことはない」
-----------------------------------------------------引用ここまで---
http://www.sankei.co.jp/seiji/seikyoku/070919/skk070919001.htm

しかし、NPO法人「ピースデポ」が明らかにした実態は、さらに反響を呼んでいます。
http://www.peacedepot.org/media/pcr/mediarelease3/oil.htm

これは、米海軍の航海日誌や司令官年次報告など公文書の調査を元にしたものです。
20日夜の「報道STATION」でも放送されました。

■日本が給油した燃料はイラクへの作戦に使われた!?

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この画像は米軍艦艇に洋上給油を行なう海上自衛隊の補給艦「ときわ」(右)です。

ピースデポが航海日誌を調査して分析したところによると、2003年2月25日、補給艦「ときわ」が米軍の補給艦「ペコス」に給油し、その「ペコス」が他艦と接触することなく米空母「キティホーク」とミサイル巡洋艦「カウペンス」に燃料を給油したそうです。

つまり、
「ときわ」→「ペコス」→「キティホーク」という形で、日本の海上自衛隊が間接的に米空母「キティホーク」に給油したわけです。

「キティホーク」はその後、イラク南部監視(サザン・ウオッチ)作戦に参加、その後アメリカはイラク戦争に突入します。

2003年3月20日、イラクに対する最初の攻撃としてトマホークミサイルを発射したのは、ミサイル巡洋艦「カウペンス」です。
空母「キティホーク」は、3000回にわたって艦載機を出撃させ、その艦載機がイラクで空爆を繰り返しました。(5375回という説もあります。)

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■国会答弁の拠り所は崩壊

実は海上自衛隊が「キティホーク」に間接給油していたという問題は、2003年当時も問題になりました。

当時、官房長官だった福田康夫氏はに以下のように発言しています。
----------------------------------------------------ここから引用----
「米海軍から『海自から提供を受けた燃料をテロ対策特別措置法の目的以外に使用したことはなく、今後も使用しない。海自からの燃料をイラク攻撃に参加した米空母キティホークなど第5空母戦闘群の艦艇が使用したことは当然ない』との回答があった」
-----------------------------------------------------引用ここまで---
(2003年5月7日 読売新聞)
http://groups.yahoo.co.jp/group/nomorewar/messages/8257?threaded=1&expand=1

その後、政府は、海上自衛隊が米補給艦に補給したのと同じ日に米補給艦から空母「キティホーク」への給油が行なわれたことを認め、2003年5月16日の国会答弁では、当時の石破 茂 元防衛庁長官が以下のように弁明しています。
----------------------------------------------------ここから引用----
海上自衛隊の補給艦が事前に当該アメリカ補給艦に二十万ガロン、この二十万ガロンというのは空母が一日使う量でございますが、これの燃料提供を実施しておるわけでございます。
-----------------------------------------------------引用ここまで---
http://www.shugiin.go.jp/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/
001515620030516006.htm
(↑コピーして改行を消してください。)

つまり、海上自衛隊は1日分しか給油しておらず、「キティホーク」が使ったとしてもその日はアフガニスタンに対する作戦に従事していて、それを使い切ってからイラクに向かったという理屈です。

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しかし、今回、ピースデポは「ペコス」の航海日誌を調査し、「ときわ」から受けた燃料は、約20万ガロンではなく約80万ガロンだったという事実を確認したのです。

これについては防衛省も当時の発表は間違いだったと認めました。
----------------------------------------------------ここから引用----
防衛省は「誤った数字に基づき答弁が行われたのは遺憾」と陳謝。
-------------------------------------------------------中略---------
防衛省側の確認で、海自補給艦は米補給艦「ペコス」にキティホークに渡る燃料を給油した後、別の艦艇に洋上補給を実施しており、その際の給油量をペコスに対する量と取り違えていたと判明した。
--------------------------------------------------------------------
 キティホークは当時、ペルシャ湾でのイラク南方監視作戦に参加。同年5月の国会などで防衛庁(現防衛省)は「給油量は約20万ガロンで空母1隻のほぼ1日の消費量。イラクでの作戦に使うことはあり得ず、テロ特措法の給油対象として問題ない」と説明していた。
-----------------------------------------------------引用ここまで---
http://www.nikkansports.com/general/f-gn-tp0-20070921-259364.html

加えて、日本政府と防衛省による「約20万ガロンは空母のほぼ1日分の消費量」という説明も怪しくなっています。

ピースデポによると1日の消費量は約11万3000ガロンだそうです。海上自衛隊が「間接給油」したとみられる約80万ガロンは1週間分とのことです。

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■アフガンへの作戦には参加していなかった!?

前述の石破 茂 元防衛庁長官の答弁では、「キティホーク」は2月25日には「不朽の自由作戦」(アフガニスタンに対する作戦)に従事していたとされています。

つまり「テロ特措法」で派遣(派兵)されているわけですから、そうでなければ国民に対しての説明が成り立たないのです。

しかし、この件についても疑いが持たれています。

ピースデポの調査によると、横須賀を出た「キティホーク」と「カウペンス」は、オマーン湾深くの給油地点に向かい、そこからすぐにペルシャ湾に入っています。
http://www.peacedepot.org/media/pcr/mediarelease3/oil.htm

以下の地図がわかりやすいです。
http://www.peacedepot.org/media/pcr/mediarelease3/annex7.pdf
http://www.peacedepot.org/media/pcr/mediarelease3/annex8.pdf

ピースデポは、キティホークの司令官年次報告も入手、分析しました。そこからは「不朽の自由作戦」や「アフガニスタン」という言葉は一言も出てこなかったそうです。
そしてキティホークの任務は、イラク南部監視(サザン・ウオッチ)作戦とイラクへの開戦後の「イラクの自由作戦」だったのです。
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2007年10月04日

補給艦を使った間接給油とは?

現在、自衛隊のインド洋での給油活動が問題になっています。

2001年に成立した「テロ対策特別措置法」は11月1日で期限切れになります。
この法律については以下で説明しました。

「テロ特措法」ってなあに?
http://atsukoba.seesaa.net/article/54298276.html

youjou_hokyu_400.jpg
(防衛省のパンフレットより http://www.mod.go.jp/j/news/terotoku/pamph_02.pdf

■「給油新法」とは?

政府・与党は当初、この「テロ特措法」を延長しようとしてきました。しかし、民主党の反対や安倍首相の突然の辞任などの影響もあり、「テロ特措法」の延長は事実上不可能になりました。
そこで「テロ特措法」に変わる「給油新法」の法案を国会に提出すると言われています。
しかし、この「給油新法」も成立するかどうかは危うくなっています。

■イラク作戦への転用疑惑とは?

もともと9.11の事件を受けて急ごしらえで作られたのが「テロ特措法」です。ですからアブガニスタンに対するテロ対策を支援するという建前になっているのです。

にもかかわらず、自衛隊が補給した燃料が、実はイラクへの作戦に使われていたらしいことがわかりました。これが「転用疑惑」です。

以下、図を使ってできるだけ簡単にご説明します。
詳しくお読みになりたい方は、以下をご覧ください。

給油した燃料はイラクへの作戦に使われていた!?
http://atsukoba.seesaa.net/article/56661063.html

ピースデポ「海自艦が給油した米艦はイラク作戦に使用した」
http://www.peacedepot.org/media/pcr/mediarelease3/oil.htm

■補給艦とは?

kyom03_400.jpg

この画像の中央に写っているのが自衛隊の補給艦「ときわ」です。アメリカの艦艇(軍艦)に燃料を補給しているところです。
http://www.mod.go.jp/j/terro/photo.htm より)

pecos_400_2.jpg

そしてこの画像の左側が、アメリカ海軍の補給艦「ペコス」です。アメリカの空母「ロナルド・レーガン」に燃料を補給しています。
http://www.navy.mil/view_single.asp?id=43251 より)

このように「補給艦」とは、他の艦艇(軍艦)に燃料や水などを補給する船のことを言います。

■「間接給油」とは?

今回、問題になっている「間接給油」について図で示します。
2003年2月25日に実際に行なわれた例です。

kansetsu_1.jpg

自衛隊の補給艦「ときわ」が、アメリカ海軍の補給艦「ペコス」に給油しました。
そして補給艦「ペコス」がその後、アメリカ海軍の空母「キティホーク」に給油したのです。

空母(航空母艦)は甲板が滑走路になっていて、そこから戦闘機が飛んでいってイラクなどで空爆をしています。
040227-N-1854W-004.jpg
http://www.kittyhawk.navy.mil/ より)

直接、空母に補給するとイラク戦争のような非人道的な攻撃に荷担しているのが明らかになるので、間に補給艦を入れることでわかりづらくしたとされています。

■政府が説明していた補給量は違っていた!

この問題が明らかになった当時、政府は、自衛隊の「ときわ」から米軍の補給艦「ペコス」に給油したのは約20万ガロンだった、「キティホーク」に間接給油したとしても20万ガロンは一日で使う量だからその日で使い切り、その後、イラクに向かったのだから問題はない、と説明していました。

ところが、ビースデポの調査で「ときわ」が給油したのは約20万ガロンではなく約80万ガロンだったことがわかりました。

kansetsu_2.jpg

さらに、キティホークは当時、対アフガンの作戦には参加しておらず、給油されてからすぐにペルシャ湾に入っていたことがわかりました。

■全体の55%、105回分が「間接給油」!

情報公開が充分でないという指摘を受けて、防衛省は不完全ながらも給油活動についての情報を公開しました。
それによると、上記のような補給艦への「間接給油」は105回にもわたり、給油流全体の55%にもなることがわかりました。
http://www.asahi.com/politics/update/0928/TKY200709280364.html

町村官房長官は、今後は補給艦への給油の中止も検討すると会見で話しました。
それは、補給艦を使った間接給油に対する「国会での追及をかわす狙いがある」とされています。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2007100302053589.html

野党は、国会でこの問題を徹底的に追及するようです。
給油活動を含めた自衛隊海外派遣(派兵)の是非を大いに議論してもらいたいですね。

【10月5日 追記】
昨日アップしたこの文章中、ペコスの画像と空母の名前、引用元のURLが違っていましたので訂正させていただきます。
失礼しました。ご指摘ありがとうございました。

【10月25日 追記】
その後、10月11日に米軍から「キティホークは、ペコスから67万5000ガロンの燃料補給を受けた」という発表があり、日本政府も追従しました。
「ときわ」からの給油量を間違えて発表していた件については、当時の海上幕僚監部 防衛課長が間違いに気が付いたのにもかかわらず報告していなかったとされています。
この人物は自民党 片山さつき衆院議員の公設秘書になっていたのですが、この件が明るみに出て辞職しました。
同じ10月11日には、イラク戦争に参加したイージス駆逐艦「ポール・ハミルトン」に直接給油していたことも明らかになりました。
http://atsukoba.seesaa.net/article/62329553.html
posted by あつこば at 13:03| Comment(12) | TrackBack(0) | 自衛隊 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年10月25日

新テロ特措法にはこれだけの問題点

「テロ特措法」の延長が不可能になって、国会では新しい法案の審議が始まりました。

政府・自民党では「補給支援特措法」と呼ぶことにしたそうですが、一般的には「新テロ特措法」あるいは「給油新法」と呼ばれています。

この法案は、国会承認を無くしてしまうなど「テロ特措法」と比べても問題があるといわれています。
そもそもインド洋での給油活動の何が問題なのかを整理してみましょう。

■自衛隊はアフガニスタンへの攻撃を手伝っていた

政府や防衛省は、自衛隊の給油活動は「海上阻止行動」に使ってきたと説明しています。
heiwa_l_ban.gif

しかし、実際にはアフガニスタンに対する空爆などの攻撃に使われていました。

10月10日の衆議院予算委員会では、民主党 岡田克也議員の
----------------------------------------------------ここから引用----
アフガン本土にミサイル攻撃をしたりあるいは爆撃機や戦闘機を飛ばして攻撃をするということは、そういう艦船に対して自衛隊が間接、直接に給油するということはないんですねと聞いているんです。
-----------------------------------------------------引用ここまで---
という質問に対して、高村外務大臣は「ありました。そういうことはやっていたんです。」と答えています。
そして、高村外務大臣は以下のようにも答えています。
----------------------------------------------------ここから引用----
日本の憲法は、外国へ行って日本自身が武力行使しちゃいけないということを書いてあるので、日本は今、武力行使なんかしていませんよ、一切。一切していないんですよ。
-----------------------------------------------------引用ここまで---
http://qrl.jp/?262608

政府は「非戦闘地域」での補給活動は武力行使にあたらないとしていますが、給油などの兵站活動はあきらかに戦争の一環です。

■米国防総省の発表が行なわれたが

日本が給油した燃料がイラク戦争に使われたのではないかという疑惑を受けて、アメリカの国防総省は「「不朽の自由作戦」に日本が供給する燃料の使用について」と題する発表をしました。
http://tokyo.usembassy.gov/j/p/tpj-20071019-73.html

この報告には
----------------------------------------------------ここから引用----
日本が補給した燃料を、米国艦船に給油された時点から消費されるまで、任務ごとに追跡することは、以下の理由により複雑な作業となる。
-----------------------------------------------------引用ここまで---
と書かれています。

その理由としては、以下があげられています。
○日本が補給した燃料は他から供給された燃料と混ざるから特定するのが難しい。
○間接給油は海軍の作戦では一般的であり、用途を説明するのは難しい。
○艦船は複数の任務に就くこともある。

簡単に言うと「油なんてタンクの中で混ざるからわからないし、米軍はアフガニスタンを攻撃したりイラクを攻撃したりしている」という事ですね。これはなかなか正直に書かれていると思います。

実態としてはおそらく「燃料は混ざるからわからない」のでしょうし、米軍にとってはアフガニスタンへの作戦に使おうがイラクへの作戦に使おうが好き勝手にできるのでしょう。
それに対し、日本政府が「イラクへの作戦には使っていない」などと誤魔化していた事に問題があります。

■「イラク作戦には使っていない」と言い張る政府

イラクへの作戦に使っていたのではないかという疑惑のうち、氷山の一角として出てきたのが2003年2月25日の補給艦「ときわ」からアメリカの空母「キティホーク」への間接給油です。

間接給油を受けた後、「キティホーク」がペルシャ湾に行っているという指摘に対して、石破防衛大臣は以下のように答えています。
----------------------------------------------------ここから引用----
キティーホークがペルシャ湾に入ったからすぐOEF以外に使われたという推論は、極めて乱暴なものであります。(注:OEF=アフガニスタンへの作戦)
-----------------------------------------------------引用ここまで---

ところが2003年司令官年次報告によると空母「キティホーク」は、イラクへの作戦に従事したと書いてあるだけで、OEF(アフガニスタンへの作戦)に参加しているとは書かれていないそうです。
http://www.peacedepot.org/media/pcr/mediarelease3/oil.htm
http://k1fighter2.hp.infoseek.co.jp/TeroTokuso/TeroTokusoOilRun.htm#top

kitty_400.jpg

キティホーク戦闘群の元参謀長 ホセ・コーパス氏は10月18日に放送されたテレビ朝日「報道STATION」のインタビューに対し以下のように断言しています。
----------------------------------------------------ここから引用----
我々の任務はイラク作戦のみ。インド洋からアフガニスタンに向けた任務は1つもない。100%イラクだ。
--------------------------------------------------------------------
アフガン作戦に従事するならばアフガン周辺にいなければ。イラク作戦に従事するならばイラク周辺にいなければ。両方を同時に従事するのは不可能だ
-----------------------------------------------------引用ここまで---
http://www.tv-asahi.co.jp/dap/program/hst/backnumber.php?y=2007&m=10

■トマホーク・ミサイルを発射したイージス駆逐艦にも直接給油

「間接給油」だけではなく、イラクへ作戦に参加したイージス駆逐艦に直接給油したこともわかりました。

paul_400.jpg

このイージス駆逐艦「ポール・ハミルトン」はイラク戦争に参加した戦闘艦の中で最も多い約60発もの誘導ミサイル・トマホークを発射したそうです。
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik07/2007-10-13/2007101301_02_0.html
(注:10月12日の朝日新聞では「約50発」となっていました。)

「ポール・ハミルトン」はイラク開戦前からイラクに対する作戦に参加していたそうです。

「間接給油」を受けたイージス巡洋艦「カウペンス」は、イラク戦争で最初のトマホークを発射したとされています。

chokusetsu.jpg

■燃料はどこからいくらで買っているのか?

あまり取り上げられていないこととしては、自衛隊が無料で給油している燃料は、一体、どこから買っているのか、不当に高額で買っているのではないかという問題もあがっています。

これに関しては、朝日ニュースターの番組「愛川欽也パックイン・ジャーナル」、「週刊朝日」10月19日号などで取り上げられています。
http://blog.livedoor.jp/asyura2007/archives/50710266.html
[動画]http://streaming.yahoo.co.jp/p/t/00064/v00134/
[動画]http://www.youtube.com/watch?v=nXI1Q9aVCcU


国会では民主党 原口一博議員が10月19日の衆議院 安全保障委員会で追求しています。
http://qrl.jp/?260123
http://k1fighter2.hp.infoseek.co.jp/TeroTokuso/TeroTokusoHaraguchi.htm#top

これらによると、自衛隊が供給している燃料は「F76」と呼ばれる米軍が特注して作らせている燃料(NATOが共用している)だそうです。
この燃料は石油会社から一度、米国防総省にある「ディフェンス・エナジー・サポート・センター(DESC)」という組織に納められ、自衛隊はそれを、ある日本の商社を経由して購入しているらしいのです。その燃料をアメリカの艦艇などに無償で提供してきたのですね。

desc_logo_low280.jpg

そして、6年間で2回だけ別の商社から購入したものの、後の約8割はひとつの商社だけで入札なしの随意契約をしていたようです。

■守屋前事務次官の問題とともに

国会では、守屋前事務次官が軍需専門商社「山田洋行」の元専務からゴルフや麻雀、焼き肉などの接待を受けていたという問題が出ています。

moriya.jpg

この件と同様に、燃料を購入していた商社についての問題も大きくなるかもしれません。

以下のブログなども参考になりました。
http://amesei.exblog.jp/d2007-10-20
http://critic3.exblog.jp/7600740/

■戦争に参加して儲けていて良いのか?

自衛隊による燃料補給活動の裏側には、さまざまな問題が隠されているようです。それでも給油活動を継続したほうが良いという意見の中には、そのほうが日本の「国益」になるという見方もあるようです。

しかし、給油活動は実際にアフガニスタンやイラクへの攻撃をサポートしてきたのです。自衛隊が戦争に参加して、その裏側で儲けていて良いのかという根本的な問題を考える必要があります。

posted by あつこば at 10:14| Comment(5) | TrackBack(0) | 自衛隊 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年01月11日

「新テロ特措法」が成立

自衛隊のインド洋での給油活動を認める「新テロ特措法」が成立しました。
昨年11月1日に期限切れになった「テロ特措法」と比較しても、国会承認を得なくてもいいなど問題点のある法律です。

これにより、「対テロ戦争」に参加している海外の艦艇に、日本の税金で買った燃料を無償で提供する活動が、再開することになります。

kyom03_400.jpg

この問題については、これまでにも書いてきました。
http://atsukoba.seesaa.net/category/4559315-1.html

■57年ぶりの再議決

国会では、午前中に参議院で否決されたにもかかわらず、その日のうちに衆議院で再度可決し成立させてしまうという方法が行なわれました。

衆議院で3分2以上の票が集まれば再議決することができるのですが、こうしたやりかたで法案が成立するのは57年ぶりだそうです。

この方法は憲法59条に規定されているそうですが、その条文には「両議院の協議会を開くことを求めることを妨げない」と書かれてあるものの、両議院の協議会は開かれませんでした。
http://www.asahi.com/politics/update/0111/TKY200801110181.html

こうしたやり方について民主党の鳩山由紀夫幹事長は以下のように批判しています。
↓ここから引用
--------------
 鳩山氏は再議決に反対の理由として「衆院は解散総選挙が多く、(参院より)民意を反映しているということで優位を許されているが、今回はそれが逆だ。参院選の方が直近にあった。本来は(参院の否決を尊重して)廃案にすべき法案だ」と指摘した。
--------------
↑引用ここまで
http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/080111/stt0801111113001-n1.htm

また、午後に開かれた衆議院本会議では、
↓ここから引用
--------------
民主党は「新テロ法は再議決に付す緊急性、重要性はない。今再議決を企図するのではなく(解散・総選挙で)国民に信を問うべきだ」と反対した。
--------------
↑引用ここまで
http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2008011100537&j1

■民主党にも問題

民主党のこれまでのやり方に対する指摘もあります。

↓ここから引用
--------------
政府・与党案に代わる法案を出したにもかかわらず、十分な審議を尽くさないまま、いったんは時間切れによる双方の法案の継続審議を模索した。五十七年ぶりの衆院再可決を想定。「審議中なのに強行採決した」として、与党側の横暴ぶりを際立たせる作戦だったようだ。
--------------
「継続審議」とした党の幹部協議が覆ったのは、共産、社民両党の強い反対に遭ったためだ。理解を得られると早合点した独断専行の結果である。前防衛次官汚職事件に絡んで、財務相の証人喚問を強硬に求めて腰砕けになった見通しの甘さと二重写しになる失態である。
--------------
↑引用ここまで
http://www.chugoku-np.co.jp/Syasetu/Sh200801110092.html

国会運営についての判断が間違っていたようです。

昨年、守屋前事務次官の疑惑に伴い、民主党は、国会戦略上、現役の大臣である額賀大臣への疑惑追及を優先したのだと思いますが、証拠固めが不充分でした。

焦って額賀大臣への疑惑追及をした結果、自民党側はジェームズ・アワー氏にまで疑惑を否定する証言をさせました。

auer.jpg
画像は2006年の「日米安保戦略会議」で発言するジェームズ・アワー氏。
(DVD『基地はいらない、どこにも』に収録)

■参考人招致の限界

ネットなどでは、本命は額賀大臣ではなく久間元防衛大臣ではないか、そして久間元大臣と強いつながりがあるのが、8日に参考人招致された秋山直紀という人物だと言われていました。
(以下の画像は「日米安保戦略会議」と同時開催していた展示会場での秋山直紀氏。)
akiyama.jpg

ところが、8日の参考人質疑は、かなりの質問が空振りに終わりました。

「参考人招致」は「証人喚問」と違って嘘をついてもいいのです!

秋山氏自身がさまざまな疑惑を抱えているので東京地検に逮捕される可能性があります。偽証しても罪に問われない「参考人招致」で、わざわざ自分が不利になって逮捕されそうになるようなことを喋るわけはないのです。

宴席にいてもそれだけでは逮捕されませんから、宴席いたことは認めました。ただし、自分が逮捕されかねない疑惑に関しては、まだ逮捕されずにすむかもしれない今は完全に否定するしかないのですね。

国会では、秋山直紀氏、そして久間大臣に対する証人喚問が求められています。
もしかすると正月返上で捜査していたといわれる東京地検が秋山直紀氏を逮捕し、久間大臣への疑惑解明が進む可能性もあります。
posted by あつこば at 18:38| Comment(2) | TrackBack(1) | 自衛隊 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年01月18日

問責決議案は党利党略で見送られた

「新テロ特措法(補給支援法)」に関して、前回書いていなかった点について補足します。

■問責決議案は党利党略で見送られた

今回、参議院で否決された法案を衆議院で3分の2の賛成票での再可決が行なわれたのですが、こうした与党のやり方に対する野党からの対策として首相の問責決議案を出すという方法が一時期、出ていました。

それがなぜできなかったのか、以下の記事に分析がありました。
↓ここから引用
--------------
再可決に野党が首相問責決議で対抗し、衆院解散・総選挙へ――。そんな観測も一時は流れた。しかし自民党は内閣支持率低下に悩み、民主党は選挙準備が遅れ、民意を問う対決は先になりそうだ。
--中略--------
石原宏高議員(自民)は、【中略】
「年金記録問題の『公約』をめぐる首相の発言がなければ、1月の解散はあり得た」。
--------------
↑引用ここまで
http://www.asahi.com/politics/update/0111/TKY200801110273.html

結局は自民党と民主党の、選挙に対する思惑で、今回の問責決議→解散総選挙は見送られたようです。

民主党の中には、本日始まった通常国会でガソリン税が問題になるため、そこで問責決議案を出したほうが有利だという読みもあったようです。

minshu_400.jpg

上記の画像は、民主党Webサイトの現在のトップページに出てくる画像です。

「新テロ特措法(補給支援法)」が採決される際、民主党の小沢代表が突然いなくなりました。大阪府知事選の応援に行くために国会の本会議を途中で抜けたのですが、国会を軽視し選挙の応援に行ったことに対する批判も高まりました。

「小沢代表の本当の目的は自民党を割って政界再編をすることだ。民主党もそのための道具に過ぎない。」という見方もあります。

そんな中、今後、問題になりそうなのは自衛隊の海外派遣(派兵)を特措法がなくてもできるようにする「恒久法」です。
この件についても、近いうちに書きたいと思います。
posted by あつこば at 17:40| Comment(1) | TrackBack(0) | 自衛隊 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年01月20日

民主党案の継続審議は「恒久法」の布石!

前回、前々回にも書いていなかった点、18日から始まった国会で特に気を付けておかなければならない問題に触れておきます。

■民主党案の継続審議は「恒久法」の布石!

11日に、与党の「新テロ特措法(補給支援法)」が成立しました。それとともに民主党が出していた「対案」は否決されるのかと思ったら「継続審議」になって残りました。

「新テロ特措法(補給支援法)」に反対していた民主党が、与党から「反対するのならば対案を出せ」と言われて出してきたのがその法案です。
以下のような説もあります。

↓ここから引用
--------------
民主党の前原誠司・前代表によると、小沢代表は「与党が同意できないような対案を作れ」と指示していたという。
--------------
↑引用ここまで
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20080111ig90.htm

つまり、与党ですらも同意できないような(酷い)案を、わざわざ作ったようなのです。
ですから、対案は民主党ですらも成立するとは最初から思っていなかった案なのです。

minshu_manifesto.jpg
(画像は民主党のマニフェストより)

自民党と公明党は、参議院ではこの法案に反対し、衆議院では反対して廃案にできるにもかかわらず、わざわざ残して国会で継続審議にするという戦略を使ってきました。

通常であれば「新テロ特措法(補給支援法)」が成立した時点で「対案」はその役割を終えているはずです。なぜ継続審議にしたのかには裏の思惑があります。

↓ここから引用
--------------
政府・与党は18日召集の通常国会に自衛隊の海外派遣を随時可能とする恒久法の提出を模索している。民主の対案を通常国会に継続とすることで恒久法論議の共通の土俵をつくる狙いがある。
--------------
↑引用ここまで
http://www.nikkei.co.jp/news/seiji/20080111AT3S1100O11012008.html

つまり、民主党案を継続審議にすることで、自民党が次に狙っている「自衛隊海外派遣(派兵)恒久法」の議論につなげ、民主党とも「恒久法」成立に向けての政策協議をしやすくなるという狙いがあるのです。

kosaka.jpg
11日の国会で民主党案について小坂憲次議員(自民党)は「民主党をはじめ、野党と緊密に協議し、自衛隊の海外派遣にかかわる恒久法の制定につなげていくべきだ」と主張しています。
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik07/2008-01-16/2008011601_01_0.html

民主党の「対案」は以下です。民主党では略して「テロ根絶法案」と呼んでいます。
http://www.shugiin.go.jp/itdb_gian.nsf/html/gian/honbun/houan/g16802013.htm

その第5章には、
「我が国の安全保障の原則に関する基本的な法制の整備が速やかに行われるものとし」と書かれています。
つまり、継続審議となった民主党案では、「恒久法を速やかに制定する」ことになっているのです!

この「自衛隊海外派遣(派兵)恒久法」の問題点については、引き続き書いていきたいと思います。
タグ:自衛隊
posted by あつこば at 18:18| Comment(1) | TrackBack(0) | 自衛隊 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年01月25日

「恒久法」ってなあに?

秋の国会に出てくるのではないかと言われている「恒久法」について書いてみます。

■「恒久法」とは何か?

簡単に書くと「恒久法」というのは「期間を限定しない法律」ということですね。
この場合では自衛隊を海外に派遣(派兵)するための恒久法のことを意味しています。http://www.toonippo.co.jp/news_hyakka/hyakka2007/0918_13.html

自衛隊が最初に海外に派遣(派兵)されたのは、1991年 湾岸戦争後のペルシャ湾です。

w1991_03023.gif

その後、1992年に「PKO協力法」という法律ができました。この法律では自衛隊が国連平和維持活動(PKO)に参加する前提として5つの原則が決められています。
5つの原則とは、1.停戦合意、2.紛争当事者の同意、3.日本の中立、4.撤収可能、5.必要最小限の武器使用、です。

ところが、2001年9月11日にアメリカで「同時多発テロ事件」が起きたために「テロ特措法」が作られ自衛隊がインド洋に派遣(派兵)されました。
そして、さらに作られた「イラク特措法」で、現在でも自衛隊が派遣(派兵)され、米軍の物資を運ぶなどの戦争協力をしています。

img_jisseki.jpg

こうした「特措法(特別措置法)」は、期間が限定されています。1月11日に成立した「新テロ特措法」は1年で期限が切れます。ということは今年の秋の国会で延長を巡ってまた国会で議論をしなければなりません。今の「ねじれ国会」では参議院で野党が過半数を占めていますので自衛隊の海外活動は続けられなくなる可能性があります。

そこで自民党は、いちいち特措法を作らなくてもすむように「恒久法」を制定しようとしているんですね。
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/080111/plc0801112005010-n1.htm

■テロ対策の民主党案は恒久法案の布石

前に書きましたが、「新テロ特措法」に対する民主党の対案は18日から始まった国会で継続審議になっています。

継続審議にした狙いについては以下のように報道されています。
↓ここから引用
--------------
自民党国対幹部は「恒久法につながる内容で、与党と合意も可能だ。審議を通じ、民主党内の足並みの乱れも明らかにできる」と指摘している。
--------------
↑引用ここまで
http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/080114/stt0801142114018-n1.htm

福田首相も民主党小沢代表との党首討論で、民主党の対案について、
↓ここから引用
--------------
「大変意欲的だと思う」「これから国会でおおいに議論させていただきたい」と述べていました。
--------------
↑引用ここまで
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik07/2008-01-15/2008011501_02_0.html

民主党の対案じたいはどうせ否決されるのでしょうけど、国会で議論することで恒久法を作るための布石になるんですね。

kankou4-2.jpg

■そもそも「恒久法」は許されるの?

「特措法」というのは、9.11やイラク戦争などの緊急事態があったために例外的に作られた法律のはずです。
日本には憲法九条がありますから、そもそも「日本を守るため」という名目で作られた自衛隊を海外に派遣(派兵)してはいけないのです。

「国際平和のために必要」ということで5原則を決めたPKO法を作り、「やむおえぬ措置」ということで特措法にしてきたのに、「恒久法」を作って、いつでも自衛隊を海外に派遣(派兵)してしまうというのは憲法違反もはなはだしい話ですね。
福田首相は恒久法ではなく「一般法」と読んでいますが、自衛隊の海外派遣(派兵)が普通のことだなどという発想は憲法第99条「憲法尊重・擁護の義務」にも反しているのではないでしょうか?

自民党は今年、「恒久法」の制定を狙っています。そしてその先にあるのは憲法九条の改定です。そのために、「外圧」や「国際貢献」を名目にして自衛隊を海外に派遣(派兵)し、「実態と憲法とが合っていない」状態を作り出したいのでしょう。
タグ:自衛隊
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2008年02月20日

イージス艦と漁船の事故

昨日早朝、海上自衛隊のイージス艦「あたご」と漁船「清徳丸」が衝突し、清徳丸に乗っていた親子が行方不明になってしまいました。現在でも二人は見つかっていません。まだ捜索は続いているようです。生きていらっしゃることを祈ります。

こうした事件・事故が起きると私を含めて反戦・平和の気持ちを持っている人やマスコミは、「自衛隊が悪い」「イージス艦が悪い」と言いたくなりがちです。
とりあえずは予断を避け、正確な情報に基づいた判断をすることが大切ですね。

さまざまな報道などをチェックしてみました。

「あたご」は海上自衛隊のイージス艦で、それまでの「こんごう型」よりもひとまわり大きい艦艇です。

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(三菱重工 長崎造船所で作られていた「あたご」 2005年撮影)

イージス艦は探知能力と情報処理能力が優れていると言われていて、敵対する国が撃ってきたミサイルを捜して追尾する能力を持っています。
(「こんごう」は海の上から迎撃ミサイルを撃ってミサイルを落とす装備を備えていますが、「あたご」は捜索・追尾のみで迎撃する装備は持っていません。)

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今回の事件が起きた後の記者会見では「最新鋭の探知能力を持つイージス艦なのになぜ?」というような質問が相次いだそうです。

http://sankei.jp.msn.com/affairs/disaster/080219/dst0802191040010-n1.htm
↓ここから引用
--------------
「事故を起こしたのが最新鋭のイージス艦だったことについてどう考えるか」との質問が相次いだ。防衛省幹部らは「最新鋭であるかそうでないかは関係ない。今は漁船乗組員の方々の捜索に全力を挙げる」と述べるにとどまり、事故原因についても「調査中」を繰り返した。
--------------
↑引用ここまで

たしかに軍事的には最新鋭であっても、海面にいる漁船は見つけにくいようです。

「最新鋭のレーダーでも見つけにくい」 「世界の艦船」編集長 木津徹
http://sankei.jp.msn.com/affairs/disaster/080219/dst0802191042011-n1.htm

以下の画像で下の部分にある八角形の部分が最新鋭のフェイズド・アレイ・レーダー(SPY1)です。
対水上レーダーと航海レーダーは、丸で囲んでいる部分です。

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昨日、NHKの「NEWS 7」での解説を要約すると、
--------------
八角形の部分は防空用
基本的に空を飛ぶ目標物の探知に使われるもので作戦や訓練の時に使う
一般の航行時には使わない
--------------
海上の船などをチェックするのは、艦橋に取り付けられた水上レーダー
相手が小型の漁船の場合、数10キロ以内のものが探知でき、操舵室と戦闘指揮所にあるレーダー画面でそれぞれ一人の隊員が監視
--------------
さらに通常の監視体制では艦橋の左右、そして後方の甲板に3人の隊員が配置されている
艦橋の中にも2人、あわせて5人が24時間体制で周囲の見張りを行なっている。
--------------
とのことでした。

20080219.jpg

石破大臣は昨日、自民党の部会で説明をしたそうです。
それによると、

事故が起きた2分前に、衝突したのとは別の漁船がイージス艦の前を横切り、その際に緑の明かりを確認した

1分後に緑の明かりがスピードを上げたので漁船だと確認した

その時点で「あたご」は全力で後ろに下がろうという行動をとった。100メートル前方の漁船も大きく右側に舵を切ったが午前4時7分に衝突した。

とされています。

↓ここから引用
--------------
(「海上衝突予防法」では)2隻の船が進路を交差して横切る場合、相手を右舷側に見る船が右に進路を転じて衝突を避け、一方の船は進路、速力を保ったまま航行することを定めている。
--------------
↑引用ここまで
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2008022002088988.html

今回、イージス艦「あたご」は「全力で後ろに下がろうという行動をとった」そうですが、右に舵をきっていなかったとすると、回避の仕方に問題があったのかもしれません。
以下のような報道もあります。

イージス艦、停止間に合わぬ速度 分速300メートル
http://www.asahi.com/national/update/0220/TKY200802200120.html

「あたご」のような大きさの船は、止まったり後ろに下がったりするのには時間がかかります。

「あたご」の前を横切ろうとした漁船のスピードや航路、付けていたランプ等が適切だったのかどうかについては、まだはっきりとはわかりません。

今回の事故の原因がどこにあるのかは、まだわかっていませんので予断は避けるべきですが、自衛隊の側の責任は免れそうにありません。

また、事故が起きたという情報が石破大臣や福田首相に伝わったのが遅すぎたという点も問題になっています。

【2月21日追記】
その後、清徳丸のライトは出港時にはすべて点いていたという目撃証言が出てきました。
また、石破大臣が19日に説明した内容と食い違う証言もいくつか出てきました。

【2月28日追記】
今回の事故と、イージス艦「あたご」について以下の文章を書きました。
http://atsukoba.seesaa.net/article/87505509.html
タグ:自衛隊
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2008年02月28日

イージス艦「あたご」とは?

19日に起きた海上自衛隊のイージス護衛艦「あたご」と漁船との衝突事故については、マスコミでかなりの報道がされています。

ここでは事故を起こした「あたご」はどんな船なのかを考えてみましょう。
今回の事故はイージス艦であることが直接の原因ではありませんが、話題になっていますし、海上自衛隊のイージス護衛艦「あたご」の位置づけをあらためて考えてみるのも意義があることだと思います。

イージス艦というのはアメリカで開発されたイージス・システムを搭載した艦艇のことです。
江畑謙介さんの『日本の防衛戦略』によると、フェイズド・アレイ・レーダー(SPY-1)によって空を警戒し、複数の目標に対してミサイルを発射し目標に向かって誘導できる機能を持っているとされています。

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この画像の八角形の部分が「あたご」のフェイズド・アレイ・レーダーです。ただしこのレーダーは今回の事故とは、ほぼ関係がありません。
http://atsukoba.seesaa.net/article/84962867.html

イージス艦をアメリカ以外で導入したのは日本が最初です。
海上自衛隊のイージス護衛艦は、もともとは米ソ冷戦が続いていた1980年代にソ連軍の爆撃機による空からの攻撃に対処するために導入が決まったそうです。
しかし、冷戦が崩壊してもイージス艦は造られ続けました。前述の本では、
↓ここから引用
--------------
本来なら、民主主義の国であるなら、90年代の初め、遅くとも92年の段階で、本当にイージス艦の建造を続ける必要があるのかについて、立法府で議論があってしかるべきであったろう。
--------------
↑引用ここまで
としています。

その後、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)がミサイルを持つようになり、イージス艦は結果的にそれに対抗するのに役にたつということになりました。
つまり、イージス・システムを改造したイージスBMDによって相手が撃ってきたミサイルを探知し、こちらから撃つミサイルで撃ち落とすという海上でのMD(ミサイル・ディフェンス)計画になったのですね。

そして4隻造られた「こんごう型」に続いて、それよりもひとまわり大きな「あたご型」が造られているのです。現在では「あたご」に続く6番目のイージス護衛艦「あしがら」もほぼできあがっています。
(この記事を書いた時には「7番目のイージス護衛艦も建造が予定されている」と書きましたが、私の勘違いだったようですので訂正します。)

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(今回事故を起こした「あたご」)

MD(ミサイル・ディフェンス)計画に関しては賛否両論ありますが、仮に日本にとってイージスBMDとMD用ミサイルが不可欠であると仮定しても、あまりにも金額が高いイージス艦は必要ないのではないかという説もあります。
ちなみに「あたご」の建造費は1475億円とされています。(1400億円、1453億円という記述もあります。)

前述の本で江畑謙介さんは以下のように書いています。
↓ここから引用
--------------
イージス・システムとSM−3迎撃ミサイルが、どうして【中略】「駆逐艦型」の船に載せなければならないのかという疑問が生じる。
--中略--------
専守防衛で、海外で「積極的な」、あるいは攻撃的な軍事力の行使はしないとしている日本が、イージス・システムを【中略】巡洋艦や駆逐艦型の船体に搭載する必要性はない。
それよりも、例えば、コンテナ船のような船にイージス・システムとSM−3を搭載し、良い居住性を持たせて日本海に配置した方が、よほど日本に対する弾道ミサイル防衛という目的には効果的ではないだろうか。
--------------
↑引用ここまで

江畑さんのこの説については異論がある方もいるでしょうが、こういう視点を持つということも大切です。

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(建造されていた当時の「あたご」 2005年撮影)

「あたご」は三菱重工の長崎造船所で造られました。建造された場所は、かつての戦艦「武蔵」と同じ第二船台(BERTH No.2)でした。

「あたご」の名前は、当初、海上自衛隊の内部で募集されて候補名を絞り、「旧海軍を代表する名前」が候補にあがったのですが、撤回されたそうです。
候補にあがっていた名前は、旧海軍の「長門(ながと)」「大和(やまと)」だったなどの説があります。
海上自衛隊のイージス艦には、すべて大日本帝國海軍の巡洋艦の名前が付けられています。

現在のところ、最新鋭のイージス艦の中でももっとも新しい艦艇ですから、海上自衛隊の中でも花形といえる船でしょう。

ただ、「あたご」には現在のところ、ミサイル防衛用のSM−3は搭載していません。
昨年12月、ハワイでSM−3によるミサイル迎撃の実験に成功したとされているのは、海上自衛隊のイージス艦の中でも一番最初に造られた「こんごう」です。

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(昨年12月、「こんごう」によるミサイル発射)

「あたご」は、去年3月に就役し、11月からハワイで対空ミサイルSM−2の発射試験をしていたとされています。

実践配備では「こんごう」に先を越される形とはなりましたが、ミサイルの発射実験にも無事成功した「あたご」も、今後イージスBMDへの改造が予定されています。

防衛省・自衛隊は昨年、不祥事などの逆風が続いていましたが、守屋前事務次官の問題も一段落し、インド洋での給油活動も再開することになり、ようやく落ち着いてきた時に起きたのが今回の事故です。

防衛省の発表によると「あたご」が現場海域を通過するのは初めてだったそうです。
http://www.kanaloco.jp/localnews/entry/entryxiiifeb0802529/

やはり、乗組員に油断があったのだろうということは想像ができます。

石破大臣は24日の『サンデープロジェクト』で、
↓ここから引用
--------------
国を守る「誇り」が「おごり」に通じているとしたら、それはとんでもないこと
--------------
↑引用ここまで
と話していました。

そこは、もう少し捜査が進み、たとえば民間の大型艦や他の自衛艦が現場海域を通る時はどうだったのか、「あたご」の乗組員の意識がどうだったのかなどの情報も出てこなければわかりません。

昨日(27日)、ようやく「あたご」の艦長が公式の場に現れ謝罪しました。記者会見では「あの海域で漁船が多い状況であったということを理解していないのは問題だった」と語ったそうです。
http://www.asahi.com/national/update/0228/TKY200802270395.html
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20080228-OYT1T00115.htm

防衛省が虚偽の説明をしていたという問題も出てきて、石破防衛大臣は窮地に追い込まれています。
http://www.yomiuri.co.jp/feature/20080219-1263180/fe_080228_01.htm?from=yoltop

事件については海上保安庁の調査が一段落するまでは、実情がなかなかわかりません。

(この記事を書いた時には「7番目のイージス護衛艦も建造が予定されている」と書きましたが、私の勘違いだったようです。失礼しました。ご指摘くださった方に感謝します。)
タグ:自衛隊
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2008年05月03日

米軍再編による自衛隊の変質は憲法破壊

このブログでは、これまでに憲法記念日に関連して以下の文章を書いてきました。

2006年05月03日
憲法「改正」はアメリカの要求
http://atsukoba.seesaa.net/article/17333881.html

2007年05月02日
改憲要求の「アーミテージ・レポート2007」
http://atsukoba.seesaa.net/article/40584867.html

2007年05月03日
憲法記念日に米軍再編と辺野古の問題を考える
http://atsukoba.seesaa.net/article/40697167.html

今回も憲法と米軍再編の問題について考えたいと思います。

alliance_transformation.jpg

昨年亡くなった松尾高志さんの遺稿集『同盟変革 日米軍事体制の近未来』は、近年の新ガイドラインや有事法制の整備、米軍再編などにより、日米安保体制や日米同盟がどのように変質しているかがよくわかる本です。
http://www.nippyo.co.jp/shop/slide.cgi?No=3256

この中では、米軍再編に関して冨沢元陸幕長が2005年に『世界週報』に書いた論文を紹介しています。
↓ここから引用
--------------
日本の「新しい役割」が、現日米安保条約の枠をはるかに越えることを、われわれは承知しなければならない。
--------------
↑引用ここまで

つまり、自衛隊幹部は、米軍再編によって日本の役割が日米安保条約の枠をはるかに越えると認識していたわけです。

この本の中で松尾さんは、2006年の小泉首相とブッシュ大統領との会談の際に発表された共同宣言「新世紀の日米同盟」についても分析しています。
↓ここから引用
--------------
共同文書のキーワードは「グローバル」であって、日米安保体制が日米安保条約の規定にまったく根拠をおかない「グローバル」な日米同盟を実践するという新しい段階に踏み込んだことを「宣言」するものとなっている。
--------------
↑引用ここまで

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2005年に出された米軍再編の合意文書『日米同盟:未来のための変革と再編』には、日米の同盟に基づいた関係が「世界における課題(global challenges)」に「効果的に対処する」上で「重要な役割」を果たしている、と書かれています。

米軍再編は米軍だけが変わるのではなく、自衛隊が変質し、憲法を踏み越え、軍隊として世界に出て「グローバル」な活動をするものだったんですね。

特措法によるインド洋やイラクへの自衛隊の派遣(派兵)は、その先取りだったわけです。

イラクでの自衛隊の活動は憲法違反の活動も含んでいるという判決が、先日、名古屋高裁で出されました。

img_jisseki.jpg

時代は少し戻りますが、有事法制についての文章の中で、松尾さんは以下のように書かれています。
↓ここから引用
--------------
このような有事法制整備を「憲法違反」とする論調があるが、私はあえて「違う」と言う。
こうした法律案が上程され、成立することが憲法破壊行為そのものなのである。あとは憲法の文言だけが残ることになる。
--------------
↑引用ここまで

つまり、「憲法違反」どころか、いわば「憲法破壊」行為だと、あえて言っているわけです。
有事法制の関連法が成立したのは、2003年と2004年です。

この後、事態はどんどん進み、現在では自衛隊の海外派遣(派兵)をいつでもできるようにする「恒久法」さえも作られようとしています。

憲法九条がある国でありながら、自衛隊を海外に派遣(派兵)する恒久法を作るというのは、「憲法破壊」そのものと言えますね。

恒久法に関しては、以下に書いています。

「恒久法」ってなあに?
http://atsukoba.seesaa.net/article/80559714.html
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2008年12月11日

新テロ特措法は憲法違反

新テロ特措法(補給活動継続法)の延長が明日にでも採決されてしまいそうです。

つい間違ってしまいそうなので整理しておきますが、この間、自衛隊を海外に派兵(派遣)する特措法(特別措置法)は、大きくは二つありました。

■テロ特措法
■イラク特措法

まず、「テロ特措法」ですが、9.11の事件が起きてアメリカがアフガニスタンに報復するための攻撃をすることになり、それに合わせてできたのが「テロ特措法」です。

「テロ特措法」は給油活動以外に航空自衛隊による輸送活動も含まれていました。
C-1yokota.jpg
上記の画像は「テロ特措法」に基づき、東京都にある米軍横田基地で米軍の物資を輸送していた航空自衛隊のC-1輸送機です。その後、航空自衛隊のこの活動は終了しました。

海上自衛隊の補給活動はその後も続きます。「テロ特措法」は時限立法だったので、その後、3回も「改正」されて給油活動が延長しましたが、去年、安倍首相が政権を投げ出したこともあり「改正案」が成立せずに、自衛隊はインド洋での給油活動からは一度、撤退しました。

そして、今年に入っていったん参議院で否決されたものを衆議院で「3分の2」で成立させたのが、「新テロ特措法(補給活動継続法)」ですね。

政府は「補給支援法」と呼んでほしかったようです。「支援」という言葉を入れることで、戦争に協力しているというニュアンスをやわらげたかったんでしょう。防衛省も、以下のポスターを駅に貼るなど「補給支援」の必要性を宣伝してきました。
terro-200.jpg
(防衛省が貼ったポスター)
政府や防衛省の思惑には合わせずに「給油延長法」と呼んだり「新テロ特措法」と呼ぶメディアが多いです。ちなみに朝日新聞では「補給支援特措法」と呼んでいました。
http://www.asahi.com/politics/update/1210/TKY200812100299.html

本質的には、9.11をきっかけとしてアメリカが一方的に始めた「対テロ戦争」の支援であるのが実態ですから、「新テロ特措法」と呼ぶべきだと私は思っています。

----------------------------------

さて、「イラク特措法」ですが、これはアメリカが起こしたイラク戦争に合わせてできたものですね。

主に陸上自衛隊と航空自衛隊が活動をしてきました。
陸上自衛隊は2006年に撤退し、航空自衛隊も年内に撤退する予定です。

samawah01.jpg img_mission07.jpg
(左の画像は『軍需工場は、今』、右の画像は航空自衛隊のサイトより)

航空自衛隊の活動については、名古屋地方裁判所で「憲法9条に違反する活動を含んでいる」という判断がされました。それに対して「(隊員の)心境を代弁すれば『そんなの関係ねえ』という状況だ」と言ったのは、先日更迭された田母神 航空幕僚長でしたね。

航空自衛隊がイラクで何をやってきたかというと、米軍を中心とする多国籍軍の兵士や物資を輸送していました。つまり直接の軍事行動ではありませんが、「後方支援」という名のもとで戦闘行為の重要な要素を担ってきたのです。

tokiwa01-287.jpg
(補給艦帰国関連行事にて。「麻生太郎オフィシャルサイト」より)

「新テロ特措法」に話を戻します。国会審議で麻生首相は、自衛隊が行なっている給油活動について「明らかに武力行使には当たらず、活動地域は非戦闘地域であり、憲法9条違反に当たることはない」と発言しました。
http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2008101700702

このブログでも何度か書いてきましたが、自衛隊がテロ特措法のもとで直接給油したり間接給油した燃料は、アフガニスタンやイラクの戦争に直接使われています。
http://atsukoba.seesaa.net/category/4559315-1.html

「イラク特措法」による航空自衛隊の活動が「憲法9条に違反する活動を含んでいる」と言われたように、「新テロ特措法」による海上自衛隊の活動も憲法9条に違反する活動を含んでいるのです。
タグ:麻生 自衛隊
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2009年01月25日

海賊とは?

いわゆる「海賊対策」としてアフリカのソマリア沖に自衛隊が派遣(派兵)されることになりそうです。
しかも、政府は「海賊対策」のための法案を作ると言いながら、その法案の成立を待たずに、とりあえず見切り発車で派遣(派兵)しようとしています。

以下の地図で青く塗りつぶされた部分がソマリアです。「アフリカの角」と呼ばれているそうです。
Somali.jpg

ところで「海賊」って一体、どんな人達なんでしょう?
今回は、まずそこから考えてみたいと思います。

1月22日に放送された『NEWS23』での「海賊」の説明は以下です。
↓ここから引用
--------------
外務省によると、ソマリアの海賊はソマリア本土に基地を持ち、遠方への航行が可能な母船と、攻撃用の高速小型ボート数隻を使用している。
--中略--------
(相手の船舶に)小型のボートで接近、はしごやロープをひっかけて船に乗り込み、乗組員を人質とする。
--------------
↑引用ここまで

では、「海賊」の目的はなんなのでしょうか?

AP通信が配信した「海賊を名乗る男」へのインタビューが、昨年12月26日、日本テレビで放送されました。
http://www.news24.jp/125894.html
↓ここから引用
--------------
「ヨーロッパやアジアからの密漁船に漁場を荒らされているから、武装して防ぐのだ」
------------------------------
「サウジアラビアの石油タンカーも我々がやった。天然資源を守るために自発的に船を襲撃している。身代金を支払えば、船員は全員無事に解放してやる」 
--------------
↑引用ここまで

以下のサイトでは、こうした背景をもう少し詳しく説明しています。

http://www.the-journal.jp/contents/newsspiral/2008/12/post_177.html
↓ここから引用
--------------
ソマリアが世界最大の海賊スポットになった背景の第1は、同国の国家崩壊と経済壊滅である。
--中略--------
もう1つの背景は【中略】マグロやエビをはじめ水産資源の豊富な漁場であるソマリア沖海域が外国の大型漁船団による乱獲に晒され、その結果、地元の零細漁民や漁業会社が収入源を失ったという事情がある。
--------------
また、欧州諸国などによる違法な廃棄物の投棄も問題になっており、国連環境計画(UNEP)スポークスマンによると「欧州国内で1トンの廃棄物を処理するのに 1000ドルかかるのに対して、アフリカの角に投棄すれば2.5ドルで済む」とされる。化学物質や放射性廃棄物が投棄されている疑いも指摘されている。
--------------
↑引用ここまで

「ヨーロッパやアジアからの密漁船」、「外国の大型漁船団による乱獲」については、以下の指摘もあります。

http://www.asaho.com/jpn/bkno/2008/1208.html
↓ここから引用
--------------
夜、ソマリアの海は、たくさんの漁船団の灯火によって「マンハッタンの夜景のように見える」とは、ソマリアの漁業専門家の言葉である。これらの船団の国旗は、EU諸国と米国、日本のものだ。
--中略--------
海賊たちは、日本を含む先進国がそれまで乱獲してきた漁業資源の代金回収と、廃棄物投棄の迷惑料を暴力的な方法でやっているともいえる。
--------------
↑引用ここまで

実は日本の船もソマリアで乱獲を行なっていたようですね。
もちろん「海賊」がやっている行為は「犯罪」でしょうから、正しいとはけっして言えないでしょう。
しかし、ソマリアは1991年から内戦が続いていて無政府状態です。そうしたなかで他国の漁船による乱獲や廃棄物の投棄なども重なってしまうと、「海賊行為」が当然のように行なわれることも想像できます。

以下は、ソマリアを担当している駒野大使への取材記事です。

http://www.asahi.com/international/update/0123/TKY200901220286.html
↓ここから引用
--------------
海賊の多くは沿岸を拠点とする元漁民で、無政府状態になった91年以降、当初は漁場を荒らす外国の漁船を追い払う目的で武装。その後、私兵集団と結びついて人質の身代金狙いの海賊行為に手を染めるようになったという。
--------------
海賊のリーダーは現地では「最も女性にもてる存在」という。荒稼ぎした金で海岸の一等地に豪邸を建て、豪華な結婚式を挙げる様子がアフリカの新聞や雑誌で取りあげられ、豊かな生活の「象徴」にもなっているという。
--------------
↑引用ここまで

昨年11月15日の朝日新聞には以下のようにも書かれています。
↓ここから引用
--------------
漁業会社がそのまま漁船を使って「海賊会社」に衣替えしたケースがほとんどで、複数の武装集団に全体で300人ほどが属しているという。
--------------
↑引用ここまで

無政府状態のソマリアでは、海賊がしっかりとした「ビジネス」となっているようです。
以下の記事によると北東部のエイルは、「海賊の楽園」と呼ばれているそうです。

http://sankei.jp.msn.com/world/mideast/080928/mds0809282043001-n1.htm
↓ここから引用
--------------
エイルは、海賊ビジネスが“主要産業”の無法地帯。BBCによると、現地では小型パソコンにスーツ姿の海賊用会計士や交渉人が闊歩(かつぽ)し、街には人質用の特別レストランもあるという。
--------------
↑引用ここまで

そして海賊には、なんと広報担当もいるそうです。11月15日の朝日新聞の記事にはインタビューが掲載されています。
↓ここから引用
--------------
「みんな漁師だった。政府が機能しなくなり、外国漁船が魚を取り尽くした。ごみも捨てる。我々も仕事を失ったので、昨年から海軍の代わりを始めた。海賊ではない。アフリカ一豊かなソマリアの海を守り、問題のある船を逮捕して罰金を取っている。」
「国を守って給料をもらえるこの仕事に誇りを持っている」
--------------
↑引用ここまで

【2月13日 追記】
「海賊は元漁民ではない」という主張をされている方もいましたので補足しました。
http://atsukoba.seesaa.net/article/114158332.html

「海賊」について書いた他の文章は、この下の「タグ:」で「海賊」という文字をクリックすると一覧が出てきます。  ↓↓↓
タグ:自衛隊 海賊
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2009年01月29日

「海賊対策」の見切り発車は自衛隊も懸念している!

政府は、いわゆる「海賊対策」として、自衛隊をソマリア沖に派遣(派兵)することを決めました。

samidare.jpg
画像は護衛艦「さみだれ」。中国新聞によると「さざなみ」と「さみだれ」が派遣の準備をしているとされています。
http://www.chugoku-np.co.jp/News/Tn200901150063.html

現在、「海賊処罰取締法(仮称)」の法案が検討されていますが、今回はその法案の成立を待たずに、とりあえず見切り発車的な派遣(派兵)をすることになります。

今回は自衛隊法の自衛隊法82条に書かれている「海上警備行動」を発令して派遣(派兵)しようとしています。この「海上警備行動」が発令されたのは過去に二回ありますが、いずれも日本の領海内です。

これまで自衛隊が海外に行く際には、PKO法、テロ特措法、イラク特措法などでおこなっていました。それが今回は、そもそも日本の領海内を想定していた現行法の「海上警備行動」で派遣(派兵)してしまうのです。

特措法の法案を作って国会審議するのではありませんから、十分な議論はされません。
にもかかわらず、これまで訓練以外では一発の銃弾も撃ってこなかった自衛隊が、今回の派遣(派兵)により初めて交戦をする可能性が出てきました。

自衛隊を派遣(派兵)するべきだと主張している人達の間でも、こうした拙速なやり方には批判が出ています。
そして……、

http://www.chugoku-np.co.jp/News/Sp200901280307.html
↓ここから引用
--------------
防衛省内部ですら「緊急避難的な脱法行為」(幹部)との指摘があり、将来に禍根を残しかねない。
--------------
海上警備行動は領海内の事案を想定している。政府は海外派遣について法的に問題ないとしているものの、制服組幹部は「強い違和感を感じる」と本音を漏らす。今回の拙速な対応は、政治による自衛隊の無原則な派遣を助長しかねない。
--中略--------
浜田靖一防衛相は麻生太郎首相から自衛隊派遣を検討するよう指示を受けた昨年末以来、海上警備行動発令に終始慎重な考えを示してきた。
--------------
↑引用ここまで

防衛大臣自身が今回の派遣(派兵)の仕方に疑問をもっています。
1月22日に放送された『NEWS23』では防衛大臣の以下の見解が報道されていました。
↓ここから引用
--------------
今の法律の枠内では、どの場合にどこまで武器が使えるのかの基準が明確でなく、現場で急な判断を迫られる部隊の負担が大きい
--------------
新しい法律で権限を与えてから派遣すべき
--------------
↑引用ここまで

同番組では、赤星慶治 海上幕僚長の以下の発言も紹介しています。
↓ここから引用
--------------
海上自衛隊の発足以来、海賊というものに対しての議論・検討・あるいは教育というものは、ほとんどやっておりません。
--------------
したがいまして、どういう状況になるのかということにつきましては、ほとんど想像がつかないのが現時点での状況です。
--------------
↑引用ここまで

実際に、現行法のままで派遣(派兵)し、「海賊」と対峙した時には、どうなるのでしょう?

http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/090129/plc0901290102002-n1.htm
↓ここから引用
--------------
海自艦は現行の海警行動で派遣されるため、武器使用基準は現行法の枠内となる。警察官職務執行法7条に基づき正当防衛と緊急避難の場合に限られ、海賊側が撃ってくるまで危害射撃は不能だ。
--------------
海賊はロケット砲などで重武装しており、最初の一撃で海自側に甚大な被害が出ることも予想される。逆に海賊が発砲しなければ、民間船舶に海賊が乗り移るのを待つという事態にもなりかねない。
--------------
↑引用ここまで

装備やオペレーションの面からの不安もあるようです。
自衛隊の準機関紙とも言われている『朝雲』でも、問題点が指摘されています。
http://www.asagumo-news.com/news/200901/090122/09012204.html

自衛隊の内部からも懸念の声が強い今回の派遣(派兵)。これを決めた政治家の人達の意識はどうなんでしょうか?

http://mainichi.jp/select/seiji/news/20090117k0000m010113000c.html
↓ここから引用
--------------
「とにかく護衛艦を出せばいい。難しいことを考える必要はない」。海賊対策を検討する与党プロジェクトチーム(PT)のある議員は、派遣に前のめりな姿勢を隠さなかった。9日始まったPTは、海上警備行動発令に慎重な浜田靖一防衛相らを与党側から説得する色合いが強く、結論は当初から「派遣ありき」だった。
--------------
↑引用ここまで

こんなやり方で海外に行かされる自衛隊の人達が気の毒です。

---------------
【訂正】
『朝雲』を『朝霧』と書き間違えていましたので訂正しました。
ご指摘くださった方に感謝します。

【追記】
政府が「海賊対策」を急いだ理由について、以下に書きました。
http://atsukoba.seesaa.net/article/113517003.html
タグ:自衛隊 海賊
posted by あつこば at 12:41| Comment(0) | TrackBack(1) | 自衛隊 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年02月01日

政府が「海賊対策」を急ぐ理由は?

今回は、日本政府が法整備もせずに自衛隊の派遣(派兵)を急いでいる理由を考えてみます。

■豪華客船を護衛

共同通信が以下の記事を配信しています。
http://www.47news.jp/CN/200901/CN2009011601001036.html
↓ここから引用
--------------
4月下旬から5月初めにかけて日本の豪華客船2隻がソマリア沖を通過予定になっており、この護衛を当面の大きな課題と位置付けている。
--中略--------
ソマリア沖を通過するのは乗客乗員約1100人が乗るとみられる郵船クルーズの「飛鳥2」と、同じく500−600人が乗船する見込みの日本クルーズ客船の「ぱしふぃっくびいなす」。2隻とも世界一周クルーズの客船。
--------------
↑引用ここまで

産経新聞でも報道されていました。
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/090129/plc0901290102002-n1.htm
↓ここから引用
--------------
指示が遅れた分だけ派遣は突貫工事となる。4月任務開始は政府にとってのデッドラインだったからだ。
--------------
護衛艦派遣の検討は、4月下旬から5月上旬にかけ、2隻の日本の豪華客船がソマリア沖を通過するのが発端だった。昨年も護衛の是非が問題となった両船には約1600人の日本人乗客が乗船する。
--------------
↑引用ここまで

「昨年も護衛の是非が問題となった」と書かれていましたので、昨年の報道を調べてみました。

http://www.zakzak.co.jp/top/200810/t2008100352_all.html
↓ここから引用
--------------
政府が4月、日本人計1600人余りが乗る豪華客船2隻がアフリカ・ソマリア沖を通過する際、海賊に襲撃される危険性が高いとして、インド洋での給油活動で展開していた海上自衛隊の護衛艦に「海上警備行動」の発令を検討していたことが3日、複数の関係者の話で分かった。
--------------
最終的には首相官邸側の「民間客船の護衛は、給油活動が目的の新テロ対策特別措置法の想定外」との判断で見送られ、政府は米英海軍に支援を要請、客船は無事通過した。
--------------
↑引用ここまで

昨年も同様に豪華客船を護衛する話が出ていたのですね。

■中国への対抗意識

自衛隊の派遣(派兵)を急いでいる理由として、もうひとつ指摘されているのが中国に対する対抗意識です。

昨年12月21日の読売新聞の報道です。
↓ここから引用
--------------
アフリカ・ソマリア沖での海賊対策で、米英仏など十数か国に加え、中国も軍艦派遣を正式発表し、日本政府内には焦燥感が出ている。米国は中国と、情報共有などで協力する考えで、来月のオバマ政権発足時までに日本の貢献策を示せなければ、新政権との関係構築で中国に後れをとるとの見方も出ている。
--------------
↑引用ここまで

続いて1月25日の毎日新聞。
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20090125ddm001010085000c.html
↓ここから引用
--------------
中国の動きは、政府をあわてさせた。
--中略--------
内閣官房の政府高官はそのころ、麻生太郎首相に「中国に負けるわけにはいきません」と進言している。首相は「そりゃそうだ」と答えたという。
--------------
↑引用ここまで

そして、1月28日のNEWS23でも報道されました。
↓ここから引用
--------------
政府はなぜ自衛隊の派遣を急ぐのか?
自衛隊派遣の検討を表明したのは去年12月、中国海軍のソマリアへの派遣前夜。
防衛省幹部は「中国の船が出るその日の朝刊に載せる意味があったのだろう」と指摘する。
--------------
↑引用ここまで

日本の政治家の中国に対する対抗意識やメンツのために、拙速な派遣(派兵)をされる自衛隊。政府の人達は自衛隊員を単なるコマとしか思っていないのでしょうか?

asou-jmsdf.jpg
画像は「麻生太郎オフィシャルサイト」より、海上自衛隊の行事にて
posted by あつこば at 18:25| Comment(4) | TrackBack(0) | 自衛隊 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年02月13日

「海賊は元漁民ではない」という主張

以前、「海賊」というのはどういう人達で、どのような背景で「海賊行為」を行なっているかについて書きました。
http://atsukoba.seesaa.net/article/113146297.html

その後、調べてみたところ「海賊は元漁民ではない」という主張をされている方もいましたので補足します。

政治学者 竹田いさみさんという方がTBSラジオに出演してインタビューで語っています。
竹田いさみさんという方は『国際テロネットワーク』という本を出していて、以下のページにその紹介があります。
http://www.yomiuri.co.jp/book/author/20060214bk01.htm

ラジオ番組はネットでも聞くことができます。3回に渡る特集ですが特に1回目のタイトルが刺激的です。

「海賊は元漁民にあらず〜その意外な正体」
番組紹介ページ
http://www.tbsradio.jp/st/2009/01/17_2.html
実際の音声
http://podcast.tbsradio.jp/st/files/sakasa20090107.mp3

大雑把に説明すると、「海賊」は内戦で対立してる氏族の中のひとつが海賊行為に出ているのであって「元漁民」ではない、という主張をされています。

著作権もありますので、ごく一部だけ紹介しましょう。

↓ここから引用
--------------
日本のテレビや新聞では、元漁民との報道が多いと思います。しかし、これを鵜呑みにしてはいけないと思います。
--------------
もともとソマリアでは、産業としての漁業は成立していませんでした。
まあ小さな船で一日の糧を得る程度の漁業がなされていたという程度のものなんですね。
--------------
↑引用ここまで

「産業としての漁業」がなくても「一日の糧を得る程度の漁業」で暮らしていたのであれば、乱獲で漁場を荒らされた漁民が海賊化するというのはありうる話だと思いましたが……。
もう少し紹介しましょう。

↓ここから引用
--------------
海賊達自身がですね、まあその外国メディアの取材に対して「外国船の乱獲で漁業ができなくなったんだあ!」「やむおえず海賊になったんだ」と発言しているんです。
--------------
つまり自分たちの置かれた哀れな境遇をアピールして、外国メディアから同情を引き出そうと。
--------------
↑引用ここまで

なるほど。たしかにテレビで流されている「海賊を名乗る人物へのインダビュー」は、海賊側からテレビ局にアピールしてきた可能性もあります。

海賊が活動をしている映像もテレビで流されていますが、竹田いさみさんによるとこれも「海賊」の側がPR活動のために提供したものだそうです。「海賊」に対する臨検の映像は取り締まりをしている側が撮った映像でしょうけど、「海賊」の行動にカメラがぴったりと付いて撮影している映像は、たしかに「海賊」側が提供した、あるいは「海賊」側があえて撮らせた可能性があると思います。

竹田いさみさんは、さらに「海賊」がさまざまなハイテク装備をしていることを紹介し、「ただの漁民とは思えませんね」と言っています。

軍事評論家の江畑謙介さんも、1月31日に放送されたNHK『週刊ニュース』でのインタビューで、「海賊」について以下のように話していました。

↓ここから引用
--------------
例えばアフガニスタンやイラクでなんかで行動している、非常に組織化された重武装の集団が洋上で活動していると。
--中略--------
(「海賊」が持っている)ロケット弾の発射機も、もともとは戦車を破壊するためのもの
--------------
↑引用ここまで

ということです。たしかに「元漁民」という言葉で、素朴な人達というようなイメージを持っていたとしたら、認識を誤る危険性はあります。

ただ、竹田さんに質問しているラジオのパーソナリティーは「元漁民……そんな簡単にできるわけないだろう」「日本のメディアは、あきらかにミスリーディングしている」などとオーバーなリアクションをしすぎだと思いました。

番組の第2回目では、氏族の有力者が作った私設海軍(沿岸警備隊)が「国際的な密輸グループに変身した」という説が語られます。

番組紹介ページ
http://www.tbsradio.jp/st/2009/01/18_4.html
実際の音声
http://podcast.tbsradio.jp/st/files/sakasa20090108.mp3

私設海軍(沿岸警備隊)が「海賊」に変化していく過程として、驚くべき内容が語られます。「海賊」は、民間軍事会社であるハートセキュリティ社の研修を受けたというのです。

↓ここから引用
--------------
実は2000年前後、いまから8年前ですね、9年前にですね、イギリスの海洋安全保障の会社がありまして、民間のコンサルタント会社でハートセキュリティっていうんですが、ここと契約を結んだんですね。
--------------
ここで契約を結んで多額の契約金を払ってですね、イギリス人の専門家を派遣してもらいます。そして高速艇の操縦とか武器の使用、ま、武器にはRK47とかRPGロケット砲とかですね、それからあと、衛星電話の使い方ですとか小型レーダーの使い方、また、犯人の逮捕術とかですね、対外広報の仕方など、まあ幅広い分野で海洋安全保障の研修プログラムを導入したと言われています。
--------------
↑引用ここまで

ハートセキュリティ社は、イラクで勤務中に武装勢力に襲撃されて亡くなった斎藤昭彦さんが勤めていた会社です。民間軍事会社に雇われた日本人がイラクに行っていたという事実は日本で衝撃的なニュースとして伝えられました。

前述の竹田さんの説が本当かどうかはわかりません。ネットで検索すると、出てくるものはほとんどが竹田さんの説を元にして書かれているものです。
ですので、これが正しいのかどうかの検証はできませんが、興味深い話だとは思います。

「対外広報の仕方」もハートセキュリティ社から学んだということですから、「海賊」達がインタビューで「同情を引き出そうと」して「自分たちは元漁民だ」と宣伝するという説も、なるほどと思わせます。


では、実際に「海賊」達が元漁民なのかどうかですが……、おそらく元漁民なのか元私設海軍(沿岸警備隊)なのかという「どちらか」ということではないのだと思います。ソマリア沖の「海賊」と呼ばれる人達の中には、元漁民もいれば元沿岸警備隊員もいるのではないでしょうか?

そこを冷静に捉えておかないと、「元漁民」なのか「元沿岸警備隊員」なのかどっちなんだ!、という不毛な議論に陥ってしまいそうです。

以前も紹介した水島 朝穂さんのサイトで紹介されているチュービンゲン軍事化情報センターの文章でも「漁師もいれば、元沿岸警備隊員もいる」と書かれています。
http://www.asaho.com/jpn/bkno/2008/1208.html

さらに、これだけ世界で話題になっているのですから、他国の武装戦力などがなんらかの形で関係している可能性もあるとは思います。


竹田さんはラジオで、私設海軍(沿岸警備隊)が変貌した「国際的な密輸グループ」が麻薬などを密輸しているとして、いかに「悪い組織」であるかを強調しています。

そして、ラジオのパーソナリティも「アルカイダを作ってしまったのと似たような話」「フランケンシュタインを作ってしまった」などとオーバーな表現をして、センセーショナルにしようとしています。

話としては面白くできていますが、そこまで決めつけられてしまうと本当なのかどうか疑問もわいてきます。

仮に、「海賊」が誕生した経緯が竹田さんの説の通りだとしても、300人ほどいると言われている「海賊」の中に、元は漁民として生計を立てていて現在では海賊をやっている人達がいる可能性も否定はできません。

物事にはさまざまな要素があり、組織にはさまざまなタイプの人が集まっています。

ですから、「海賊は全員、元漁民なんだから、ぜんぜん悪くないんだ〜」と言ったら、それは間違いだと思います。少なくとも犯罪行為をしているのは事実ですし。
しかし、「海賊は元漁民じゃない。極悪犯罪集団だ!」などと言い切ってしまうのも、正確とは言えないでしょうね。
タグ:海賊 自衛隊
posted by あつこば at 11:52| Comment(9) | TrackBack(0) | 自衛隊 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年02月25日

「海賊」対策の訓練公開と「特別警備隊」

2月20日に「海賊対策」の訓練が公開されました。
各社の報道をチェックしてみました。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2009022002000221.html
↓ここから引用
--------------
海自は海賊が武器を使って攻撃を仕掛けてくることも想定しているが、これに対処する訓練は行われず、今回は都合よく海賊を撃退したり、逮捕する訓練にとどまった。
-------------
↑引用ここまで

報道機関に公開する訓練だったということもあり、都合のいい想定で公開したようですが。

http://www.ntv.co.jp/news/129587.html
によると、第一の訓練は「護衛艦が海賊船の行く手を遮って退散させた」となっています。そして第二の訓練で「捕らえた海賊を高速ボートで連行、護衛艦の甲板上で逮捕権を持つ海上保安官に引き渡した」とされています。

つまりふたつの訓練の想定が違うわけです。
そして「肝心の武器使用を伴う状況は示されなかった」そうです。

http://www.chugoku-np.co.jp/News/Tn200902210025.html
には「海賊が日本人乗組員にけがを負わせたケース」と書かれていますので、第二の訓練は日本の商船に「海賊」が乗り込んできたという想定でしょう。それであれば海上自衛隊員も日本の商船に乗り込んでいって「海賊」を拘束することになると思います。

ところが「海賊」をどうやって捕らえるのかは公開されなかったようです。

捕まえる部分はなく「高速ボート(特殊ボート)」で連行するところだけは公開されています。
http://sankei.jp.msn.com/photos/politics/policy/090220/plc0902202127014-p3.htm
に掲載されている画像です。

このボートは、海上自衛隊の特殊部隊「特別警備隊」のもののようです。
これが「特別警備隊」の画像です。
SB-400.jpg
(防衛省 2008年予算 概算要求の概要より、「特別機動船(SB)を用いた特別警備隊の訓練 http://www.mod.go.jp/j/library/archives/yosan/2008/yosan.pdf

ソマリア沖には、この「特別警備隊」も派遣(派兵)されることになっています。
「特別警備隊」は、昨年9月、「続ける自信がなくなった」と言って異動する隊員を、15人と連続して対戦する格闘訓練で死亡させてしまうという痛ましい事件を起こしています。
http://www.asahi.com/kansai/kouiki/OSK200810140044.html
http://www.asahi.com/kansai/kouiki/OSK200810140140.html

20日の訓練にも「特別警備隊」が参加しました。しかし公開された訓練では「どの役割かは非公表」でした。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2009022002000221.html

この「特別警備隊」、もともとは「不審船」対策として2001年に正式にできた部隊だそうです。以下のような訓練をしています。
http://www.asagumo-news.com/graph/070705/070705G.html
「部隊の戦力を推測できる情報はすべて非公開」とされています。

もともとは、日本の領海に侵入してくる「不審船」に対応するために訓練された人達です。今回、日本とは遠く離れたソマリア沖で「海賊」を相手に「格闘」する可能性が出てきたことになります。
posted by あつこば at 08:41| Comment(1) | TrackBack(0) | 自衛隊 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年02月26日

「海賊対策」での「危害射撃」

引き続き「海賊対策」で派遣(派兵)される自衛隊について考えてみます。

海上自衛隊と海上保安庁との共同訓練
防衛省 2009年度予算の概要(案)より http://www.mod.go.jp/j/library/archives/yosan/2009/yosan.pdf

前回は海上自衛隊の特殊部隊「特別警備隊」について書きましたが、今回は護衛艦についてです。

今回は、汎用護衛艦「さざなみ(DD-113)」と「さみだれ(DD-106)」の2鑑が派遣されることになっていて、準備を進めています。いずれも呉を母港とする第8護衛隊に所属しています。
イージス艦(ミサイル護衛艦)の「こんごう」「あたご」などに比べると少しだけ小さい汎用護衛艦です。

「さざなみ(DD-113)」と「さみだれ(DD-106)」
Copyright (C) Vessel And Ships Photo Gallery http://www.vspg.net/jmsdf/dd113.html

前回紹介した「特別警備隊」は、広島県江田島市の江田島基地内に本部があるそうです。昨年、隊員を死亡させる事件が起きた時は呉地方総監部が対応しています。「特別警備隊」と近いので連携が取りやすいというのも呉を母港にしている護衛艦が派遣される理由かもしれません。

もうひとつ、護衛艦「さざなみ」が派遣されることになった理由として推測できることがあります。

「さざなみ(DD-113)」
Wikipediaより

これが「さざなみ」です。以下の画面で明るくしてある部分がレイセオン・システムズ社製のファランクスCIWS(艦載近距離防空システム)といいます。下に20mm機関砲があり、上の白い円筒の部分がレーダーです。その右上の矢印で示した部分に光学照準機が付いています。この光学照準機が付いているのがファランクスCIWSの「ブロック1B型」だそうです。
ファランクスCIWS ファランクスCIWS

「ファランクスCIWS」というのは、ミサイルなどの攻撃を受けた時に撃ち落とすシステムなのですが、従来型では空中のミサイルなどを撃ち落とすだけだったのに対して、「ブロック1B型」の場合は「海上の小型目標」への攻撃も可能になっているそうです。

この「ファランクス ブロック1B型」を搭載している護衛艦は限られているため、現時点で搭載している「さざなみ」が派遣されることになったという推測も成り立ちます。

この「ファランクス ブロック1B型」によって、実際に「海賊」への攻撃がされるのかどうかはわかりません。

「ファランクスCIWS」に搭載されている20mm機関砲の他にも、12.7mm機関銃があります。
「さざなみ」と「さみだれ」の「両艦は海賊船に対応できるよう、小回りのきく機関銃を置く銃座が新設された」とのことです。
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/hiroshima/news/20090203-OYT8T01008.htm

http://ascii.jp/elem/000/000/215/215225/
に画像があります。

また、赤星海上幕僚長は会見で「機関銃架台への防弾板付加などの工事を進めている」ことを明らかにしました。
http://www.asagumo-news.com/news/200902/090219/09021901.html

たしかに武装した「海賊」から攻撃を受けた場合に対処するために防弾板は必要でしょう。甲板から自衛隊員が撃つわけですから、相手から撃たれる可能性もあります。

「ファランクスCIWS」の場合は、自衛隊員は艦内にいて、リモートコントロールで精密射撃ができるそうですからそのぶん危険は減りますが、生身の「海賊」に対して過剰防衛になってしまう可能性もあります。

いずれにしても「ファランクスCIWS」の20mm機関砲や、防弾板を付加した12.7mm機関銃などで、自衛隊員が人を殺したり、殺されたりする可能性が高まっています。


与党海賊対策プロジェクトチームは、昨日の会合で「海賊対処法案」の素案を大筋で了承しました。
その法案では自衛隊による「危害射撃」を認めています。自衛隊側は「海賊」が商船などに近づいているだけで(警告に従わなかった場合とはいえ)危害を与える攻撃ができることになります。

さらに「海賊」が逃げている時にも危害を与える攻撃ができます。(注:法案では見送られました。追記あり)
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20090226ddm002010069000c.html

自衛隊が海外で「任務遂行のための武器使用」ができるようになるのは初めてです。「正当防衛」や「緊急避難」ではなくても相手に危害を与える攻撃ができるわけです。憲法九条を持つ国としては、そうした法案を許してはいけないでしょう。

P.S.
「ファランクスCIWS ブロック1B型」等について教えてくださった方に感謝します。

【15時27分 追記】
http://www.nikkei.co.jp/news/seiji/20090226AT3S2502625022009.html
によると、「警告後に海賊が逃亡した場合の射撃は認めない方向」だそうです。
どちらが正確な情報なのか、よくわかりませんね。

【3月15日 追記】
海上自衛隊の護衛艦が「見切り発車」した前日の13日に海賊対処法案が閣議決定しました。法案では、逃走する海賊船への射撃は見送られたそうです。
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/090313/plc0903130257003-n1.htm
タグ:自衛隊 海賊
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