11月28日に行われた沖縄県知事選挙について、遅くなりましたが私なりの分析をまとめておきます。
選挙結果は現職の仲井真知事が再選しました。事実上の一騎打ちとされた対立候補の伊波元宜野湾市長は残念ながら勝てませんでした。
しかし、仲井真知事は、それまで普天間基地の「県内移設」を事実上容認していたにも関わらず、今回の選挙で「県外移設」に転じました。これは対立候補の伊波さんが強そうで、仲井真知事も「県外移設」を訴えなければ選挙に負けてしまうという予想があったからです。
このことは、普天間「移設」が今後どうなるかを考えると非常に重要です。日本政府が辺野古での基地建設を進めるのは、これまで以上に困難になりました。
【不利な条件で善戦した伊波さん】首長選挙は一般的に現職が有利だと言われています。今回も県知事選では現職が当選し、市長選では伊波元市長の後継者が当選しました。
そして、仲井真知事は二期目ですが、首長選挙では特に二期目が強いという意見もあります。
(以下、参考)
http://soudan1.biglobe.ne.jp/qa6351249.htmlhttp://www.teamcg.or.jp/project/nomura/meikai070606.htmhttp://www.geocities.co.jp/WallStreet/2839/syutyou/yosansenkyo.htmlhttp://blog.goo.ne.jp/komamasa24goo/e/307d031026994f3e602858553a483c9cそして、前回の県知事選で対立候補だった糸数さんを推薦していた民主党が、今回は自主投票になりました。そして、前回、糸数さんを推薦・支持していた国民新党やそうぞうも今回は伊波さんを推薦・支持したのは告示後と遅れました。
【仲井真知事の変節】もともと、仲井真知事は「辺野古でのV字案を少しでも沖合いに移動しろ」と主張してきましたが、これは埋め立ての面積を増やして地元に利益をもたらすのが目的ではないかと言われていました。辺野古に基地を造ること自体は事実上、認めていたわけです。
仲井真知事は、今年4月の沖縄県民大会には当初、参加をしぶっていたようです。
↓ここから引用
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“身内”の自民党県連が県内移設容認から県外移設要求へと転換。県議会も県外移設の意見書を可決し、知事は孤立していった。
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苦悩する知事に対して自民党県連だけでなく、県議会からも圧力とも受け取れる県民大会への参加要請が相次いだ。背景には、今秋に予定される知事選がある。県連関係者は「知事が不参加だと、県内移設反対の世論に逆行し、知事選は戦えないという思いがあった」と明かす。
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↑引用ここまで
産経新聞
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/100426/plc1004260005000-n1.htm県民大会では、黄色のシャツやリボンを身に着けるように呼び掛けていました。しかし、前述の産経新聞の記事によると、県民大会まで一週間を切ってから参加表明した仲井真知事は……
↓ここから引用
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関係者によると、会場入りするまで黄色のかりゆしを着用していたが、直前に着替えたのだという。仲井真知事には「県内移設反対」を強く訴える意図がなかったことになる。
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↑引用ここまで
その後、仲井真知事は、選挙で勝つために9月28日に議会で「県外に移設することを求めていきたい」とはじめて表明しました。
http://www.okinawatimes.co.jp/article/2010-09-28_10624/選挙期間中は……
↓ここから引用
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普天間移設問題は「県外移設を政府に求める」などと簡単に触れる程度で、言及しないこともたびたびあった。陣営幹部は「普天間問題に関心が集中すると、伊波さんに負ける可能性があった。『争点外し』が成功した」と打ち明けた。
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↑引用ここまで
読売九州
http://kyushu.yomiuri.co.jp/news/national/20101129-OYS1T00190.htm【仲井真陣営の選挙戦】選挙戦で仲井真陣営は、娘さん二人を全面的に出し、もともと伊波陣営がシンボルカラーにしていた黄色を使うようになりました。
さらに、以前ブログで紹介したように、勘違いにもとづいて「イデオロギー偏重」などの攻撃をしてきました。
http://atsukoba.seesaa.net/article/170298525.html他に以下のようなポスターも貼られていたそうです。
http://twitpic.com/3a6vvr【ネットでは?】私は、選挙戦の最中に、Twitter(ツイッター)での、さまざまな人の書き込みを集めてみました。
投票日当日までの書き込みまとめ
http://togetter.com/li/71729沖縄県知事選、開票後、深夜から翌朝にかけての書き込みまとめ
http://togetter.com/li/73755「知事選」「伊波」「仲井真」「金城」などで検索してみてわかったのですが、Twitter(ツイッター)では伊波さんを応援する熱い気持ちを感じる書き込が最も多かったです。そしてそれに反発して伊波さんを攻撃する書き込みもたくさんありましたけど、仲井真知事を支持しる書き込みは非常に少なかったです。またに見つけても「見た」とか「応援に行った」とかで内容が薄かったです。
Twitter(ツイッター)では、仲井真知事を支持する書き込みよりも、自分のアイコンに日の丸を付けているような特殊な人たちが金城さんを支持している書き込みが目立ちました。
伊波さんも仲井真知事も告示前まではTwitter(ツイッター)に書き込んでいました。それをまとめたものも、伊波さんのほうが人気が高かったです。
伊波洋一さんのツイート
http://togetter.com/li/71833仲井眞弘多さんのツイート
http://togetter.com/li/71831このように、ネットでの傾向と実際の得票では大きな差がありました。
もちろんネットに書いている人たちは沖縄の有権者ではない人が多いと思います。なかには、沖縄県外の人が伊波さんを応援する書き込みをしすぎることに対して、かえって逆効果になっているのではないかと揶揄する書き込みもありましたが、それが選挙結果に影響したかどうかはわかりません。
【争点は?】仲井真陣営が基地問題を『争点外し』したと言われていて、それが投票率の低さにも現れたとされていますが、実際の投票行動はどうだったんでしょう。
まずは投票日前です。
↓ここから引用
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米軍基地問題にマスコミの注目が集中しているものの、沖縄タイムス社と朝日新聞社の調査によると、投票する際にもっとも重要なのは地元経済の活性化との回答が49%を占めており、基地問題という回答は36%だった。
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↑引用ここまで
ウォールストリートジャーナル
http://on.wsj.com/ghnf5Mところが、投票後にはこんな分析もあります。
↓ここから引用
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毎日新聞の出口調査でも「投票基準」として「普天間移設問題への対応」が「経済振興」を上回った。
--中略--------
仲井真氏に敗れた伊波氏はグアム移転を長年主張し、沖縄で「革新のエース」とされてきた。選対幹部は、戸惑いながら選挙結果を分析する。「民主が対話を否定しない仲井真さんに期待しているのは明らか。一方で仲井真さんは自民の支援を受けている。2大政党が事実上バックアップし『政権がどっちに転ぼうが、仲井真さんは大丈夫』(という構図)になったのでは」
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仲井真氏を支援した経済団体幹部も似た見解を示す。「どちらも普天間で政府と対立している。でも革新県政では、沖縄は民主にも自民にもパイプがなくなりかねない。仲井真さんを選んだというより、伊波さんを選ばなかったということだ」
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↑引用ここまで
毎日新聞
http://mainichi.jp/select/opinion/eye/news/20101207k0000m070118000c.html基地問題に関しては、選挙直前に尖閣諸島の問題や、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)と韓国の砲撃戦が起きたことが仲井真知事に有利になったという見方もあります。
↓ここから引用
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(仲井真氏は)地政学的環境の変化により日米同盟が重要さを増している時期に伊波氏が同盟を否定したと非難することで、選挙戦を有利に運んだとみられている。
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ある沖縄市民は、尖閣諸島問題や北朝鮮による韓国攻撃が仲井真氏に有利に働いたとの考えを示した。
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↑引用ここまで
ウォールストリートジャーナル
http://on.wsj.com/ezLvn2選挙は数多くの人が投票するものですから、あまり単純に分析するのは危険でしょう。
投票する際の判断基準は、人それぞれさまざまです。一人の人が誰に投票するかを決める際にも複数の要素から決断をすることがあります。
ですから、選挙結果についての分析もさまざまですし、どれかひとつの分析だけが正しいと思わないほうがいいでしょう。
【組織票と期日前投票】出口調査をすべてチェックしたわけではありませんが、琉球放送の出口調査では、伊波さんが仲井真知事をわずかに上回っていたそうです。
http://twitter.com/tbs_newsbird/status/8886236915699712つまり、期日前投票で仲井真知事に投票した人が多いようです。期日前投票は投票できる人たちを増やすという意味では良いシステムだと思いますが、その反面、企業や宗教団体などの組織ぐるみによる投票の温床になっていると指摘する声もあります。
1月に行われた沖縄の名護市長選挙では、こんなこともあったそうです。
↓ここから引用
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期日前投票の監視行動を続けた「不正投票監視団」によると、企業名を明記したマイクロバスから降りてきた作業服姿の人たちを並ばせ、ボードを持った人が一人ずつチェックして投票所に送り込む様子や、「わ」ナンバー(レンタカー)や同じ車が何度も車椅子の人たちを送迎しているのを目撃したという。
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↑引用ここまで
http://kichi-iranai.jp/d_10kumovement/y_uttae/20100131/20100131.html特に、仲井真知事は沖縄最大のゼネコン国場組とのつながりが深いと言われています。名護市長選挙で行われたとされる組織動員が行われた可能性も感じます。
組織動員で仲井真知事に投票した人は、それほど仲井真知事を支持する気持ちはないでしょうから、先に書いたTwitter(ツイッター)で仲井真知事を支持する書き込みが極端に少なかったこともうなづけます。
1998年の沖縄知事選挙では、当然勝てると思われていた大田知事が落選しました。当時、官房機密費約3億円が流れ込み、勝ち目がないと思われていた稲嶺候補が大手広告代理店によるイメージ戦略の後押しで勝利したという記事が、「週刊金曜日」に掲載されています。
http://www.kinyobi.co.jp/backnum/tokushu/tokushu_kiji.php?no=1466今年の県知事選挙でも官房機密費が使われたのでは、という噂を複数から聞きました。「機密費」なだけに、その解明はなかなか難しいと思いますが。
【今後は……】仲井真知事は、当選した翌日、以下のように語っています。
↓ここから引用
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「相手候補の30万票は半分。その思いも踏まえて、しっかり仕事をしないとなあという気持ちが強くなっている」
--中略--------
カメラマンから笑顔を求められると「これからの仕事を思うと、そう笑顔にもなれませんよ」とも。手にした新聞には普天間問題について「メド立たず」の見出し。「確かにそれに近いなあ」と漏らした。
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↑引用ここまで
朝日新聞
http://www.asahi.com/politics/update/1129/SEB201011290008.html沖縄県知事選の直後に行われたマスメディア等による分析は、以下にまとめています。(追加予定です。)
http://togetter.com/li/73762沖縄県知事選後、日々伝えられる普天間「移設」や辺野古での基地建設計画に関する報道を以下にまとめています。(こちらも連日、更新しています。)
http://togetter.com/li/73761