2010年09月09日

辺野古の基地計画で現実的にはありえない飛行経路を主張

沖縄 辺野古での基地建設に関して、日米の専門家会合の報告書が8月31日に出されました。

「V字案」と「I字案」の二つの案が並記されたことが大きく報道されていますが、この報告書にはさまざまな面で問題点があります。しかし報告書に書かれていることよりも大きな問題は、日米両政府間で意見が一致せずに報告書から外された点です。

大きくは、
【飛行経路の問題】
【自衛隊との共同使用】
です。

今回は、まず飛行経路の問題について説明しましょう。

以下が防衛省のサイトに掲載された報告書です。
http://www.mod.go.jp/j/press/sankou/report/20100831_j.html
図も添付されていて一見わかりやすく説明されているような気がします。たとえば「V字案」の図が以下です。(pdfファイルです。)
http://www.mod.go.jp/j/press/sankou/report/20100831_3.pdf

上記の図をトリミングしてみました。
v-plan-trim.jpg

この図では「南西方向からの着陸」と「北東方向への離陸」について方向が示されています。ところがこの図では方向を示しているだけで、飛行経路については示されていません。

これまでに防衛省が説明してきた飛行経路は以下です。

daikei.jpg
(防衛白書より)

日本政府が示しているこの飛行経路に対してアメリカ側は従来から実態に合わせて変更するべきだと指摘していました。
http://atsukoba.seesaa.net/article/57668926.html

9月1日の琉球新報の記事では以下のように指摘しています。
↓ここから引用
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有視界飛行経路の明示を見送ったのは、従来の日本側の説明の「台形」の原則経路では、米側が主張する米軍運用の“実態”を抑えきれなくなっている実情がある。両論併記でも情報提供すべきだったが、飛行実態を封印したのでは隠蔽(いんぺい)体質の批判は免れない。
--------------
↑引用ここまで

琉球新報のサイトに掲載されている別の記事
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-167042-storytopic-9.html
には、日本側が説明してきた「台形」の飛行経路とアメリカ側が主張している飛行経路、そしてそれによる騒音影響地域の違いが以下の図で示されています。

http://ryukyushimpo.jp/uploads/img4c7daa71e1b6a.jpg

この辺野古での基地建設計画は、同じ沖縄にある普天間基地のヘリ部隊を移転させるというものですが、実際に普天間基地ではどのような飛行実態なのかを宜野湾市が調査して掲載しています。(pdfファイルです。)
http://www.city.ginowan.okinawa.jp/DAT/LIB/WEB/1/070813_mayor_comment_heriroute1.pdf

上記からの図です。
futenma-route.jpg

前述の琉球新報の記事でも以下のように指摘しています。
↓ここから引用
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米側の飛行経路実態に、日本側はあくまで従来説明の「台形」で飛べるはずだと主張を曲げない。だが米軍が自衛隊と違い規定通りに飛ばないことは、市街地にはみ出す現行の普天間での日常訓練によって県民は体感している。
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↑引用ここまで

今回の報告書に対する批判の声が高まっています。

http://www.okinawatimes.co.jp/article/2010-09-01_9749/
↓ここから引用
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移設反対決議をしている久志区の森山憲一行政委員長は「飛行経路が記載されていない報告書は、欠陥だらけのアセス同様、論外だ」と指摘した。
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↑引用ここまで



この問題についてこれまでに書いた主要な文章を以下にまとめてあります。
http://atsukoba.seesaa.net/article/70417549.html

2010年6月からの重要な動きについては以下でまとめています。
http://atsukoba.seesaa.net/category/8339156-1.html



2010年09月11日

沖縄・辺野古(へのこ)で自衛隊が米軍と共同使用?

いわゆる「普天間移設」に関して8月31日に出された日米専門家会合の報告書に書かれなかった問題点として、【飛行経路の問題】については前回書きました。
http://atsukoba.seesaa.net/article/161983403.html

今回は【自衛隊との共同使用】について、この間の動きをまとめたいと思います。

この話は、5月29日に発表された日米の外交・防衛担当の閣僚による共同声明の検討中に日本側から提案されたようです。

私がそれを知ったのは、5月23日夜7時のNHKのニュースです。
↓ここから引用
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日米両政府は沖縄県名護市辺野古のキャンプシュワブ沿岸部に滑走路を建設したうえで、アメリカ軍と自衛隊による共同使用を検討することや基地機能の沖縄県外への分散移転を検討することなどで大筋で合意しました。
--------------
↑引用ここまで

沖縄の新聞でもアメリカ側が「大筋で了承」したと報道されました。
http://www.okinawatimes.co.jp/article/2010-05-23_6703/
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-162486-storytopic-3.html

その後、「自衛隊との共同使用」についてはあまり報道されなくなり、結果的に5月29日に発表された共同声明では非常に曖昧な表現に留まりました。
以下の後半にまとめています。
http://atsukoba.seesaa.net/article/151492102.html

上記の追記で紹介した5月31日の毎日新聞の記事によると、共同使用は「将来的な自衛隊の管理」をにらんだ、いわば「常時駐留なき辺野古」で、防衛省首脳によると「鳩山首相の案だった」とされています。

私は、アメリカ側がイヤがっているらしいことと、6月2日に鳩山首相が辞意を表明したため、「鳩山首相の案だった」とされる自衛隊との共同使用の話も頓挫したかなと思いましたが甘かったです。

日米専門家会合の報告書が出る直前、8月26日の琉球新報の記事では、防衛省は「5月以降、省内で検討を加速し、米側に提案した」とされています。
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-166819-storytopic-3.html
↓ここから引用
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自衛隊が常駐すれば、地元から基地強化につながるとの反発が噴き出しかねない。米側は軍の運用が制限されることから難色を示している。
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常駐させる部隊と規模、飛行訓練を伴うかなどをめぐり、米側との交渉は曲折がありそうだ。
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防衛省が常駐を求める理由に、自衛隊の訓練地域の拡大や技術向上などがあるが、人口増加により経済的効果が生まれ、地元に受け入れられやすいとの見方もある。
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米軍と自衛隊の共同使用については、5月末の日米共同声明で「両政府は(略)米軍と自衛隊との間の施設の共同使用を拡大する機会を検討する意図を有する」と明記。
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英文では「Shared Use」と表記されている。
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この英文を、日本側は「自衛隊の常駐を前提とする共同使用」ととらえ、5月以降、省内で検討を加速し、米側に提案した。
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だが米側は、代替施設はあくまで米軍管理で、軍の許可の下で自衛隊に使わせる「常駐を伴わない一時使用」と理解。共同声明文の解釈が分かれ、使用形態をめぐる互いの利害が一致せず、結論には至っていない。
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↑引用ここまで

同8月26日の琉球新報の別の記事では……
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-166826-storytopic-26.html
↓ここから引用
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2008年からキャンプ・ハンセンで既に共同使用が始まっているが、その内容は米軍と訓練日程を調整し、空いた期間に自衛隊が施設を使用したもの。新たな「共同使用」も、同様の形態になると想定されていた。
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だが自衛隊そのものを辺野古に駐留させる構想は、地元にとって寝耳に水だ。
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省内には「県民は米軍なら反対するだろうが、自衛隊なら大丈夫」との楽観的な見方がある。同じ日本国民であり、人が増えれば周辺の商売も繁盛し、経済的にも潤うから、というのが理由だ。
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しかし、訓練形態や規模によっては住民生活に大きな影響を及ぼすことから、地元の懸念は強い。県民には沖縄戦の経験に基づく自衛隊への特別な感情がある。
--中略--------
米側が自衛隊常駐に強硬に反対しているため、実現可能性は一層不透明さを増している。地元配慮に欠ける対応が、沖縄と政府との新たな亀裂を生んでいる。
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↑引用ここまで

同日の読売新聞でも報道されています。
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20100826-OYT1T01228.htm
↓ここから引用
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代替施設の共同使用では、日本が自衛隊を常駐させての共同管理を主張しているのに対し、米側はあくまで施設の管理は米軍が行うとし、共同使用は米軍の許可の下で自衛隊が施設を使う「一時使用」との立場を崩していない。
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日本側の主張には、施設内での事故や環境汚染に対処でき、周辺住民への配慮につながるとの考えがあるが、26日の協議でも結論に至らなかった。
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↑引用ここまで

5月22日までの日米交渉ではアメリカ側が「大筋で了承」したものの、今回の交渉では日本側が自衛隊を「常時駐留」させたがっているのに対して、アメリカ側は「空いてる時は使わせてやる」という体制でいたいために譲らなかったようです。

http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/100831/plc1008311315007-n1.htm
↓ここから引用
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日本側は代替施設での自衛隊の共同使用を認めるよう求めていたが、米側が強く抵抗したため、報告書では言及を避けた。
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↑引用ここまで

戦車に乗ってうれしそうな北澤防衛大臣
(画像は防衛省のサイトより北澤防衛大臣)

結果的に今回の報告書には何も記載されなかったのですが、発表した当日に北澤防衛大臣は会見で……
http://www.okinawatimes.co.jp/article/2010-09-01_9769/
↓ここから引用
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基地の新しい在り方として「(米軍と自衛隊の)共同使用を可能な限り増やして沖縄の負担を減らす。象徴的な意味で取り上げていきたい」と述べ、同飛行場代替施設での共同使用の実現に意欲を見せた。
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仮に共同使用する場合は「(陸上自衛隊の)第15旅団が沖縄に駐屯しているので、そこの中から予想される」と述べ、常駐的な陸自部隊の存在が念頭にあると示唆。共同使用の形態は米側と立ち上げる新たな枠組みで検討するとした。
--------------
↑引用ここまで

今年3月26日に格上げされた沖縄の第15旅団の新編行事
(画像は防衛省のサイトより、今年3月26日に格上げされた沖縄の第15旅団の新編行事)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-167042-storytopic-9.html
↓ここから引用
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陸上自衛隊のヘリコプター部隊常駐をにらむ日米共同使用については、協議の枠組み設置だけ合意したが、これも沖縄側の反応次第だ。
--中略--------
「わたしが特に重要で真剣に検討していきたいのが、代替施設を自衛隊が米軍と一緒に使用できないかということだ」。北沢俊美防衛相は報告書公表の臨時会見で、特に報告書には明記していないものの普天間代替施設の日米共同使用にかける思いを強調した。
--中略--------
「沖縄は自衛隊との共同使用には反対なはずだ」。日米間の専門家協議で米国務省担当者は、沖縄社会の自衛隊への特別な感情を見透かしたように、共同使用に否定的な見解を示した。
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北沢防衛相が共同使用を提案した背景には、三沢基地(青森)や厚木基地(神奈川)など本土での先例がある。騒音への苦情などでも自衛隊が米軍と地域住民との間の緩衝剤になっているという認識に基づく。
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北沢防衛相は「地元と自衛隊と米軍の三者の間でより強いきずなをつくっていく一助となるのでは」と期待感を示すが、沖縄と本土を同列に位置付けるのは無理がある。防衛省関係者は「沖縄側が反対なら取り下げる」と今後は地元の雰囲気を見極める構えだ。
--------------
↑引用ここまで

北澤防衛大臣としては、自衛隊が常駐することで地元に受け入れられるのでは、という淡い期待があるようです。政治家らしい期待の仕方ですね。

横須賀基地を視察した長島昭久防衛政務官
(画像は横須賀基地を視察した長島昭久防衛政務官。自身のサイトより)

民主党内でも右よりと言われる長島昭久防衛政務官は、辺野古での自衛隊の共同使用に関して、さらに大きな期待をしているようです。

http://www.jcp.or.jp/akahata/aik10/2010-09-02/2010090202_02_1.html
↓ここから引用
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長島昭久防衛政務官は「沖縄に海兵隊が必要なのは、陸上部隊が手薄だからだ。陸自は一部、海兵隊のような機能を担う必要がある」(7月26日、都内での講演)と述べ、沖縄の自衛隊を“海兵隊”化させる考えを繰り返しています。
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普天間基地の「移設」自体が不透明な状況にありますが、イラク派兵を通じて急速に進んだ海兵隊・陸自の一体化がさらに進行する危険があります。
--------------
↑引用ここまで

防衛省の内部でも、沖縄での自衛隊の役割を拡大したいという意向が強いのでしょう。

アメリカ側も「自衛隊との共同使用」について今後の協議に応じる姿勢を見せました。
http://www.nikkei.com/news/category/article/g=96958A9C9381959FE3E2E2E2808DE3E2E2EBE0E2E3E2E2E2E2E2E2E2;at=ALL
↓ここから引用
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米国防総省のモレル報道官は9日の記者会見で、沖縄県の米軍普天間基地移設問題で、名護市辺野古につくる代替施設を米軍と自衛隊で共同使用する案に関し、近く日米が協議するとの見通しを示した。
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日本政府が共同使用の検討を求めていることを踏まえ、協議には応じる姿勢を示したものだ。
--------------
↑引用ここまで

この問題は今後も要注意です。

2010年09月13日

「V字案」か「I字案」かではなくそもそも辺野古に造るのがダメ

昨日、沖縄で統一地方選挙が行われました。「統一地方選挙」というのは全国で日程を統一して行うのですが、沖縄だけはアメリカに占領されていた経緯から全国とは日程が違っているそうです。

その沖縄での統一地方選挙では、5市6町14村の議会議員選挙が行われましたが、その中で普天間基地の移設先とされている辺野古(へのこ)がある名護市では、基地建設に反対する候補者が勝ち、議会の過半数を越す結果になりました。

これにより、日米両政府にとって辺野古での基地建設は、ますますやりづらくなりました。こうした積み重ねが日米両政府を追いつめ、基地建設を断念さざるを得ない状況に少しずつ進んでいます。

私の今の役割は、8月31日に出された日米専門家会合の報告書を批判することだと思っています。

報告書に書かれていない問題点については、
【飛行経路の問題】
http://atsukoba.seesaa.net/article/161983403.html
【自衛隊との共同使用】
http://atsukoba.seesaa.net/article/162201942.html
と二回書きました。

今回は、報告書に書かれている内容から批判すべき点を指摘します。


【日米両政府は期限を守れなかった】

5月28日に出された日米の共同声明では、
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/usa/hosho/joint_1005.html
↓ここから引用
--------------
専門家による検討を速やかに(いかなる場合でも2010年8月末日までに)完了させ,
--------------
↑引用ここまで
と書かれています。

http://atsukoba.seesaa.net/article/152861344.html
で紹介したように、報道によると、この「いかなる場合でも8月末日までに」というのはアメリカの要求で入れることになったようです。

しかし、今回は「V字案」と「I字案」の2案を並記する結果になりました。そして「今後更に検討が必要」とされています。
http://www.mod.go.jp/j/press/sankou/report/20100831_gaiyou.html

つまり「専門家による検討」は「8月末日までに」「完了」させることができなかったわけですね。

9月1日の琉球新報では以下のように指摘されています。
↓ここから引用
--------------
米軍普天間飛行場移設をめぐる専門家協議の報告書は、自ら決めた期限による時間切れで途中経過報告の色合いが濃い。
--------------
↑引用ここまで

これまでにも指摘してきましたが、日本政府は常に問題を先送りにしたがります。いまは11月の行われる沖縄県知事選挙への影響を恐れて、できるだけ「決定」しないでおきたいのでしょう。

以下の指摘もありました。
http://www.okinawatimes.co.jp/article/2010-09-01_9757/
↓ここから引用
--------------
両案とも「著しい遅滞」が生じない限り修正されうるとして、沖縄側に配慮する姿勢も示した。
--------------
↑引用ここまで

「V字案」と「I字案」
(名護市辺野古での「V字案」と「I字案」。日米の報告書よりトリミングして使用。こうして比べると「どちらかを選ぶ」という感覚を持ってしまいがちですが、どんな案だろうが、辺野古に基地を造るということ自体がダメ。)

【V字案もI字案も両方ダメ】

報告書では、「V字案」と「I字案」それぞれについて、
●安全性
●運用上の所要
●騒音による影響及び地元コミュニティへの影響
●環境面の考慮
●工期
●費用
という面での長所と短所をあげています。
http://www.mod.go.jp/j/press/sankou/report/20100831_j.html

これだと、「V字案」と「I字案」のどちらかを選ぶ、という感覚を持ってしまいがちです。
しかし、そもそもどんな案だろうが、辺野古に基地を造るということ自体がダメなのです。

たとえば環境面だけで見てみると、「V字案」では、
↓ここから引用
--------------
キャンプ・シュワブの東側の現存の海岸は埋立により消滅し,それに伴い,いく
つかの動植物の生息環境が失われる。
--------------
↑引用ここまで
とされています。「V字案」は完全に問題がありますね。

「I字案」では、
↓ここから引用
--------------
キャンプ・シュワブの東側の現存の海岸は残るが,動植物の生息環境への影響は今後評価する必要がある。
--------------
↑引用ここまで
とされていますが、これは埋め立てる面積が「V字案」よりも少ないというだけであって、環境への影響は避けられません。

騒音や事故の危険性については、「I字案」は今回の報告書でも
↓ここから引用
--------------
陸地をより多く上空飛行することとなる。
--------------
↑引用ここまで
とされていますから、地元の同意は得られないでしょう。そもそも「I字案」は、メンツにこだわった民主党が自民党とは違う案を出したかったというだけでしょうから、あまり意味はないでしょう。

「V字案」も前回指摘したように、
http://atsukoba.seesaa.net/article/161983403.html
米軍は飛行経路など守らないでしょうから、陸地を飛ばないということはあり得ないでしょう。

いずれにしても、「V字案」か「I字案」かではなくそもそも辺野古に基地を造るのがダメですね。

2010年09月30日

辺野古の基地は2014年までには不可能。

2006年に日米が合意した「再編実施のための日米のロードマップ」では、沖縄・辺野古(へのこ)での米軍基地を「2014年までに完成」としていました。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/kaidan/g_aso/ubl_06/2plus2_map.html

辺野古

多くの人の反対や環境アセス等の遅れによって、以前から遅れるだろうと言われるなか日米の政府関係者はなかなかそれを認めようとしませんでした。
しかし、最近になって遅れを認める発言がでてきました。

アメリカ国防総省のグレグソン次官補は
「滑走路を2本にするか1本にするかなどの最終的な移設計画を、来年の早い時期に日米の外務・防衛の閣僚協議を開いて正式合意して決着を図りたい」
としました。
http://www.nhk.or.jp/news/html/20100928/t10014258331000.html

11月28日に行われる沖縄県知事選挙の前に計画決めて発表すると選挙で基地建設に反対している候補が勝ってしまうので、選挙期間を避けようという意図もあるのでしよう。

計画が遅れるという指摘は、今年7月、アメリカ国内でも出ていました。上院歳出委員会が報告書で指摘しています。
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-165272-storytopic-3.html

辺野古での基地建設のために埋め立てをする許可は沖縄県知事が出す事になっています。上記の記事によると、当初は今年8月に埋め立て許可が出るとされていましたが、県知事選挙のあとになったので全体の計画も遅れるだろうとされているそうです。

日本側からも遅れるという声が出てきました。

外相「時期区切らない」 普天間移設 沖縄の理解優先強調
http://www.okinawatimes.co.jp/article/2010-09-30_10664/
↓ここから引用
--------------
前原誠司外相は29日、外務省内で沖縄タイムスなどのインタビューに応じ、米軍普天間飛行場の移設について「時期を区切らずに粘り強く、沖縄の理解を得るためにお願いする姿勢が必要だ」と強調した。
--------------
グレグソン米国防次官補は来年の早い時期での決着に言及しているが、前原氏は米側にも沖縄や政権の事情を説明し、沖縄側の納得と協力を優先する考えを示した。
--------------
↑引用ここまで

これも沖縄県知事選挙を意識した発言でしょう。
しかし、県知事選挙後に「粘り強く」説得しようとしても、「時期を区切らず」となると、沖縄県や名護市が納得しなければいつまでたっても決まらないことになります。

現在は野党である自民党の林芳正政調会長代理も「米側も米軍再編の予算を先送りしており、3−6年遅れざるを得ない。(日米合意の)時間軸は外して考えるべきだ」と発言しました。
http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/100929/stt1009292219011-n1.htm

andersen.jpg
(DVD『基地はいらない、どこにも』で使用させていただいた「joeのスタジオ日記」からの画像)

2006年の日米「ロードマップ」では、辺野古での基地建設や、沖縄の海兵隊の一部をグアムに移転する計画を「パッケージ」としています。

しかし、アメリカ側は2014年までの海兵隊の移転をすでに断念しています。
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-165332-storytopic-3.html
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-165335-storytopic-3.html

これは日本側で辺野古の計画が遅れているからではなく、海兵隊が大量に来るのに対応するための、グアムでの水や電気、下水道処理、道路などの整備が追い付かないのが理由です。

日米両政府は「2014年」などという守れもしない約束をしたことになります。これは今回に限った話ではありません。

1996年に出された「沖縄に関する特別行動委員会(SACO)最終報告」では、
↓ここから引用
--------------
今後5乃至7年以内に、十分な代替施設が完成し運用可能になった後、普天間飛行場を返還する。
--------------
↑引用ここまで
と書かれています。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/usa/hosho/saco.html

普天間基地は2001年から2003年までには返還されているはずだったのです。
それができなかったために仕切り直した「ロードマップ」では2014年としたのに、またできなくなりました。

辺野古での基地建設計画は、遅れれば遅れるほど、その計画の酷さが多くの人に伝わり、反対の声は増えます。

鳩山政権は「迷走した」と言われましたが、それによって沖縄での反対の声は高まり、全国的にもこの問題は広まりました。計画は、どんどんできない状況になっています。もはや、基地建設はあきらめるべきです。

そして、いつまでたっても返還されない普天間基地は、「移転」などせずに無条件で閉鎖するべきです。

2010年12月12日

沖縄県知事選挙の分析

11月28日に行われた沖縄県知事選挙について、遅くなりましたが私なりの分析をまとめておきます。

選挙結果は現職の仲井真知事が再選しました。事実上の一騎打ちとされた対立候補の伊波元宜野湾市長は残念ながら勝てませんでした。

しかし、仲井真知事は、それまで普天間基地の「県内移設」を事実上容認していたにも関わらず、今回の選挙で「県外移設」に転じました。これは対立候補の伊波さんが強そうで、仲井真知事も「県外移設」を訴えなければ選挙に負けてしまうという予想があったからです。

このことは、普天間「移設」が今後どうなるかを考えると非常に重要です。日本政府が辺野古での基地建設を進めるのは、これまで以上に困難になりました。


【不利な条件で善戦した伊波さん】

首長選挙は一般的に現職が有利だと言われています。今回も県知事選では現職が当選し、市長選では伊波元市長の後継者が当選しました。
そして、仲井真知事は二期目ですが、首長選挙では特に二期目が強いという意見もあります。
(以下、参考)
http://soudan1.biglobe.ne.jp/qa6351249.html
http://www.teamcg.or.jp/project/nomura/meikai070606.htm
http://www.geocities.co.jp/WallStreet/2839/syutyou/yosansenkyo.html
http://blog.goo.ne.jp/komamasa24goo/e/307d031026994f3e602858553a483c9c

そして、前回の県知事選で対立候補だった糸数さんを推薦していた民主党が、今回は自主投票になりました。そして、前回、糸数さんを推薦・支持していた国民新党やそうぞうも今回は伊波さんを推薦・支持したのは告示後と遅れました。


【仲井真知事の変節】

もともと、仲井真知事は「辺野古でのV字案を少しでも沖合いに移動しろ」と主張してきましたが、これは埋め立ての面積を増やして地元に利益をもたらすのが目的ではないかと言われていました。辺野古に基地を造ること自体は事実上、認めていたわけです。

仲井真知事は、今年4月の沖縄県民大会には当初、参加をしぶっていたようです。

↓ここから引用
--------------
“身内”の自民党県連が県内移設容認から県外移設要求へと転換。県議会も県外移設の意見書を可決し、知事は孤立していった。
--------------
苦悩する知事に対して自民党県連だけでなく、県議会からも圧力とも受け取れる県民大会への参加要請が相次いだ。背景には、今秋に予定される知事選がある。県連関係者は「知事が不参加だと、県内移設反対の世論に逆行し、知事選は戦えないという思いがあった」と明かす。
--------------
↑引用ここまで
産経新聞
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/100426/plc1004260005000-n1.htm

県民大会では、黄色のシャツやリボンを身に着けるように呼び掛けていました。しかし、前述の産経新聞の記事によると、県民大会まで一週間を切ってから参加表明した仲井真知事は……
↓ここから引用
--------------
関係者によると、会場入りするまで黄色のかりゆしを着用していたが、直前に着替えたのだという。仲井真知事には「県内移設反対」を強く訴える意図がなかったことになる。
--------------
↑引用ここまで

その後、仲井真知事は、選挙で勝つために9月28日に議会で「県外に移設することを求めていきたい」とはじめて表明しました。
http://www.okinawatimes.co.jp/article/2010-09-28_10624/

選挙期間中は……
↓ここから引用
--------------
普天間移設問題は「県外移設を政府に求める」などと簡単に触れる程度で、言及しないこともたびたびあった。陣営幹部は「普天間問題に関心が集中すると、伊波さんに負ける可能性があった。『争点外し』が成功した」と打ち明けた。
--------------
↑引用ここまで
読売九州
http://kyushu.yomiuri.co.jp/news/national/20101129-OYS1T00190.htm


【仲井真陣営の選挙戦】

選挙戦で仲井真陣営は、娘さん二人を全面的に出し、もともと伊波陣営がシンボルカラーにしていた黄色を使うようになりました。

さらに、以前ブログで紹介したように、勘違いにもとづいて「イデオロギー偏重」などの攻撃をしてきました。
http://atsukoba.seesaa.net/article/170298525.html

他に以下のようなポスターも貼られていたそうです。
http://twitpic.com/3a6vvr


【ネットでは?】

私は、選挙戦の最中に、Twitter(ツイッター)での、さまざまな人の書き込みを集めてみました。
投票日当日までの書き込みまとめ
http://togetter.com/li/71729
沖縄県知事選、開票後、深夜から翌朝にかけての書き込みまとめ
http://togetter.com/li/73755

「知事選」「伊波」「仲井真」「金城」などで検索してみてわかったのですが、Twitter(ツイッター)では伊波さんを応援する熱い気持ちを感じる書き込が最も多かったです。そしてそれに反発して伊波さんを攻撃する書き込みもたくさんありましたけど、仲井真知事を支持しる書き込みは非常に少なかったです。またに見つけても「見た」とか「応援に行った」とかで内容が薄かったです。

Twitter(ツイッター)では、仲井真知事を支持する書き込みよりも、自分のアイコンに日の丸を付けているような特殊な人たちが金城さんを支持している書き込みが目立ちました。

伊波さんも仲井真知事も告示前まではTwitter(ツイッター)に書き込んでいました。それをまとめたものも、伊波さんのほうが人気が高かったです。

伊波洋一さんのツイート
http://togetter.com/li/71833
仲井眞弘多さんのツイート
http://togetter.com/li/71831

このように、ネットでの傾向と実際の得票では大きな差がありました。
もちろんネットに書いている人たちは沖縄の有権者ではない人が多いと思います。なかには、沖縄県外の人が伊波さんを応援する書き込みをしすぎることに対して、かえって逆効果になっているのではないかと揶揄する書き込みもありましたが、それが選挙結果に影響したかどうかはわかりません。


【争点は?】

仲井真陣営が基地問題を『争点外し』したと言われていて、それが投票率の低さにも現れたとされていますが、実際の投票行動はどうだったんでしょう。

まずは投票日前です。

↓ここから引用
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米軍基地問題にマスコミの注目が集中しているものの、沖縄タイムス社と朝日新聞社の調査によると、投票する際にもっとも重要なのは地元経済の活性化との回答が49%を占めており、基地問題という回答は36%だった。
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↑引用ここまで
ウォールストリートジャーナル
http://on.wsj.com/ghnf5M

ところが、投票後にはこんな分析もあります。

↓ここから引用
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毎日新聞の出口調査でも「投票基準」として「普天間移設問題への対応」が「経済振興」を上回った。
--中略--------
仲井真氏に敗れた伊波氏はグアム移転を長年主張し、沖縄で「革新のエース」とされてきた。選対幹部は、戸惑いながら選挙結果を分析する。「民主が対話を否定しない仲井真さんに期待しているのは明らか。一方で仲井真さんは自民の支援を受けている。2大政党が事実上バックアップし『政権がどっちに転ぼうが、仲井真さんは大丈夫』(という構図)になったのでは」
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仲井真氏を支援した経済団体幹部も似た見解を示す。「どちらも普天間で政府と対立している。でも革新県政では、沖縄は民主にも自民にもパイプがなくなりかねない。仲井真さんを選んだというより、伊波さんを選ばなかったということだ」
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↑引用ここまで
毎日新聞
http://mainichi.jp/select/opinion/eye/news/20101207k0000m070118000c.html

基地問題に関しては、選挙直前に尖閣諸島の問題や、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)と韓国の砲撃戦が起きたことが仲井真知事に有利になったという見方もあります。

↓ここから引用
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(仲井真氏は)地政学的環境の変化により日米同盟が重要さを増している時期に伊波氏が同盟を否定したと非難することで、選挙戦を有利に運んだとみられている。
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ある沖縄市民は、尖閣諸島問題や北朝鮮による韓国攻撃が仲井真氏に有利に働いたとの考えを示した。
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↑引用ここまで
ウォールストリートジャーナル
http://on.wsj.com/ezLvn2

選挙は数多くの人が投票するものですから、あまり単純に分析するのは危険でしょう。

投票する際の判断基準は、人それぞれさまざまです。一人の人が誰に投票するかを決める際にも複数の要素から決断をすることがあります。

ですから、選挙結果についての分析もさまざまですし、どれかひとつの分析だけが正しいと思わないほうがいいでしょう。


【組織票と期日前投票】

出口調査をすべてチェックしたわけではありませんが、琉球放送の出口調査では、伊波さんが仲井真知事をわずかに上回っていたそうです。
http://twitter.com/tbs_newsbird/status/8886236915699712

つまり、期日前投票で仲井真知事に投票した人が多いようです。期日前投票は投票できる人たちを増やすという意味では良いシステムだと思いますが、その反面、企業や宗教団体などの組織ぐるみによる投票の温床になっていると指摘する声もあります。

1月に行われた沖縄の名護市長選挙では、こんなこともあったそうです。
↓ここから引用
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期日前投票の監視行動を続けた「不正投票監視団」によると、企業名を明記したマイクロバスから降りてきた作業服姿の人たちを並ばせ、ボードを持った人が一人ずつチェックして投票所に送り込む様子や、「わ」ナンバー(レンタカー)や同じ車が何度も車椅子の人たちを送迎しているのを目撃したという。
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↑引用ここまで
http://kichi-iranai.jp/d_10kumovement/y_uttae/20100131/20100131.html

特に、仲井真知事は沖縄最大のゼネコン国場組とのつながりが深いと言われています。名護市長選挙で行われたとされる組織動員が行われた可能性も感じます。

組織動員で仲井真知事に投票した人は、それほど仲井真知事を支持する気持ちはないでしょうから、先に書いたTwitter(ツイッター)で仲井真知事を支持する書き込みが極端に少なかったこともうなづけます。

1998年の沖縄知事選挙では、当然勝てると思われていた大田知事が落選しました。当時、官房機密費約3億円が流れ込み、勝ち目がないと思われていた稲嶺候補が大手広告代理店によるイメージ戦略の後押しで勝利したという記事が、「週刊金曜日」に掲載されています。
http://www.kinyobi.co.jp/backnum/tokushu/tokushu_kiji.php?no=1466

今年の県知事選挙でも官房機密費が使われたのでは、という噂を複数から聞きました。「機密費」なだけに、その解明はなかなか難しいと思いますが。


【今後は……】

仲井真知事は、当選した翌日、以下のように語っています。
↓ここから引用
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「相手候補の30万票は半分。その思いも踏まえて、しっかり仕事をしないとなあという気持ちが強くなっている」
--中略--------
カメラマンから笑顔を求められると「これからの仕事を思うと、そう笑顔にもなれませんよ」とも。手にした新聞には普天間問題について「メド立たず」の見出し。「確かにそれに近いなあ」と漏らした。
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↑引用ここまで
朝日新聞
http://www.asahi.com/politics/update/1129/SEB201011290008.html


沖縄県知事選の直後に行われたマスメディア等による分析は、以下にまとめています。(追加予定です。)
http://togetter.com/li/73762

沖縄県知事選後、日々伝えられる普天間「移設」や辺野古での基地建設計画に関する報道を以下にまとめています。(こちらも連日、更新しています。)
http://togetter.com/li/73761

2011年01月25日

辺野古の浜でフェンス工事!

【転送歓迎】

今朝から、沖縄・辺野古の浜でフェンス工事と思われる動きが始まっています。
(以下を参照ください。)
辺野古浜通信
http://henoko.ti-da.net/

訪れたことがある方も多いと思いますが、辺野古の浜とキャンプ・シュワブの間
には有刺鉄線がありました。
そこには反戦・平和のメッセージが書かれたリボンなどが結ばれ、辺野古の象徴
的な映像になっていました。

キャンプ・シュワブ沖に昇る朝日

辺野古の浜

辺野古の浜
(上記の画像はロゴが入ったまま加工しなければ自由に転載していただいて結構です。)

沖縄に駐留している米海兵隊は、
「基礎構造物とその上に見通しがいいフェンス」を1月に着工し、5月の完成を
めざしているとされています。
http://www.okinawatimes.co.jp/article/2010-08-28_9657/


沖縄では高江で24時間の監視体制も続いています。
http://takae.ti-da.net/

辺野古と高江の上記ブログをチェックするなどして、ぜひ、注視していただければと思います。